非技術畑のおっさんが技術書典に行った話
技術はいかに記述できるか?
プロジェクトの研修や講座を依頼されるようになってから一貫して持ち続けている「問い」があります。 それは、「技術はいかに記述できるか?」というものです。
研修も講座も時間が限られていて、そこでインプットできる量とアウトプットしてもらう量には限界があります。
参加者の皆さんの中には、その技術についての概念や知識を知ることができればそれでいい、という方もいらっしゃいますが、一方でのっぴきならない問題を抱えながら、実際にその技術を習得して、自分の仕事に活かしたい、仕事の問題解決に活かしたいという方もいます。
こうした(後者の)方々が研修や講座の時間外、つまり私が傍にいない状況で、技術習得の自学・独学を支援するにはどのようにすればいいのか? この問題意識が、「他者がその技術を習得できるようにするために、技術をいかに記述できるか?」という問い ——煎じ詰めれば、「技術はいかに記述できるか?」という問いにつながっているわけです。
2024年11月3日に開催された技術書典17は、上述の問いのヒントあるいは答えの例を探すことを目的に訪れたのでした。
技術書典、最高かよ
ちなみに私はいわゆる技術畑の人間ではありません。ときどき、プロジェクトの仮説づくりや合意形成、探索やふりかえりなどの支援を行うただのおっさんです。そんなおっさんが生まれて初めて技術書展に行ってみたのですが、結論から言うと最高でした。
今もその最高の気分にひたりながら、11月4日にこのブログを書いています。
何が最高だったかといえば、色んな技術の記述の仕方をした本に出会えました。何より、著者の方から「どのように(紙本のテーマについての)技術を記述しようとしたのか?」という考え方についてお話を伺うことができました。
著者と直接お話ができるというのは、書店や図書館ではまず味わえない非常に貴重な機会です(著者の方やその他のお客さんの迷惑にならないかぎりで)。
それだけではありません。
会場の雰囲気がとにかくいいのです。ビッグサイトや幕張メッセなどで開催されるBtoBの展示会で、血眼になって道ゆく人々の名刺を手に入れようとするガツガツした環境に慣れていた私にとって、技術書典の会場は技術というものに対する探究心とそれを共有する仲間意識のようもので満たされた、とてもあたたかい場のように感じられたのです。
このような場は出展者と来場者だけでつくられるものではないでしょう。この日は緑色のスタッフTシャツを着た方や、おそらくボランティアであろう方々が多くいらっしゃいましたが、こうした運営に携わる皆様の場づくりの試行錯誤や気づかいなくして、あのような場はつくりだせないと思います。ともすれば技術の高低や知識の多寡、新旧などでマウントを取り合うような事態が起きかねないテーマで、こうした場づくりを行われている運営者の皆様に心から敬意を表します。
技術書典で購入した書籍
購入した書籍も紹介しましょう。
『ポットキャストをやりたい! と思ったらまず読む本』(小沢あや さん)
ポッドキャスト番組の企画設計から楽しく継続するコツまでを網羅した本です。会場にはポッドキャストで配信した内容の妙録を書籍にしたものがあり、ポッドキャストについて興味を持ったあとに見かけたのがこちらの本でした。見本誌を拝見して、「読めば一通りできそう」と思わせてくれる内容でした。
『アンチパターンから学ぶコミュニケーション』(FORTE さん)
コミュニケーションにおけるアンチパターンをFORTEさんが実際に経験したものを例にとって解説してくれています。会話形式で具体例を示してくれているので、すーっと頭に入ってきてわかりやすかったです。
『技術同人ボードゲームを作る技術』と『要件定義ゲーム Fat Project 〜俺たちは魔法使いじゃない〜』(遊戯部すずき組 さん)
エンジニア、プロマネ、営業など職種を問わず楽しめそうな要件定義ゲームと、このゲームをどのような考えでつくりあげたのかというプロセスがわかる書籍です。これはマジでセット買いをお勧めします。通常私たちはゲームという最終成果物しか手に入れられませんが、最終成果物に至るまでに、どのような目的で、どんなメカニクスを用いるかといったプロセスを知ることは滅多にありません。技術の記述方法の一種としてとても参考になりました。(※紙本は後日送付されるので書影はありません)
最後になりましたが、自分が経験し、考えたことを、他者に技術書という形で届けるうえで、紙・電子書籍というパッケージにする苦労は並大抵のことではありません。さらに当日の設営や販売の作業も含めると、同人誌を出版して販売するというのは本当に大きなプロジェクトです。そうしたプロジェクトをやり遂げている著者のみなさんの凄さに、これまた心から感服したのでした。