高崎線プ譜感想戦から考える、モビリティ3.0のビジネスモデル

上京して以来、埼京線・中央線・銀座線という最激込電車通勤を経験し、こんな通勤はもう嫌だと、
フレックスな働き方に少しずつ変えてきたここ数年。2016年に埼玉県行田市に引っ越して以降は、高崎線に乗っている。高崎線は埼京線や中央線のような込み具合ではないが、これらの線と比べてイヤなことが2つある。

一つは、高崎線は上野からの始発電車があるのだが、四人が向かい合って座るボックス席に座ると、スーツ姿のおじさんたちが缶ビールや缶チューハイをプシュプシュあけることだ。遠い席なら気にならないが、目の前や隣でこれをやられるのはキツイ。特に暖房のきいた車内で乾き物もセットにされた日には目も、いや鼻もあてられない。

もう一つは、帰路につく下り電車で、高崎方面に向かうほど四人ボックス席も空いてくるのだが、
向いの席があくと、靴をぬいて座席に足を置くことだ。靴をぬぐだけマシではと思おうとしたこともあったが、あの蒸れた足を置いた椅子に座るのかと思うとやはり嫌悪感しか出てこない。

この電車に片道約70分乗り続ける人生を少しでも変えたいという怒りにも似た感情が原動力となり、私は「高崎線の四人ボックス席を気心の知れた人で埋め、楽しく会話しながら帰宅する」という企画を立て、勉強会やワークショップで登壇する度、この企画に賛同してくれる人を募った。



その地道な宣伝活動が実を結び、2018年7月に、勉強会などで知り合い、Facebookでつながった方々と四人ボックス席に座って帰ることに成功した。
(当日の様子は、こちらの記事をお読みいただきたい)



見知らぬ人同士で座ると、向かい合った人との膝とつま先の小競り合いが気になる距離感が、見知った人同士で座ると、親密さを感じるちょうどいい距離感になる。たいへん楽しく歓談し、「いつかグリーン車を埋めましょう!」という冗談が出る中、同席した小林さんが拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』で提唱しているプ譜をご自身で書いたものを持参され、プ譜の書き方についていくつか質問をいただいた。



この瞬間、私の高崎線企画が大きくアップデートされた。

それは、「高崎線のグリーン車内でプ譜の感想戦を行う」という企画である。

この企画のアイデアは、拙著が品川駅のブックエキスプレスに平積みで置いてくれているのを見かけた時に、書籍購入者の方へ「高崎線のグリーン車をプレゼントする」ということを思いついていたことも影響していると思われるが、この思いつきを試さない手はない。後日、私は小林さんにメッセンジャーでこの企画を提案した。


そうして、10月某日品川駅で待ち合わせ、グリーン車に乗り込み、隣り合って座ってプ譜の感想戦を行った。



品川駅から大宮駅までの約43分間の時間(※この日、私は所用があり大宮駅で途中下車しなければならなかった)は、まさに至福であった。
書籍を購読してくれた方と、提唱するフレームワークを使って記述頂いたプロジェクトについてのディスカッションを行い、お互いにいくつもの気づきやヒントを得ることができた。

一人で電車に乗る時間を、仕事のための勉強の本を読んだり、英会話のリスニングをする時間に使う方もいるだろう。これはこれで有意義なことだが、このインターネットの時代に、二人以上でそうした時間を過ごすことのハードルはグッと下がっている、

私はこの先も高崎線のグリーン車で感想戦を行う企画を不定期に続けていくつもりだが、数日前に所属するオンラインサロンで、「経営3.0の時代の自動車産業は、こうなっていくだろう」というオピニオンにふれた。


  • 経営1.0 車の製造・販売
  • 経営2.0 カーシェアリングサービス・自動運転
  • 経営3.0 移動空間産業の創造、モバイルスペースを価値提供の場とする職業人コミュニティ


この「モバイルスペースを価値提供の場とする職業人コミュニティ」というモデルに、高崎線のグリーン車でプ譜の感想戦を行い、その数が増えてコミュニティ化していく未来が見えた。
この高崎線のプ譜感想戦の要因には以下のようなものがある。
  • 移動手段(車や電車など)
  • ある程度の移動時間(十数分では短い。30分は必要?)
  • 自分で運転をしない(自動運転や代行ドライバー)=自分の目と手が空く
  • 座っていられる(立ってできることなら立っていて構わない)
  • 複数人で固まることができる(向かい合う、隣り合うなど)

これらの要件を満たしていれば、「Uberモデル×学習ビジネス」とでもいうような、「乗車予約をしてボックスカーに乗り、複数人(小グループ)で英会話などを学び合う移動&学習ビジネス」といった姿も見えてくる。1対1では高単価になってしまうため、複数人でシェアできるようにすれば、自ずとそこに学習コミュニティが生まれてくるだろう。

そんな未来を夢想しながら、私は高崎線の四人ボックス席でこの記事を書いている。

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