映画ビジネスとテーマとコミュニティとマネタイズと。
2018年4月19日、「映画ビジネスの新しいチャレンジから学ぶ、動画コンテンツの活用、マネタイズ勉強会」を開催しました。
ここ数年、事業会社、メディア企業、広告代理店、編集プロダクションなど、業種業界を問わず、多くの企業がweb動画制作や活用に取り組んでいます。
事業会社では広告や販促分野での活用が進む一方、メディアや広告代理店では、動画を使った新商材・新サービスの開発が進んでいます。
こうした動きの歴史はまだ浅く、その活用ノウハウもマネタイズ方法も、掘り尽くされているとは言えないのに、早くも手詰まり感が出ています。
自社広告であれば、そもそもどんな動画をつくればいいかがわからない。
つくった動画をどのように配信していいかわからない。
動画コンテンツであれば、どうやって課金、回収すべきかわからない。
安易なアウトソーシング、安易な配信ネットワークに頼るばかりで、マネタイズできないと嘆く。
こんなに可能性に溢れている分野で手詰まり感が出るのは、欧米のトレンドや事例を追って、そこからアナロジーを働かせることなく、ただ処方箋を得るようにして昨日はあっちの手法、今日はこっちの手法というふうにしてしまっているからではないか。
であれば、web動画そのものから少し離れて、ちょっと異なる分野のチャレンジからそのヒントを得てみようと考えました。
ゲストは情熱大陸プロデューサーで映画監督の大島新さん。
大島さんは、傍目には堅牢と思われるテレビ番組制作ビジネスから、映画ビジネスに乗り出しました。
勉強会では、日本の二大国民食と言っていいラーメンとカレーを題材にしたタイトルを取り上げ、私がモデレーターとなり、大島さんのマネタイズのチャレンジについて、お話を頂きました。
大島さんのチャレンジについて紹介する前に、なぜ映画ビジネスにチャレンジしたのか、その背景について、要旨をメモで紹介します。
ここ数年、事業会社、メディア企業、広告代理店、編集プロダクションなど、業種業界を問わず、多くの企業がweb動画制作や活用に取り組んでいます。
事業会社では広告や販促分野での活用が進む一方、メディアや広告代理店では、動画を使った新商材・新サービスの開発が進んでいます。
こうした動きの歴史はまだ浅く、その活用ノウハウもマネタイズ方法も、掘り尽くされているとは言えないのに、早くも手詰まり感が出ています。
自社広告であれば、そもそもどんな動画をつくればいいかがわからない。
つくった動画をどのように配信していいかわからない。
動画コンテンツであれば、どうやって課金、回収すべきかわからない。
安易なアウトソーシング、安易な配信ネットワークに頼るばかりで、マネタイズできないと嘆く。
こんなに可能性に溢れている分野で手詰まり感が出るのは、欧米のトレンドや事例を追って、そこからアナロジーを働かせることなく、ただ処方箋を得るようにして昨日はあっちの手法、今日はこっちの手法というふうにしてしまっているからではないか。
であれば、web動画そのものから少し離れて、ちょっと異なる分野のチャレンジからそのヒントを得てみようと考えました。
ゲストは情熱大陸プロデューサーで映画監督の大島新さん。
大島さんは、傍目には堅牢と思われるテレビ番組制作ビジネスから、映画ビジネスに乗り出しました。
勉強会では、日本の二大国民食と言っていいラーメンとカレーを題材にしたタイトルを取り上げ、私がモデレーターとなり、大島さんのマネタイズのチャレンジについて、お話を頂きました。
大島さんのチャレンジについて紹介する前に、なぜ映画ビジネスにチャレンジしたのか、その背景について、要旨をメモで紹介します。
●テレビ業界の縮小とチャレンジできる環境の萌芽
- 大島さんは元々ドキュメンタリー作品が大好き
- フジテレビに入社後、「NONFIX」「ザ・ノンフィクション」などドキュメンタリー番組のディレクターを務める。
- 1999年フジテレビを退社後、『情熱大陸』や『課外授業ようこそ先輩』などの番組を撮る。
- 2005年ごろからテレビ広告費が縮小。それに伴い番組制作費が削減。番組制作が薄利多売なビジネスになっていった。
- テレビ番組ではライツを制作会社が持つことはほとんどなく、テレビ局が持つ。
- 企画を出し、よいものを撮っても、全体の予算からいくら残すか、というビジネスしかできない。
- 近年、ドキュメンタリー映画の制作数が増えた。
- 理由は、カメラや編集ソフトの機材が発達し、かつ低コストになったことにある。
- この状況を見て、映画をローコストでつくって、回収できるのではないか?と考えた。
こうした状況で、大島さんは『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』、『園子温という生きもの』など、人物を被写体にした映画を撮影。
