自分の言葉で表現できれば、プロジェクトはうまくいく

2021年10月から、平野多恵先生のゼミ活動(以下、ひらのゼミ)にプ譜で関わらせていただくことになりました。活動はまだ続いていますが、関わることになった経緯や活動の中で得た発見など、途中経過を記しておきます。

ひらのゼミに関わることになった経緯

2021年8月に『国語をめぐる冒険』という書籍を読み、そこにあったいくつかの言葉にたいへん感銘を受けた、というブログを書きました。

そのブログをツイートしたところ、著者の一人である平野多恵先生に反応頂き、ブログで紹介したプロジェクトの仮説と構造を表現するツール「プ譜」にも興味を持って頂きました。Twitterで何度かメッセージを交わさせて頂くなかで、先生の勤務先のゼミ活動でPBL(Project Based Learning)」を意識して進めておられることを聞き、ゼミの活動にプ譜を活用する機会を頂くことになりました。
ゼミの活動というのは、ひらのゼミ「全体」の運営と、運営を構成する「部分」にあたる「成蹊大学欅祭への出展」と「オンラインゼミ祭の開催」を指します。

ひらのゼミでプ譜に関わるにあたり、私が掲げたテーマは、「プロジェクトと言葉」です。

これだとだいぶ抽象的なので、もうすこし説明します。冒頭紹介したブログで書きたかったのは、

「プロジェクトを自分の言葉で表現できれば、そのプロジェクトはうまくいく」

ということでした。


未来の未知の目標を実現する道のりは、事前に、完璧に、見通すことができない。
わからないものをわからないなりに、どうにか食らいついて言葉にする。
目標実現のために調べ、参考にした対象が使っていた借り物の言葉のままでは、
自分のプロジェクトに適した手段を選んだり、良い意思決定をしたりすることができない。
そして、それらの言葉を最初から持つことは叶わず、プロジェクトを進めながら見つけていかなければならない。
(最近、銀英伝を見ている影響で)表現の翼を羽ばたかせることが許されるなら、プロジェクトとは自分にぴったりの言葉を探し続けること、と言ってもよいと思います。

「プロジェクトを自分の言葉で表現できれば、そのプロジェクトはうまくいくのではないか?」

この問いを掲げて2021年10月のゼミから関わることになりました。


問いを確かめるための構造

問いを確かめるために下図のプ譜をつくりました(※ここからは勝利条件や中間目的といったプ譜の用語が頻出し、いちいち説明すると読みづらくなってしまうため、詳しい用語解説はこの記事をご覧ください)。このプ譜はルーブリックのようなものだと思ってください。


「自分が携わるプロジェクトを、自分の言葉で表現できるようになる」という勝利条件を満たせば、「プロジェクトを成功させる」という獲得目標が実現する、という構造になっています。

この勝利条件を満たすために適用する原理として、『国語をめぐる冒険』で平野先生が書かれていた以下の3つの言葉を選びました。

・自分が使う言葉の範囲をこえては思考できない
・使い慣れた言いかたで満足していると、伝える力は伸びない
・抽象と具体の間を行き来する中で表現力が鍛えられる

例えば、上図の真ん中にある丸い囲みの中間目的に、「同じ目的の他者の(異なる)解釈や状態の表現に触れている」という表現があります。これは、「自分が使う言葉の範囲をこえては思考できない」という原理を適用しています。自分の使い慣れた言葉だけでは、本当に自分の実現したいプロジェクトの成功の定義や諸要素のあるべき状態は表現できない、というわけです。

そしてこの状態を実現するために→線でつながる四角い枠の施策を実行します。「同じ目的の他者の(異なる)解釈や状態の表現に触れている」という状態を実現するために、「4~5名のグループをつくり(計6グループ)、書いたプ譜を共有し、グループで一つのプ譜にまとめる」、「ペア・グループをつくり、書いたプ譜を共有する」といった行動を実行します。

この計画をもとに、ひらのゼミのプ譜を3つ書くことにしました。一つ目がひらのゼミ全体のプ譜。これは平野先生と私がゼミの時間の前に二人で対話しながら書きあげました。次に、ゼミの時間に部分としての欅祭のプ譜を書き、さらに欅祭を実行するゼミ生一人一人の個人プ譜を書くことにしました。

この個人のプ譜を書くという施策は、「全体と部分の2つの視点を持てている」という中間目的につながります。


欅祭りやオンラインゼミ祭を何のために行うのか?欅祭やオンラインゼミ祭が成功しているとき、自分はどうなっている必要があるか?といった粒度の異なるプ譜を連動させていきます。
このように仮説を確かめるためのあるべき状態(中間目的)と実行する施策を設計したうえで、10月のゼミに臨むことになりました。


