「スライド“間”の呼吸」──構成の切れ目に“つなぎの言葉”を与えるNotebookLM


 266枚。

それが、私がある企業の「構造化スキル研修」のために作成したスライドの総枚数です。
7時間に及ぶ長丁場の研修で、知識インプットとワークショップを組み合わせた構成。
スライドの構成を考え、目次を作成した当初は、章ごとの流れは把握していたはずでした。

それなのに、全スライドが完成し、リハーサルでスライドを読み返していると、ときどき、

「このスライドのあとに、なんでこのスライドをもってきたんだっけ?」

と思うことがあります。

目次も構成も自分で作ったのに、スライドとスライドの「間」が抜けていく。

構成は“ある”のに、スライド間の“つながり”は“見えなくなっている”。

目次と構成を越えて、スライド“間”の呼吸が失われているのではないか――

この気づきこそ、NotebookLMの音声解説に出会って初めて言語化できたものです。

本記事では、

・構成を知っていることと、“つながり”を知ることの違い

・NotebookLMが示した“つなぎの語り”の価値

・この発見がすべての講師にとって意味するもの

という流れでお伝えします。


構成は“ある”が、つながりは“忘れられる”

スライドを構成する段階では、誰もが「全体像」を理解している気になります。でも、スライドを1枚1枚積み上げていくうちに、スライド間の“つながり”が薄れていきます。

「この話題から次に行くとき、どう空気を変えるつもりだったんだっけ?」

「この章の終わり、なんだか唐突に感じるな…。」

こうした違和感は、「構成上の欠陥」つまり伝えたい情報を記載したスライドが「ない」のではなく、スライド“間”の呼吸のようなものが「ない」ことにあるのです。

この“つながり”がなかったり、つながりに違和感のあるものは、参加者の理解を妨げるものになります。


NotebookLMの音声解説が教えてくれたこと

冒頭の研修資料の見直しを行っていた頃、私はNotebookLMの「音声解説」機能で資料の内容を解説してもらうことを思いつきました。

電車通勤中にスマホで資料を見て、音声解説を聞けば有意義な時間が過ごせるのではないか、くらいの軽い気持ちだったのです。

しかし、そこで得たのはただの読み上げではありませんでした。

AIが資料全体の構造を理解し、自分なりの“つなぎ”を作りながら話しはじめたのです。


スライド“間”の呼吸

自分では見えなかった“隙間”や“切れ目”が浮かび上がってくる。

構成の切れ目に、“つなぎの言葉”を与える。

それは例えば下記のような言葉です。

  • 「ではここまでが基本的な理論でした。次に、それをどう現場で活用するかを見ていきましょう。」
  • 「この話題は少し抽象的だったかもしれませんが、次のケーススタディでグッと具体化されます。」
  • 「ここで一度、受講者の立場に立ってみましょう。」

こうした「つなぎの言葉」は、講師がライブで話す中で自然と生まれるもので、スライドそのものには書かれません。

でも、NotebookLMは“解説としての連続音声”を構成しようとするため、その“隙間”を勝手に埋めてきます。

電車で音声解説を聞き、自分でつくった資料を見ていた私は、自分のスライドには書かれていない「つなぎの言葉」をAIが語っていることに気づき、驚きました。

その驚きは下記のような価値を私にもたらしてくれたのです。

・自分がつくった構成に、思わぬ説得力を加えてくれた

・忘れていた“言外のつながり”を再発見できた

・この流れじゃ伝わらないぞ、という予感に気づけた


NotebookLMの音声解説は、講師が語るべきだった「つなぎ」 をAIが音声の“語り”という形で返してくれる。

これは全ての研修に通用する「新しいリハーサル」の形なのではないでしょうか。

音声解説を聴きながら感じたのは、AIが構成をチェックしてくれているというより、自分がかつて描いた“話の流れ”を音声として再現してくれている感覚でした。

AIが自分の資料を語るとき、その声は、まるで「別の講師が自分の構成を引き継いで語っている」ように聞こえます。

その語りの中で、構成の意図が露出し、構成の欠落が露見する。

NotebookLMは、私に“正しさ”を教えるのではなく、「かつての自分が何を伝えようとしていたのか」を思い出させてくれたのです。


すべての講師にとっての「構成の相棒」

この価値は、構造化スキル研修だけにとどまりません。製品説明会でも、コンプライアンス研修でも、新入社員研修でも、講師が構成の“意図と流れ”を思い出すという点では共通しています。

NotebookLMの音声解説は、

・スライドをつなぐ“語り”を再構築する

・忘れられた意図を“音声”で呼び戻す

・講師が一人で構成と向き合う時間を、もう一人の相棒とともに過ごせる

そんなツールなのです。


AIが発する“声”が、私の研修の“間”をつないでくれた。それは、まるで自分の中にいたもう一人の講師に出会ったような感覚でした。

NotebookLMは、構成を磨くための鏡であり、スライドとスライドの間に潜む「つながり」を見える化(聞こえる化?)してくれます。

ぜひみなさんも研修やウェビナー登壇前のリハーサルのお供にNotebookLMの音声解説機能を使ってみてください。

ここまで講師視点で話をしてきましたが、こうした「間のつなぎ」が参加者にどのような価値をもたらすのか?講師の評価にどのような影響をもたらすのかについては、下記の記事をお読みください。

https://kodomonogatari.blogspot.com/2025/10/blog-post.html

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