高崎線の四人ボックス席で帰るプロジェクト 後編

(初めてこの記事をご覧になる方は、前編をご覧下さい)

昨年二月に埼玉県に引っ越し、高崎線に乗って帰る距離とおっさん乗客の民度の低さに絶望した私は、セミナーやワークショップがあれば、必ず最後にこのシートを掲示し、高崎線で一緒に帰る人を募集し続けてきた。

※画像※

それから約一年。ついにワークショップがきっかけでFacebookの友人になった高野さんからこのメッセージを受け取った時、私は想像の翼をはためかせすぎたのかも知れない。




この時、高野さんは私と二人で帰ることを考えていたであろう。
実際、その方が無難かつ堅実な道であったのだが、この時の私は積年の願いが果たされたことに舞い上がってしまったのか、二人席で帰るという目的を一足飛びに越えてしまい、一気にボックス四人席の占有を脳裏に思い浮かべてしまった。



私は心当たりの知人に届けとばかり7月20日に決起文を書き上げ、23日までの間でさらに二人の同乗賛同者を得た。(小林さん、近藤さん、ありがとうございます!)

しかし、この決定はプロジェクトの難易度を一気に引き上げてしまう。
二人であれば、向かい合っても隣り合っても良いため、座席は四人ボックス席である必要はない。
一方、四人となるとボックス席以外に選択肢はなく、四人全員がボックス席に座るには、早い時間から始発電車が止まるホームに並んでいなければならない。

上野発の高崎線が発車するホームは、三、四十分も前から並んでいる人がいる。我々は彼らとの競争にも勝たなくてはならない。そこで私は、「高崎線に気心知れた四人で乗って帰宅する」というプロジェクトの獲得目標を達成するため、プ譜を書いた。
勝利条件は、「四人全員がボックス席にちゃんと座れている」である。


この勝利条件を果たすための選択肢は、普通車かグリーン車の二択しかない。両者の特徴・違いは以下である。

●普通車
・上野始発のホームに、20~30分くらい前に並んでおく必要がある。
・車両は4号、5号車以外の全車両。
・端っこの車両の方が席は取りやすい。

●グリーン車
・普通車に比べると、列に並ぶ時間は短い。
・車両は4号、5号車のいずれか。
・グリーン車分の費用がかかる。

いずれの車両に乗るかを同乗のみなさんに相談したところ、普通車を選択することになった我々は、確実に四人で座ることができるよう、発起人である私が、上野始発20:14に先駆け、19:45には同列車が到着するホームで待つことにした。

待つ、といっても連日の猛暑である。丸腰で臨むわけにはいかない。水といくばくかの食物。そして、早く到着するであろう初対面のみなさんのための話題を携帯し、首筋やこめかみから流れ落ちる汗をぬぐいつつ、後続のお三方の到着を待った。
(ここで述べたことが、プ譜の「施策」にあたる)


待つこと十数分、当初私一人だけの列が、見知らぬ数名の務め人も並びはじめ内心ドキドキしていたところに、小林さん、次いで近藤さんが現れてくれた。高野さんは出発ギリギリの到着であったが、近藤さんの先頭車両で待つ作戦が功を奏し、我々はみごと四人ボックス席の占有に成功した。



四人席を占有し、顔見知りの人と一緒に、膝突き合わせながら帰るというこの幸福。

いつもは気になる前の座席の人とのつま先小競り合いも、見知った人との関係性であれば、何一つ気になることがない。
いつもは「はぁ、まだ上尾かぁ」という感覚が180度変わり、「え!もう上尾?」という時間間隔に変わる。

何よりこの距離感がいい。




我々四人は私を除けばお互い初対面であったが、お互いの仕事の話をしつつ、何か一緒にプロジェクトを興せそうな話もすることができた。高崎線からはもっとも縁遠いと思われる言葉、「オープンイノベーション」がこの日、上野始発20:14分の車両で起きたのである。
さらにありがたいことに拙著の購入まで頂いており、万感の思いである。

私の高崎線史上、もっとも充実した時間が流れた陰で、私の心に新たな計画が芽生えた。

次は、電車に乗る前に、高崎線ユーザーの(実は今日参加してくれた小林さんは宇都宮線ユーザーで、わざわざ大宮で乗り換えてくれた)みんなで上野で飲む。そして、その後に電車に乗るという計画である。

そしてそれを果たすことができれば、次はボックスをもう1つ増やして8人で。果ては一車輛まるごと知人・友人で埋めて帰るということをしてみたくなった。

次回は9月に実施予定。
この「高崎線で帰りましょう会」のFacebookグループをつくるので、ご興味のある方はぜひ参加リクエストを送られたい。

本件を通じて私が関係諸氏に申し上げたいのは、自身のやりたいことを公言し続けることと、その機会の端緒をとらえたならば、一気呵成にそれを捕まえにいく勢いと速度の重要さである。

最後に、毎度恒例で恐れ入りますが、前述したプロジェクトの過程を可視化する『プ譜(プロジェクト譜)』について詳しく知りたいという方は、是非本書をご覧下さい。




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