プ譜を書いて運用した結果

10月のゼミでは下記のことを行いました。

・ひらのゼミ全体のプ譜をゼミ生に見せる(ひらのゼミ全体のプ譜は平野先生と前田で事前に作成)
・ゼミ生一人一人が、欅祭を成功させるためのプ譜を書く
・4~5名のグループをつくり(計6グループ)、書いたプ譜を共有し、グループで一つのプ譜にまとめる
・欅祭係の学生がグループのプ譜を素材にして、一つのプ譜にまとめて全員に共有する(後日、欅祭係の学生がつくったプ譜にフィードバックを行う)
・欅祭を成功させるために、どんな自分になっていたいか?という個人のプ譜をゼミ生一人一人が書く(個人のプ譜と、欅祭全体のプ譜を連動させる)

欅祭係のゼミ生がつくったプ譜は4回更新され、その都度言葉が具体的になっていくのが印象的でした。

・最初に書いたプ譜


・4回目の更新時のプ譜


欅祭のプ譜の勝利条件は、「投票で展示部門一位」を取ることでしたが、出展8年目にして初めて一位を獲得することができました。


平野先生からは上記の施策を行ったことの効果として、下記のコメントを頂きました。

・今まで学生たちが何のために欅祭に出展しているかについて意識が十分に及んでおらず、ややもすれば受け身になりがち。
・プ譜を作成したことで、何のためにやるのか、そのために何をしなければいけないかが明確になった。
・目的を達成するための施策も具体的に考えたことで、学生の意識が格段に高まった。
・目的が明確になったことで主体性が生まれた。
・例年よりも一人ひとりのチームメンバーとしての自覚が高まっていたと思う。

ふり返りでさらに言葉を磨き、豊かにしていく

11月には欅祭の活動のふり返りを行いました。

・欅祭係のゼミ生が、欅祭でで行ったこと(展示内容事務手続き、改善点など)を報告(共有)する
・グループに分かれ、プロジェクトが成功したときの状態を共有する(表現の変更や新規追加)
・個人の活動をふりかえりシートに書く

欅祭で実行したことについての気づき、改善点はオンラインにあるプ譜にゼミ生が書き込んでいく形で行いました。



最初に立てた仮説をどのように行ったか?行った結果、どのような状態になっていたか?
最初の表現よりもその状態にピッタリの言葉があればそれに変更し、最初に書いたプ譜にはなかった状態があれば、それを表現する。

これらの施策が、「自分が携わるプロジェクトを、自分の言葉で表現できるようになる」ための要素である、下記の中間目的につながっていきます。

・言葉の変化を自覚できている
・最初に立てた仮説と現在の状態のズレを自覚できている
・より適切な表現を探している(言葉と格闘している)
・「なっていた」状態に多様な(自分以外)の解釈を持てている

どんなプロジェクトでも大なり小なりふり返りは行います。ふり返りにはいろんな手法がありますが、プ譜を使ったふり返りの特徴は、「プロジェクトが成功したとき、関わる要素がどんな状態に“なっていたか?”」を言語化するところにあります。

したことは形になっている、残っていることが多いので、何をしたかはすぐわかる。言葉にしやすいですが、「なっている」状態は形になっていないことが多いです。それを言葉にすることが、自分のプロジェクトを自分の言葉で表現する力を鍛えることにつながるのではないかと考えます。

この日は中間目的に掲げた「誰もが自信を持って正しい方法(歌の意味から逸脱していない)で和歌占いが出来る」にある、「自信を持って」という言葉の表現を、「自信を持って、って具体的にどういう状態だろう?」ということを考え、オンラインのプ譜に書き込んでいきました。



この「自信を持って」の表現(定義)いかんで、その状態を実現するための施策は変わり、そこに要する時間なども変わってきます。
ここで考えたことが、次回の欅祭はもちろん、和歌占いを行う別のプロジェクトのときの参考になります。いいふり返りは未来に目を向かわせてくれると実感しました(もともと、ふり返りは未来のために行うためのものでありますが・・・)

ちなみに、十分な時間がないのはどのプロジェクトにも共通することですが、今回の欅祭でも、「自分が携わるプロジェクトを、自分の言葉で表現できるようになる」ためにやった方がよいと考えていた施策を行いきることはできませんでした。ただ、レシピやプラモの設計図などと違い、施策を全部やりきらなくてもプロジェクトの目標は達成することがあります。
だからこそ、今回実行しなかった施策を実行したとき、彼・彼女らの言葉がどのように変化しているかを楽しみにしています。

いったん現場からは以上です。続報にご期待ください。

ひらのゼミのソーシャルアカウントでもときどきプ譜を用いた活動情報が投稿されていますので、ぜひフォローください。



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