【著者解説動画有】『プ譜』とは何か?概要とテンプレートを紹介します。
プ譜(プロジェクト譜)とは?
『プ譜』とは2018年4月に盟友後藤洋平さんと刊行した『予定通り進まないプロジェクトの進め方』で提唱した、未知のプロジェクトの計画を立て、進めていくためのフレームワークです。プ譜は、新サービスや新製品の開発といった新規事業はもちろん、新しいツール導入や制度策定、目標管理などの活動にも使うことができます。プロジェクトと名のつくものであれば(いや、そうでなくても)、その進め方・見取り図・アーキテクチャ(構造)を表現することができます。自社プロジェクトだけでなく、顧客のプロジェクト支援にも活用できます。最近ではPdM(プロダクトマネジメント)、カスタマーサクセスといった分野でも活用されています。今まで設計図がなくて進め方に困っていたプロジェクトであれば、きっと力になります。
プ譜は、プロジェクトに関わる人材、資金やスケジュールといった所与のリソース、置かれた環境、プロジェクトの目標、採用する手段などの諸要素を紙一枚で可視化・構造化します。
これによって、低い認知コストでプロジェクトの進行の仮説を表現し、他者と共有することができます。いわば、プロジェクトの進め方の「共通言語」を可視化したものになります。この記事では、プ譜の概要、テンプレートと書き方、そしてプ譜の効用について解説します。
獲得目標
プロジェクトで解決したい課題、実現したい目標のこと。勝利条件
獲得目標が実現したといえる成功の定義。評価指標、判断基準。
中間目的
勝利条件を実現するためにつくりあげる、諸要素のあるべき状態のこと。
施策
中間目的を実施するために実行する具体的な活動のこと。
廟算8要素
プロジェクトを行うための所与のリソース、置かれた環境など。
プ譜で描くのは仮説
プ譜を用いるうえで大事なのは、ここで表現するのは目標実現のための「仮説」だということです。プロジェクトは通常のルーティン業務とは異なり、未知の要素を多分に孕み、多要素・多変数の複雑で、不確実で、想定外のことが起こり得るものです。そうしたプロジェクトを進めるために、抜け漏れのない完璧な計画を事前に立てることはできません。目標に対して、このような状態になり、これらの施策を実行すれば目標が達成できるであろうという仮説・推論を表現するのがプ譜です。
このプ譜の書き方を動画でも解説していますので、よろしければご覧ください。
プロジェクト開始後のふりかえりをプ譜で行う
仮説は実行してそれが正しいかどうかを評価しなければなりません。そのため、プ譜も仮説の実行した結果と、その結果を受けてそのままの仮説で進めていけばいいのか、それとも仮説を修正しなければいけないかの検討・意思決定をします。この行為をプ譜は下記のように表現します。
プ譜で行うふりかえりの方法
最初に立てた仮説を実行した結果、獲得した情報や遭遇した事象を「吹き出し」で書き込み、その内容を評価・検討します。最初に立てた仮説の施策を実行して、中間目的が実現できそうか?中間目的が実現しそうなら今の施策を継続します。実現しなさそうなら施策の実行のし方を見直すか、その施策は中止し、別の施策を実行したり、他の施策にリソースを割り振るといった決定を行います。
そうして仮説を更新し、実行した結果を書き込み、評価・検討をする。この手順を繰り返し、常に現実に一歩先んじて考え、行動していきます。この仮説の更新を将棋の棋譜のように局面局面で記録しておくことで、自分たちがどのような意思決定を行ってきたかがわかります。
このように時系列的な遷移も含め、逐次変化するプロジェクトの状況・全体像を可視化するツールがプ譜です。
そうして仮説を更新し、実行した結果を書き込み、評価・検討をする。この手順を繰り返し、常に現実に一歩先んじて考え、行動していきます。この仮説の更新を将棋の棋譜のように局面局面で記録しておくことで、自分たちがどのような意思決定を行ってきたかがわかります。
このように時系列的な遷移も含め、逐次変化するプロジェクトの状況・全体像を可視化するツールがプ譜です。
プ譜はどんなプロジェクトも記述できる。
プ譜はプロジェクトの種類、規模、役職を問いません。これまで開催してきたワークショップやコンサルティングのなかで、新製品開発、デジタルトランスフォーメーション促進、カスタマーサクセス、各種マーケティング施策の実行、社内教育プログラム策定、インナーコミュニケーション活性化といった様々なプロジェクトがプ譜化されています。この仮説の表現と実行した結果の評価と仮説更新は、プロジェクトのライフサイクル・フェイズに当てはめてみましょう。
一番最初の仮説フェイズでは仮説を表現するツールとしてはもちろん、プロジェクトに関わる人々が一人一人プ譜を書き、それらの考えやアイディアを分析・統合し、全員が「これならいけそうだ!」と思える統一のプ譜をつくるツールとしても使用できます。この意味でプ譜は合意形成のツールでもあります。
また、仮説を動かす実行フェイズで使用すれば、プロジェクトの意思決定の過程を、目で見える・観察可能なものにし、形成的評価を行うためのツール、つまり「振り返り」のツールとしても活用することができます。
プ譜の書き方
