働き方改革、生産性向上とCSの相関性を考える~第43回CSカレッジに行ってきました。

2018年10月10日に、髙野一朗さんにお誘い頂き、リクルートライフスタイルのCSカレッジに参加させて頂きました。この日のテーマは、「働き方改革、生産性向上とCSの相関性を考える」。
CSというと、パッと思いつくのは「カスタマーサポート」。最近のトレンドなら「カスタマーサクセス」ですが、CSカレッジのCSは「カスタマーサティスファクション(顧客満足)」です。

個人的にカスタマーサポートやカスタマーエクスペリエンスには思い入れのあるエピソードがあり、カスタマーサクセスについてはSaas型サービスを提供する身として、まさに勉強して実践中ですが、恥ずかしながらカスタマーサティスファクションについては、ほとんど考えたことがありませんでした。

参考 


CSカレッジでは2013年7月からCS(顧客満足)とES(従業員満足)に関する最新の事例や理論を、ゲストを招いて講演・イベントを行っておられます。過去の開催実績についてはCSカレッジのページをご覧下さい。
ちなみに、今回のテーマの一つである「働き方改革」については、今年3月にドコモ・イノベーションビレッジで下記のような勉強会を開催していたので、今回の勉強会はとても関心の高いものでありました。



この日のゲストは、(株)クレディセゾン 戦略人事部長 松本 憲太郎さん、(株)ヘッズ 代表取締役社長 暮松 邦一さん、(株) 働きかた研究所 代表取締役 平田 未緒さん。みなさんのお話はどれもたいへん素晴らしいものでしたが、このブログではクレディセゾンさんの「会社が存続していくための組織・人材改革を人事部門から支援する」プロジェクトが最も私の友人知人の関心度が高そうなものだったので、このプロジェクトをプ譜に書き起こしてみました。

「プ譜」とは、プロジェクトのプロセスを記述するためのフレームワークです。


「プ譜」についての詳しい解説は、宣伝会議アドタイの記事をご覧頂くか、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』の解説をご覧頂ければ幸いです。

このプ譜にクレディセゾンさんの人事改革プロジェクトのプロセスをプロットしたのが下図になります。

※拡大してご覧下さい

このプロジェクトの大事なポイントは、お上に与えれた働き方改革というものを実践しようとしたのではなく、会社の存続のために断行した人事改革が結果的に働き方改革になっていたというところにあります。

この勉強会の前日、LINEペイが対話アプリ上でスマホ決済できるようになったというニュースが出ていましたが、クレジットカード事業には既存の競合だけでなく、技術革新によるまったく新しい競合が登場してきています。また、法による利益制限や多様化するサービス内容に対応するための多額のシステム投資などにより、相対的な価値や利益率の低下といった課題が出てきていました。そんな環境にあって、クレディセゾンでは既存商品に依存しないソリューション型事業への転換、自社と外部リソースを組み合わせた価値提供への挑戦を行おうとします。

このような背景のもと、「社員の可能性を最大限に引き出す環境づくり」、「新たな役割への挑戦を後押しする仕掛け」を目指し、クレディセゾンは大きな人事改革を断行しました。行ったのは大きく3つで、「雇用形態の統一」、「役割等級制度の導入」、「行動評価の導入」です。

上図のプ譜は、「会社が存続していくための組織・人材改革を、人事から支援する(これまでの「人材管理」から社員のポテンシャルを最大限に引き出す「組織開発」に転換する)」という目標を達成するためのプロジェクトを構造化して可視化したものです。これは講演内容を元に私が作成したもののため、あくまでプロジェクトのツジツマを知るものとしてお役立て頂ければ幸いです。

松本さんのお話を聞いてあらためて深く感じたのは、人も組織も与えれた目標よりも、必要に迫られて自ら考えた目標の方が、はるかに難易度が高く、その分価値も高いというものです。私たちはそうした価値ある事例を金科玉条のように崇め奉りますが、その再現性というのはとても低いです。
プ譜の左端にある「廟算八要素」(赤太線)とは所与のリソースや自分たちを取り巻く環境のことを指しますが、私たちは目に見える施策のレーン(赤点線)ばかりを見てしまいます。


目に見える分わかりやすく上司にも説明しやすいためそれを真似ようとしますが、それではうまくいきません。自ら目標を立てた者は、自分を取り巻く環境や自社の人材、保有する技術や知識、蓄積された経験や文化などに基づいて施策を考案したり、既存のツールを導入しながら、それを自身の目標達成に適うようアレンジしています。それが故に施策だけを真似ても再現性はおそろしく低くなります。
目標は自ら立てることよりも、与えられることの方が多いものですが、そこで成果を出せる人・組織というのは、与えられた目標を制約の範囲内で自身に有利なように制約の性質や形を変形させることができます。

プ譜に書き起こすことでプロジェクトの構造を可視化し、それを客観視しながら、自社ならどのようにそのプロジェクトを進めることができるかということを考えやすくなります。少しでも面白そうと感じて頂ければ、ぜひ紙とペンをとってみなさんのプ譜を書いてみて下さい。


ところで、クレディセゾンといえば、同社および関連会社社員からなるアイドルグループ、東池袋52の『雪セゾン』はいいぞ。

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