小2国語「おにごっこ」を題材に、遊びの構造を可視化する
小学2年生の国語の教科書に『おにごっこ』があります。この単元では、おにごっこを楽しく成立させるためのルールのバランスを読み取り、オリジナルおにごっこを児童に考えさせる活動をすることが多いようです。
ちょうど小2の娘がオリジナルおにごっこを考える宿題に取り組もうとしていたので、「プ譜」を使って考えてみることにしました。この記事ではその過程を紹介します。
オリジナルおにごっこを考える過程:
- 教科書を読む
- おにごっこを成立させている要素とルールの構造を可視化する
- ルールを追加することで構造にどんな影響を与えるのかを把握する
- オリジナルルールを追加して、楽しく鬼ごっこができているバランスを調整する
なお、教科書で読み取った内容からオリジナルおにごっこを考えるために、パワーポイントのプ譜のフォーマットを使用します。
教科書を読んだらまず、プ譜の獲得目標に「おにごっこをする」を記入します。
勝利条件には「どうなっていたら目標が成功したといえるか?」という定義を記述するのですが、この場合、おにごっこを構成する要素が「どうなっていたらおにごっこが面白いか?」「おにごっこという遊びが成立するか?」と考えます。この内容は教科書を読み取る中で考え、表現していきます。
次に記述するのは中間目的です。中間目的は勝利条件を構成する要素とその状態を書きます。問いかけ方としては、「おにごっこは誰がやるもの?」「誰と誰でやるの?」があります。「鬼」と「逃げる人」の2者がいるということは教科書を読めばわかるので、中間目的欄に鬼と逃げる人を記入します。
中間目的には本来、勝利条件を構成する「要素」とその「状態」を記述するのですが、ここでは要素でとどめ、状態はあとで考えます。
廟算八要素にはおにごっこに関わる時間や環境に関する情報を記入します。この情報が多いほど、オリジナルおにごっこを考えるときの参考になると思われるので、娘と「おにごっこはどんな場所で行われるのか?」「その場所には何があるのか?」「どんな特徴があるのか?」「おにごっこはいつ行うのか?」「どのくらいの時間があるのか?」ということを対話しながら書き込んでいきます。また、人によって足の速さは異なるよね、ということも対話のなかで出てきたので追記しました。
次に、教科書のなかで紹介されているルールを施策に記入します。そして、「どのルールが鬼と逃げる人をどんな状態にしているか?」ということを考えます。
問いかけ方としては、「このルールがあることで、鬼(または逃げる人)はどうなっている?」や、「どんないいことをしてくれている?」があります。
そして、ルール(施策)と影響を与える要素(中間目的)の間に矢印線をひきます。
ここでおにごっこが楽しく遊べるためには、鬼が逃げる人をつかまえやすくなっていて、逃げる人が簡単に、すぐにつかまっていないという状態のバランスが取れている必要があるということを意識させます。
プ譜の中間目的にはここまで「鬼」と「逃げる人」という要素の「ラベル」しか書いていませんでしたが、ここでそれぞれの「あるべき状態」を記述します。
そして、これらの状態をひとまとめにすると、なんと言えるか?ということを考え、それを勝利条件に記述します。
問いかけ方としては、「鬼(逃げる人)をしていて楽しいのはどんなとき?」「どうなっていると楽しくない?」があります。
娘からはこんな発言がありました。
「ずっと鬼になってるのはイヤだ」
「でもずっと逃げているのもつまらない」
これをひとくくりにして、「鬼になる人がずっと鬼にならず、逃げる人が飽きずに逃げることを楽しめている」(と、鬼ごっこをしている人みんなが楽しく遊べている)と表現しました。
これで、おにごっこを成立させる構成要素とその状態。そして、その状態をつくりだしているルールという構造を可視化することができました。書いていて小難しいなと感じましたが、ざっくり言えば「おにごっこの設計図」ができた、という感じです。
ここまでの体験を通じて、娘にはふだん自分たちが行っているおにごっこが、「こうやってできあがっている」ということをあらためて認識してもらえたんじゃないかと思います。
教科書ではさらに新しいルール「鬼が交代せずに、つかまった人が、みんな鬼になっておいかける」が追加れます。
そこでこのバランスを取り戻すべく、別のルール「鬼になった人は、みんな手をつないでおいかける」を追加します。
ここまでが教科書に書かれていることで、ここからオリジナル―ルを考えていきます。
ルールは思いつきで追加することができます。しかし、肝心なのはそのルールが楽しく遊べる構造になっていることです。このことを意識して考えることで、よりふかく、先を読む頭の使い方ができるのではないかと思います。
まずは、思いついたルールを施策欄に追記します。
そして、思いついたルールと影響を与える要素との間に矢印線をひきます。これによって、ルールを単なる思いつきに終わらせないことを狙います。
娘にはパワポの操作方法を教えて文字の入力と矢印線を引いてもらいました。
その結果、できあがったのが下記のおにごっこです。
「鬼になっている時間をせいげんする」というルールが出てきたとき、それがつながる中間目的がなかったので、「同じ人がずっと鬼になっていない」という中間目的を新しくつくりました。
でも、時間を制限して、制限時間になったらだれか別の人と鬼がかわるの?と問いかけると、「鬼にいちばん近い人が鬼になる」というルールが追加されました。
こうしてできあがった構造は、実際に試してみてルールの良し悪しを評価することになります。ゲームで言えばテストプレイです。学校によっては体育の時間を利用して、オリジナルおにごっこをプレイしたりするでしょうが、娘のクラスでは仲のいい友達と、休み時間におのおのが考えたオリジナルおにごっこを遊んだそうです。
この体験が娘にどのような影響を与えたかわかりませんが、反省点が一つあります。
ルールを考えるのが楽しいのか、PC操作をもっとしたかったのかわからないのですが、寝る時間になってもやめようとしないので、むりやり終わらせて、娘の「もっとしたい」気持ちにブレーキをかけてしまいました。今度このような機会があるときは、時間をたっぷりとってやろうと思います。
ちなみに、大人にとっては、自社で取り組もうとしている制度を成り立たせるためのバランスを考えたり、システムを導入して営業体制を変革するプロジェクトの構造を考えたりといった、ものごと成り立つ理(ことわり)を明らかにする一つの手段として使えるのではないかと思います。