もし片手しか使えなかったら、どうやって納豆をかき混ぜる?


納豆かき混ぜキットという存在をTwitter で知りました。

この動画を見たとき、「いつも使っている手段が使えなくなっても、他の手段を使って“要となる状態”を生成できれば、目標を達成できる」例だとおぼろげに感じました。

ただ、キットを見てそう感じただけなので手応えはありません。そこで実際に自分たちがその条件に置かれたらどうするか?ということを試してみることにしました。

片手で納豆を食べるをゴールにして、自分が片手のときにフタを開けてから混ぜて食べるまでの一連の工程を体験してみようということです。

アーネとジージョも誘って一緒にやってみました。

納豆を食べるまでの行為(要素)の状態を実現するために「どういったことを行うのか?」を整理・記録するのにプ譜を使用しました。

実際に納豆のパックをさわり始める前に、中間目的の欄に納豆を食べるまでの行為(要素)の状態を下から順に書いておきます。そして、その状態を実現するためにアーネとジージョが行うことを施策の欄に記録していきます。勝利条件は設定しません。



フタをあけることやフィルムをはがすことは苦労することなくできたので割愛し、「タレ・カラシの封が切れている」という状態を実現するために、アーネとジージョが採用した手段をみてみます。

アーネが採用した手段は「指で袋をつまみ、歯でくわえて噛み切る」というものでした。

読書きのアーネは、歯を磨いているときでも本を手話さずにいられるよう、口で歯ブラシの取っ手を加え、あいている手で歯磨き粉をつけるということをしているのですが、そんなアーネの特性を生かした手段だと感じました。



ジージョはアーネのように口ではかみきれないと考えたのか、「ハサミつかっていい?」と聞いてきました。

ハサミを使ってはいけないとは言っていません。身の回りの資源を活かそうとして素晴らしいと思いました。

ところがハサミを使ってもうまく切ることができません。そこで、お茶の入ったコップでタレの袋を押さえて、袋の先端を切ります。




次に「納豆が混ざっている」状態を実現するための手段です。

片手のまま混ぜると下の動画のようになります。



アーネが採用した手段は、「1本の箸を納豆及びパックに突き立て、もう一本の箸で混ぜる」というものでした。



この手段は、学校の授業で体験したコンパスが頭に浮かんで思いついたとのことでした。

ジージョは、アーネの箸の使い方を見てそう考えたのかわかりませんが、ジージョのはしは「エジソン箸」という頂点部が連結されていて、“分けて”使えないもののため、パックのフタを顎ではさんで混ぜるというものでした。
ただこの手段では満足しなかったのか、他の手段を試したかったのか、中身の残るペットボトルでパックのフタをおさえるということも行っていました。




アーネとジージョが考案・採用した手段をみると、自分の経験、得意なこと、身の回りの資源、他者の観察から、ある一つの状態を生成するための様々な(複数の)方法を考案・導出することができるということを感じます。




片手しか使えない条件で納豆を食べるまでの工程を実際に体験してわかることは、パックを「把持」するとか「固定」するということが、この工程では重要な要素なのだということです。
これは文字通り体感してわかるもので、頭の中だけで考えてなんとなく行為のイメージは浮かんでも、把持・固定という状態が重要だということに気づきにくいということをあらためて感じました。

なお、納豆かき混ぜキットを使った場合は、冒頭の動画のとおりなのですが、実際に自分たちが片手で納豆を食べるまでの体験をしてみると、「こういう状態を生成するために、この手段を採用したんだな」ということを、いっそう深く感じることができました。ジージョも納豆かき混ぜキットを使ったときと、自分のやり方で行ったときと、どう違ったと感じたか聞いてみると、「うごかないしかんたんだった」と言いました。「うごかない」は固定されているの別の表現です。

これは問題解決のアクティビティとしても良い体験ができると思います。

納豆かき混ぜキットは下記のリンク先から購入できます。


考案者の川口晋平さんは作業療法士として、様々な自助具やリハビリ訓練機器をつくっておられます。これらの製品の収益は、活動費用、3Dプリンターの保守など材料費、サンプル作製費、同じような活動を行なっている方達の購入費や寄付に使用されるとのことですので、ぜひご購入下さい。


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