その次に世に出したのが、『ラーメンヘッズ』と、『カレーライスを一から作る』でした。
この日本人の二大国民食のドキュメンタリー映画を撮るに至った背景と、それぞれのマネタイズ戦略について、こちらも要旨をメモでご覧下さい。
●『ラーメンヘッズ』について
この作品から得られる教訓として:
●『カレーライスを一から作る』について
この作品から得られる教訓として
●『ラーメンヘッズ』と『カレーライスを一から作る』から得られる教訓
(以下は前田のメモ)
ここまでご覧頂いた皆様の頭の中には、既に「コミュニティ」、「場所」、「利益率」、「複合的な収入」などのワードがぐるぐるとめぐって、自社の動画ビジネス又はビジネスにおける動画活用についてのアイデアが芽生えているか、或いはザワザワとし始めているのではないかと思います。
個人的には、ドキュメンタリーという手法とweb動画の組み合わせに可能性を感じており、本勉強会ではオピニオンとして、「Thought Leadership 動画コンテンツ」という概念を提示しました。
Thought Leadershipとは、自分の哲学や考え方を表明し、特定の分野やビジネスの世界などでリーダーシップをとっていく人または企業のこと。このコンテンツを「Thought Content」と呼びますが、このコンテンツの動画化がドキュメンタリーと相性がいいと考えています。
ドキュメンタリーというと長尺ものというイメージがありますが、テレビのミニ番組のように短尺のシリーズものの構成が活かせるのではないか。
このような考えを提示しつつ、会場のみなさんからのQ&Aに大島さんに答えて頂き、勉強会は終了しました。
最後に、大島さんのお話は動画ビジネスだけでなく、私の専門であるプロジェクトについても得るものが非常に多くありました。
プロジェクトに携わる方のために、以下にメモを残しておきます。
このメモを見るだけでも、プロジェクトの進め方について感じるものがあるのではないかと思います。こちらについては、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』の刊行記念対談企画として、後日アドタイで大島さんと対談予定ですので、楽しみにお待ち下さい。
●『ラーメンヘッズ』について
- 『二郎は鮨の夢を見る』(原題:Jiro Dreams of Sushi)を見て、悔しかった。日本の食文化を海外に伝える映画を撮りたいと思った。
- 日本人の多くは銀座で寿司を食べない。でもラーメンは食べる。かつ、ラーメンにはファンや通が多い。ラーメンに決めた。
- 日本のドキュメンタリー映画市場には二つの傾向がある。
- 「老夫婦が見たいと思えるもの」と、「原発、差別など社会問題を扱ったもの(社会はドキュメンタリー)」。
- ラーメンヘッズはいずれにも入らない、「腹ペコ男子映画」。
- 日本でのヒット(日本で回収すること)は難しいと考えた。
- そこで、目を向けたのが海外。海外ではラーメンが人気。
- 海外担当の共同プロデューサーを外部から招聘。チームに入ってもらった。
- 海外の映画祭のドキュメンタリー部門にどんどんエントリーしにいった。
- スペインのサンセバスチャン国際映画祭では、食とガストロノミーをテーマにした「キュリナリー・シネマ部門」を受賞。
- 映画祭は、マーケットの取引を行う場でもあり、こうした受賞成果が、その後の海外展開に影響を与えた。
この作品から得られる教訓として:
- 売れなそうな場所(日本)だけで勝負しない。
- 評価してもらえる場(海外の映画祭にどんどん持ち込む。
※特に「食」をテーマにしたキュリナリー部門のある映画祭)に、作品を持っていった。 - そのための人材を外部からチームに加えた。
●『カレーライスを一から作る』について
- ドキュメンタリー映画には、通常の映画館での上映以外に、もう1つ「非劇場上映」というものがある。
- つまり、上映会。
- 上映会がきっかけでヒットすることが、たまにある。カレーライスを一から作るはこれを狙った。
- なぜなら、カレーが取材対象ではなく、カレーライスを一から作るというプロセスが取材対象で、そこで撮れたものが、見た後に議論したくなるような内容に仕上がったから。
- ちなみに、1回の映画チケット費を1,300円として(子ども、シニア料金、一般料金の平均値)、地方のミニシアターで、レイトショーを14回流すとする。地方でレイトショーだと、1回の上映で平均4人しか見にこないということがある。
- ざっくり計算すると、1,300円×4人×14回=72,800円。映画館が50%もっていくので、制作配給会社の売上は36,400円となる。