それではここから実際のつくり方について、私が行っているオンラインのプ譜制作支援サービスを例に取って説明しましょう。オンラインのプ譜制作支援サービスは、主に経営者やマネジメント職、プロジェクトマネージャーを対象に行っているもので、私がヒアリングをしながら、頭の中にある漠然としたプロジェクトの進め方のイメージをプ譜で表現するというものです。
プ譜制作では二つのツールを使用します。
一つが、オンライン会議システム「Zoom」。もう一つが「Googleスライド」(又は、パワーポイント)す。Zoomで行うにあたって、私から招待URLをご指定のメールアドレス或いはFacebookメッセージでお送りします。このURLを踏むと、ビデオ画面が表示されます。
こんな感じ |
ビデオ画面が表示されたら、プ譜のフレームワークを記載したパワーポイント、もしくはGoogleスライドを画面共有します。
所要時間は60~90分で、ヒアリングの順番は下記の通りです。
- プロジェクトの獲得目標
- 勝利条件
- 中間目的
- 施策
- 廟算八要素
- これから行うことの優先順位とスケジュール確認
まず、お聞きするのは、「プロジェクトの獲得目標」。(※獲得目標の表示位置は使用するプ譜のフォーマットによって右下にあったり、左上にあったりします)
赤線で囲った部分にプロジェクトのゴールを記入します。ゴールといっても最終的なゴール(世界平和みたいな)から、直近の目指したいゴールまで、レンジは様々あります。既にプロジェクトを動かし散る方には直近(短期)、或いは中期的な目標を設定することをお勧めし、まだプロジェクトを進めていない方には最終的なゴールを設定することをお勧めしています。
その次にうかがうのが、その目標がどうなっていたら成功と言えるのかという「勝利条件」です。
勝利条件とは、先に設定したプロジェクトの獲得目標が「どうなっていたら成功と呼べるか」という判断基準、指標のことです。
勝利条件が設定できたら、次は、設定した勝利条件を実現するための「中間目的」についてうかがいます。中間目的とは、自分(自社、社内メンバーなど)やユーザーや社会などが、どうなっているべきかという「あるべき状態」のことです。
中間目的の設定の仕方は、「ほにゃららマーケティング」を導入する時の原理原則のようなものがあれば、それに基づいて「あるべき状態」を表現します。数値目標(KPI)があるなら、その数値目標を果たす上で、自社サービス(の機能など)やユーザー(の利用状況など)が「どうなっているべきか?」と表現します。
中間目的が設定できた後は、みなさんのプロジェクトの状況によって順番が前後するのですが、
個々の中間目的を実現するために行う「施策」か、みなさんの所与のリソース(「廟算八要素」と言います)についてうかがいます。
施策とは具体的な行動、アクション、タスク、作業のこと。
廟算八要素にはプロジェクトチームメンバー、予算、スケジュール、外部環境、求める品質・クオリティ、競合などの情報を書き込みます。
一般的に、中間目的がキマると施策も出てきやすいのですが、自分たちのリソースでは到底できないことを施策としてもプロジェクトは進まないので、現在の所与のリソースに基づいて施策を考えた方が良いケースもあります。ここはヒアリングの流れに応じて進めています。
上述したのは書き方の一例です。勝利条件がなかなか思い浮かばないという場合は、獲得目標を書いてから、廟算8要素に移ってもかまいません。自分たちが何を持ち・持たず、何を知り・知らないかを把握してから、現実的に打てる施策を考え、出てきた施策を中間目的に分類し、最終的にプロジェクトメンバー全員が腹落ちする勝利条件を表現するというルートもあります。
こうして勝利条件、中間目的、施策の間に線をつないでいって、プロジェクトのツジツマが合っているかどうかを確認して、プ譜が完成します。プ譜が完成した後は、着実にプロジェクトを進めていくために、優先的に取り組むべきこと、今日これから何を動かすか、何なら動かせるかということについてうかがってヒアリングは終了です。
プ譜を書くことで得られる効果
プ譜を書くことは、自分とのコミュニケーションに役立ちます。頭の中でわかっているつもりのことやうすうす感じていることをプ譜に書き出すことにより、自分自身の認識についての理解が深まります。
プ譜を使って組織の内部・外部の人と議論やコミュニケーションをすることで、共通認識が深まり、それぞれが見えている部分をつなぎ合わせて、全体像を理解することができます。メンバーや組織の意識全体を顕在化することによって、建設的な議論や効果的なコミュニケーションに役立ちます。
また、立場の違う人々がいっしょにプ譜を書くことで、おたがいの立場や見えているものを理解し合うことができ、現状認識とビジョンの共有にもたいへん有効です。プ譜は「学習する組織」に役立つ有効なコミュニケーションツールにもなります。(※ここについては別の記事で解説します)
話をプ譜のオンライン制作に戻しまして、プ譜制作後、ご希望の方には、実際にプロジェクトを動かした結果、わかったことや変化したことを譜に書きこんで、それを受けて次にプロジェクトをどう進めていくかという第二、第三局面以降のプ譜制作及びプロジェクトの進め方についてのコーチングも行っています。
オンライン「プ譜」制作をご希望の方は、ぜひお気軽に下記までお問い合わせください。
takaho78@gmail.com