子どもの「なぜなぜ期」にできる、質問・問いかけのレッスン

前回、未知で不確実で有限有期なプロジェクトに、他者と協働して取り組むうえで質問・問いかけが有用であるということを書きました。

プロジェクトの「質問・問いかけ」を活かせないアンチパターン

しかし、質問する側にもされる側にも問題があってうまく活用できず、却ってプロジェクトのリスクが上がってしまいます。そこで、質問・問いかけの力を活かすための「あるべき状態」を示し、その状態になるための実践・練習を、子どもが発する「なんで?」(なぜなぜ期)で行うことができるというのが前回の内容でした。今回はその理由とやり方について書きます。

子どもは3才頃からいろんなことに「なんで?」と聞いてきます。なぜなぜ期の「なんで?」には本当に悩まされます。子どもが見聞きした「なんで?」に回答すると、その回答についてまた「なんで?」と聞いていくる。親が何かを口にすると、その口にしたことについて「なんで?」と聞いてくる。なんで?の無限ループで正直辟易とします。神様が、警察が決めた。そういうことになっていると逃げることもしばしばです。

私は二人の娘のなぜなぜ期を経験していますが、ムリに、がんばって答える必要はない、というスタンスでいます。正答を知っていなくても大丈夫。正答を知っていなくてはならないというのは前回述べた質問・問いかけに対する強迫観念や思い込みの弊害です。かといって、「なんでもなにも、そういうことなの!」というのでは問答・対話が生まれません。そこで、次のような方法をお勧めします。それが親には今すぐ。子どもには将来的に質問・問いかけのレッスンになります。


まず、子どもが「なんで?」と聞いてきたら、正答できるものはすればよいです。ただ、正答を知っていたとしても、一度子どもと一緒にわからなくなってください。知っていることをわからなくなるのが一番難しいんですが、ともかくわからなくなる。知らないことならわかっていないので、わからなくなれます。

わからなくなることの他に、子どもの「なんで?」に感心したり面白がったりしてください。わからなくなることができれば、子どもの「なんで?」に一層共感したり驚いたりすることができます。それがファーストステップ。なんで?に対するマインドセットのようなものです。

次のステップでは3つの質問・問いかけの選択肢があります。

  1. 子どもが「なんで?」と聞いた対象に異なる「なんで?」を出す
  2. なんでそんなことを聞いたのか質問する(教えてもらう)
  3. 「なんで?」に観察、推論を促す

当然、質問の内容に寄りますが、2つ目と3つ目は気を付けていればできることです。1つ目がこのレッスンで最もやりがいのあるものです。

子どもが「なんで?」と聞いた対象に異なる「なんで?」を出すことは、前回書いた「質問・問いかけの力を活かすための「あるべき状態」の一つである、「一つの・同じ対象を観察して、多様な情報や要素を見出したり、対象が位置づけられている文脈や構造を把握することができる」の格好のレッスンになります。

これができていると、観察・推論を促しやすくなります。このレッスンの参照物が前々回に書いた「なんで?のメカニズム」の図です。

娘たちの「なんで?」222件を分類して考えた「なんで?のメカニズム」

ちょっと例を出してみましょう。

同じ対象を見て異なる「なんで?」を出すパターンはこんな感じです。

娘 (ピザを食べていて、)「なんで後ろの方にしか肉がのってないの?」

私 「ほんまや・・・。それでいったら、なんでピザは先っちょがとんがる三角の形に切ってあるんやろ?」

娘 「さきっちょがおいしいからじゃない?スイカみたいに」

私 「なんでさきっちょがおいしいんだろう?」


「なんで?」に観察、推論を促すパターンだとこんな感じです。

娘 「なんでカーネーションとカスミソウは、カスミソウのほうが枯れないんだろう?」

私 「カーネーションとカスミソウでなにかちがうところはある?」

娘 「カスミソウは白くて、カーネーションはピンクと赤」

私 「ほんまや。いろがちがうなぁ。」「ほかにちがうところはある?」

娘 「カスミソウははながちっちゃい」→「あ、(枯れないのは)はながちっちゃいからじゃない?」


一つの同じ対象を見て、子どもが発した「なんで?」とは異なる「なんで?」を大人も出してみる。この他の例や出し方についてはこちらの記事に詳しいのでよろしければご覧ください。

「なんで?」を育む10個以上の視点(ただいま整理中)

これら3つの対応ができると、なんで?がつながり重なって、問答・対話が続いていきます。ただ、ムリに続ける必要はなくて、子どもが興味を示さなくなったりすればやめてしまってかまいません。レッスンといっても血眼になってやるようなものではないです。気楽にやりましょう。

レッスンはここで終わってもいいのですが、質問・問いかけの力を活かすための「あるべき状態」で挙げた「他者の質問に驚ける・感心できる。他者の質問から学べる・発見する」のレッスンとして、「なんで?を吟味する、振り返る」ことをお勧めします。

まず最初に行うのは記録です。日記帳でも自分宛てのメール、アナログデジタルなんでもかまいません。テキストだけでも、なんで?の対象となった写真でも。記録したものをときどき、折に触れて見返してみてください。そうすると、人によって実に色々な発見・気づきがあるはずです。

子どもの情報の重みづけの傾向。なんで?の表現と、獲得している言葉と思考の関係や蓄積してきた経験や知識との関係。ときに哲学的な深遠なものがあり、自分の思い込みをリフレーミングしてくれるものがあったりします。そうした体験が重なると、子どもの「なんで?」が宝のように思えてきます。

このような体験を重ねることで質問をする耐性される耐性がつき、質問・問答・対話することに喜びを感じられるようになります。ぜひお試しください。

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