- 一方の上映会、値段は作品によってばらばらだが、1上映会につき約30,000円。こうすると、映画館でやるのと変わらない。(上映の場所代を取られることはない)
- 上映会のイベント性について。
- エンタメ産業としてのテレビがネットに取って代わられようとしている中、ライブイベントが伸びてきている。
- 人々もライブイベント、リアルな体験を求めている。
- 上映会はイベント的な要素が強い。
- 映画館であれば、回転率を上げるため、ひたすら作品を回し続ける。
- 上映会はドリンクやフードがついたり、合間におしゃべるがあったり、上映後の感想や議論の共有の場、交流の機会がある。
- 特に、カレーライスを一から作るは、ただ見て終わりではなく、見た後に感想を共有したくなるような作品になった。
- こうした上映会はクチコミが起きやすく、口コミで新しい上映会が決まっていく。
- そうこうしているうちに、農水省とのタイアップが決まり、映画の児童書化、絵本化が実現。
この作品から得られる教訓として
- 上映会のイベント性。見終わった後に議論したくなるような内容。非常に相性が良い。
- 安易に動画コンテンツのマネタイズといって、書籍化やイベントなどを提案しているメディアがあるが、イベントなら集まって感想を共有したくなるようなクオリティ、テーマを有していないといけない。
●『ラーメンヘッズ』と『カレーライスを一から作る』から得られる教訓
(以下は前田のメモ)
- 映画ビジネスには、国内で映画館に流して興行収入。その後はDVD化して、テレビでも流れて・・・と、完ぺきに仕上がった仕組みがある。そこに安易に乗らず、一方は最初から海外展開。一方は上映会という、通常とは異なる映画の届け方を試みている。
- ここから得られるのは、常識的な、堅牢に仕立て上げられた仕組にのっているだけでは、インディペンデントな作品(一般的なビジネスでいえば、ベンチャーや新規事業など)成果は得られないということ。
- 逆にいうと、仕上がった仕組みで成果を得ようとするには、それなりの規模、最大公約数的な人びとの「好み」がなければならない。
- 上映会のイベント性という話と、そこからのクチコミ派生という話は、映画作品のテーマや内容と、上映会を企画開催する人々のコミュニティということを考えさせられる。
- ラーメンヘッズでいえば、狂信的なファンがいた。
- 映画館はマス向け。そこのコミュニティ性は薄い。上映会はコミュニティ性が高い。
ここまでご覧頂いた皆様の頭の中には、既に「コミュニティ」、「場所」、「利益率」、「複合的な収入」などのワードがぐるぐるとめぐって、自社の動画ビジネス又はビジネスにおける動画活用についてのアイデアが芽生えているか、或いはザワザワとし始めているのではないかと思います。
個人的には、ドキュメンタリーという手法とweb動画の組み合わせに可能性を感じており、本勉強会ではオピニオンとして、「Thought Leadership 動画コンテンツ」という概念を提示しました。
Thought Leadershipとは、自分の哲学や考え方を表明し、特定の分野やビジネスの世界などでリーダーシップをとっていく人または企業のこと。このコンテンツを「Thought Content」と呼びますが、このコンテンツの動画化がドキュメンタリーと相性がいいと考えています。
ドキュメンタリーというと長尺ものというイメージがありますが、テレビのミニ番組のように短尺のシリーズものの構成が活かせるのではないか。
このような考えを提示しつつ、会場のみなさんからのQ&Aに大島さんに答えて頂き、勉強会は終了しました。
最後に、大島さんのお話は動画ビジネスだけでなく、私の専門であるプロジェクトについても得るものが非常に多くありました。
プロジェクトに携わる方のために、以下にメモを残しておきます。
- ドキュメンタリーは何が撮れるかわからない。フィクションとちがってシナリオがない。
- 撮影対象やテーマについて、情報を調べるなど前準備をする。大まかな構成はつくる。しかし、撮り始めてみたら予定外のものが撮れることがある。逆にいえば、予定していたものが撮れないこともある。
- そうして撮れたものを、再解釈、再構成していく。その作業のくり返し。
- ただ、最初に描いた通りのプランで映像ができあがっても、面白くない
このメモを見るだけでも、プロジェクトの進め方について感じるものがあるのではないかと思います。こちらについては、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』の刊行記念対談企画として、後日アドタイで大島さんと対談予定ですので、楽しみにお待ち下さい。