カスタマーサポートは創造的な行為である ~CSプロジェクトの進め方勉強会

2018年5月15日、ドコモ・イノベーションビレッジで、『「カスタマーサポート」をテーマにした、プロジェクトの進め方勉強会』を開催しました。

今回の勉強会を企画したのには、私の個人的な理由が2つあります。
一つは、私が今『1Roll』という月額定額制の動画制作・運用ソリューションのプロマネであり、カスタマーサポート・カスタマーサクセスの担当者でもあるということです。
サブスクリプションサービスがwebに限らず、車、ファッション、DIY用品などリアルなものにまで広がっている中、サービスを利用し続けてもらい、費用を回収し、売上を最大化していくために、カスタマーサポートの重要度が高まっています。

「いかにお客様からの信頼を得て、サービスを使い続けてもらうCSを提供できるか。」

私個人の業務からいって、これはとても重要な課題でした。
(※この記事では、カスタマーサポートともカスタマーサクセスとも取れる内容については、CSで統一します)

もう一つは、自分自身がカスタマーサポートを通じて、ある商品の(自称)ロイヤルカスタマーになり、積極的にそのカスタマーサポートの内容を口コミをする経験をしていることです。
書くと長いので、詳しくは下記のエピソードをご覧下さい。

4歳娘の「なんで?」に対する、最高のカスタマーエクスペリエンス



エピソードは先でも後でもご覧頂くとして、このエピソードの肝は、「お客様相談室」という従来はコストセンターととらえられていた部署の方のメール対応一つで、ロイヤルカスタマーを獲得したという事実です。

私は、この対応に感動すると同時に、カスタマーサポートという仕事は、デジタル化がますます進む時代に、貴重なお客様と接する部署として、会社やサービスのブランディングの起点となったり、顧客獲得やLTV向上を果たすといった、重要な役割を担うのだと実感しました。
そして、そうした役割を担うべく、会社組織において、カスタマーサポートの重要性を高めたり、カスタマーサクセス部署・担当者を新たに設けたりといった、「プロジェクト」が増えてくると考えました。

そこで、そうしたプロジェクトを興し、進めたい方とともに、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』で提唱している『プ譜』を使用して、様々なCSプロジェクトの進め方を共有し、CSプロジェクトの成功率を高める勉強会を企画したのです。

この企画を持ち込んだ先は、日本一CSに狂っている男こと、CSエバンジェリストの藤本大輔さん。藤本さんは、CShackというコミュニティを運営されており、月に数本もCS関連のイベントを切り盛りしている方です。この勉強会は藤本さんの賛同とご協力を得て開催されました。(藤本さん、あらためましてありがとうございます!)


前置きが長くなりましたが、本勉強会には、webサービスでは保育園、グルメ、人材系、メディア。アプリでは、ゲーム、マッチング。その他、教育機関、セキュリティ、ロボット、チャットボットサービスなど、様々なサービスのCS担当者の方々がいらっしゃいました。

今回の勉強会は、CSの成功事例やツールはたくさん出てきているので、情報収集の手を止めて、実際にCSプロジェクトを進めるためのイメージ・プランを、プロジェクトプ譜で表現し、そのプランを参加者で共有することが目的です。
そのサンプルとして、私からは上述したエピソードのプ譜を書きました。

※大きくしてご覧下さい※


プ譜の概要、用語については、拙著のp98~99、p121~123を。webではこちらの記事をご覧ください。
このプロジェクトの獲得目標(最終ゴール)は、

「お客様からの問い合わせを真っ先に受ける場所として、問い合わせ対応を通じて、自社のブランディングに貢献する。」

としました。そして、その勝利条件(獲得目標が成功したかを判断する基準)を、

「対応したお客様が、SNSやブログを通じて、対応内容を紹介してくれる」

としました。この勝利条件を果たすため、中間目的、施策をそれぞれ出していきます。

本来のプ譜の意義は、最初に書いたプ譜を進めた結果、遭遇するであろう事象(ユーザーの声、お客様の反応、プロジェクトメンバーの離反、競合サービスの出現など)をプ譜に書き込み、その対応内容を新しくプ譜にすることで、プロジェクトの進行・変化の状況を局面局面ごとに記録していくところにあります。
勉強会ではそこまで体験頂く時間がなかったため、二人一組となり、互いのCSプロジェクトのプ譜について、自分の考えていることや課題に感じていることなどについて、「感想戦」を行って頂きました。

この日は50名近い方々が参加

作成したプ譜で感想戦を行う

参加者の皆さんの業務都合上、制作したプ譜をここで見せることはできませんが、特にCSプロジェクトを進めるにあたって、参加者の皆さんのプ譜にあまり書かれておらず、しかしそれが重要なポイントでなるであろうことについて述べたいと思います。


●勝利条件と評価指標を、プロジェクトメンバーや上長などと共有しておくこと

これは一つの例としてお読みください。
もし、従来型の問合せ対応をいかに早く、お客様を待たせずにさばいていくかということを会社から課せられていたカスタマーサポート担当部署があるとします。この時の評価指標は、「さばいた問合せ対応件数」や、「問合せに要した時間」などかも知れません。これを勝利条件として言い換えると、「お客様を待たせない」や「お客様の質問には2営業日以内に回答する」といったものになると思います。
そうした評価指標が設定されていた部署が、サンプルで挙げたCSプロジェクトのように、顧客獲得やLTVの向上、ブランディングなどを担えるようにしていこうとした時、当然ながらその勝利条件と評価指標は変わってきます。

プロジェクトとは多分に未知の要素を含み、成功確率の低いものでありますが、会社組織で行う以上、何かしらの評価を行う必要があります。
会社にとってこれまで取り組んだことのない、まったく未知のプロジェクトを進める場合、評価基準は新しく設定されます。しかし、「カスタマーサポートをカスタマーサクセスへ」といった文脈で、既存部署をベースに新しいプロジェクトに取り組もうとする際、評価者は往々にしてそのプロジェクトの現場への理解が浅く、ともすれば新しい評価基準を持たないまま、そのプロジェクトを評価してしまう恐れがあります。

これは、プロジェクトメンバーであっても同様です。従来の仕事の仕方では成し得ないプロジェクトを進めようとする場合、メンバーの意識変革ぬきにしてプロジェクトの成功は望めません。
そんな評価基準、意識などの齟齬をなくすためにプ譜が存在します。

今回の勉強会が参加者の皆さんのCSプロジェクトの成功に役立つことをお祈りしつつ、もうちょっと詳しくプ譜について知りたいぞという方は、ぜひ拙著をご覧頂ければ幸いです。

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