プロジェクトメンバー全員で言語化能力を鍛える方法

noteに「状態の言語化が、プロジェクトの成否のカギを握る」という記事を書きました。この記事の要旨の一つが下記でした。

最初の表現はピッタリ(成功の定義に対して適切)ではないという前提に立ち、言葉を豊かにしながら、磨き、ピッタリしっくりくるものに仕立てていく。このように考えると良いです。このピッタリしっくりくる言葉の表現にチャレンジし続けることが、状態の言語化能力を鍛えます。この言語化能力は、プロジェクトマネージャーやリーダー一人が鍛えようとしても難しく、プロジェクトメンバーみんなで鍛えていくことができます。

このブログでは、上記の「プロジェクトメンバー全員で言語化能力を鍛える」方法を紹介します。

昨年から関わらせて頂いている成蹊大学の平野多恵先生の「ひらのゼミ」では、ゼミ全体の目標を実現するための計画を「プ譜」で書くとともに、セミ生一人一人が「個人のプ譜」を書くということをしています。

個人のプ譜とは、「全体のプ譜の目標が実現しているとき、自分はどうなっていたいか?どうなっていないといけないか?」を考えて表現したものです。

「全体のプ譜の目標が実現しているとき、自分はどうなっていたいか?どうなっていないといけないか?」という未来完了時制、すなわち、「すでに終わった状態を想像して考える」ことで、計画に具体性をもたせ、思考を刺激する効果があると言われています。(カール・E・ワイク『組織化の社会心理学』)

個人のプ譜を自分で考えて書くことによって、ゼミ生のゼミ全体の目標への主体的な参加を促すことを企図しています。

個人プ譜はゼミ生が一人一人書くのですが、これが「プロジェクトメンバーみんなで言語化能力を鍛える」ための第一歩になります。

個人のプ譜は、各個人が好きなように書けばいいというものではありません。プ譜に描く自分の「こうなっていたい。こうなっているべき」姿は、ゼミ全体の目標に貢献するものになっている必要があります。それをフレームとしてハメていくために、個人のプ譜にも、ゼミ全体のプ譜で設定した中間目的を設定します。

例えば、ゼミ全体の中間目的に、「ゼミ生が自主的・積極的に動ける環境・関係性になっている」というものがあります。

これを、個人のプ譜の中間目的にも設定するのです。


そして、ここからがミソです。個人のプ譜の中間目的に設定された、「ゼミ生が自主的・積極的に動ける環境・関係性」とは、「自分にとってどういう意味を持つのか?」を考えて定義するのです。「ゼミ生が自主的・積極的に動ける環境・関係性」になっているとき、「自分はどんな状態になっているか?どうふるまっているか?」と想像して書くのです。

これをゼミ生全員が書くと、一つの状態に対して多様な表現・意味が集まります。


これは個人の置かれている状況や性格なども影響しますが、自分以外の人の表現をみると、「こんな捉え方があるんだ」という発見があります。それがキッカケになって、自分の表現を再考してみるといったこともあります。

『自分が使う言葉の範囲をこえては思考できない』

『使い慣れた言いかたで満足していると、伝える力は伸びない』

この二つの文は、平野先生が著書『国語をめぐる冒険』にお書きになったものです。未知で、あいまいで、多義的で、想定外の事象に見舞われるプロジェクトに取り組む際、手持ちの言葉が少ない・貧しいと、自分が置かれている状況や遭遇した事象をうまく解釈・認識することができません。そうすると、良質な判断ができなくなり、他者にうまく伝えることもできなくなります。

一人では限られた表現しか考えつかなくても、関わるメンバー全員の表現を持ち寄れば、言葉が豊かになっていきます。

チームメンバー全員で言葉を豊かにし、それを材料にして自分の表現を磨いていく。これが「プロジェクトメンバーみんなで言語化能力を鍛える」方法です。

全員で言葉を豊かにし、磨かれた個人のプ譜の表現は、ボトムアップ式で全体のプ譜にも良い影響を与えます。この事例についてはまた別の記事で書きたいと思います。


【お知らせ】
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