勉強会レポート「働き方改革を”業務の効率化””生産性の向上”の視点で考え、実践する」

2018年3月27日に、ドコモ・イノベーションビレッジにて、『働き方改革を”業務の効率化””生産性の向上”の視点で考え、実践する』と題した勉強会を開催しました。


この勉強会は、2月1日に開催した、『働き方改革のルル三条 ~ツール編 課題別のツール紹介、導入・運用方法のナレッジを、西海岸の風にのせて』という、かぜ薬のCMのような、フレンチレストランのタイトルのような勉強会の後編という位置づけで実施しています。

既存のソリューションが、猫も杓子も「働き方改革ソリューション」な様相を呈する昨今。
ある日突然、「働き方改革を推進したまえ」というミッションが下りてきた方にとっては、いったい何から手を付ければいいかわかりません。
そこで、働き方改革を推進する軸を、ルール(制度)、ロール(役割)、ツール(道具)の三つに整理し、制度や役割よりも動かしやすいツールに、どのようなものがあるかという情報交換や導入時のポイント及び運用の工夫についてディスカッションを行いました。

話を今回の勉強会に戻します。
第一部は、ゲスト講師に「0秒リーダーシップ」「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか」などの著作で知られる、ピョートル・フェリークス・グジバチ氏をお招きし、「Google流 疲れない働き方 やる気が発動し続ける「休息」の取り方」にちなみ、「疲れる組織、疲れない組織。働き方改革を組織論から語る」というタイトルで講演頂きました。

第二部は、ドコモ・イノベーションビレッジでこれまで5回開催してきた「プロジェクト工学勉強会」より、プ譜(プロジェクト譜)を用いた、働き方改革の仮想演習ワークショップを行いました。
ピョートルさんの講演を”聞いて終わり”ではなく、具体的なイメージ・プランを描くことで、参加された方々がご自身の組織で実践に移す一助にして頂くことを企図しました。

このブログでは、ピョートルさんの講演内容を図でまとめ、なぜ働き方改革を行わなければならないのかという社会的背景。これからの「VUCAの時代」に求められる力と、変化するマネージャーに望まれる役割、スキルを概観します。

そして、私見となりますが、プロジェクトを興し、進めていく力が、VUCAの時代に対応する力や、
変化するマネージャーに望まれる役割、スキルに通じる点があると仮定し、その内容について論じます。

まず、下図をご覧下さい。


ピョートルさんの体験(ポーランドの行き過ぎた社会主義から、行き過ぎた資本主義への変化によって受けた影響)や、19世紀の人びとが描いた2000年の暮らしを描いた絵ハガキを見て、歴史的に社会は好循環と悪循環を繰り返しており、今の社会も変わっていくと考え、それに備えることが必要だということ。「未来を想像するのは難しいけれど、創造することはできる」というメッセージが冒頭にありました。

では、そうした未来を想像する力をどう養うか。
もう訪れてきているVUCAの時代(Volatility変動性、Uncertainty不確実性、Complexity複雑性、Ambiguity曖昧性)に対応し、価値を生むことのできる人材をいかに育成するのかということについて、Googleでの取り組みなどを例にお話頂きました。

働き方改革に取り組むこと自体が目的になってしまっているようですが、個々人が「どんな人生を生きたいか。世界に何をもたらしたいかを考える」ことなしに、どのような働き方改革を行うべきかという要件定義はできません。

組織はそうした個々人の考えを実行するための機関であり、働き方改革とは、そのための手段・方便にすぎないと感じました。

働き方改革のステップ及び内容には、大きく二つあります。
「-(マイナス)を0に」するものと、「0を+(プラス)に」するものがあります。
前者は、無駄な仕事を減らし、創造的な仕事に時間を使えるようにすること。
後者は、そうしてできた時間を使い、価値を生む人材を育成すること。

この取り組みのステップを間違えると、創造的な仕事に時間を使えないのに、創造的な人材になってもらうための研修を受けさせ、研修がまったく活きない、というようなことが起こります。

こうした人材育成プログラムは、◯◯◯シンキングや◯◯◯シップの名の付くものが多様にありますが、今回のピョートルさんのお話の中で、個人的に最も考えさせられたのが、マネージャーに望まれる役割やスキルの変化が、ビジネスの世界でも起きる・起きているということです。

私は個人のプロマネ経験と親バカが高じて、プロジェクトを興し、進めていく力が、未知な社会を生きる上で重要になってくるという想いから、PBL(Project Based Learning)に関する情報を見聞きしています。


このPBLを学校で行うにあたり、教師の役割はこれまでのものと大きく変わります。
従来の教師が、「生徒が何を学ぶかを管理」していたのに対し、PBLでは教師は、「生徒の学びを仲介・支援」することに変化しています。
そこで求められるのは、適切なガイド(誘導)、ファシリテーション(円滑な促進)、生徒へのフィードバックなどで、生徒の積極的で自立的な思考と学びを支援しようとします。

これはピョートルさんの講演にあった、マネージャーの役割が「鵜飼型から羊飼型に変わる」こと。
マイクロマネジメントをしないこと。良いコーチになるということ等と同様です。

ここで問題になることが一つあります。
PBLはまだ主流の学びのスタイルではないものの、これから少しずつ、子どもたちはPBLの授業を受けていくことでしょう。
そして、PBLを行うめの教育を、教師を志す大学生は受けることができるでしょう。
翻って、現在のミドルマネジメント層はどうか?
PBLでいうところの新しい教師の役割を、どのように身につけることができるでしょうか。

ピョートルさんのコンサルティングに期待するのは一つの方法です。
ですが、ここでは、働き方改革をプロジェクト化し、それを推進していくプロセスで、新しいマネージャーの役割、スキルを養っていくことを提唱します。

その前に、プロジェクトというものを定義しておきましょう。
拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』では、ルーティンワークでない仕事はすべてプロジェクトであると捉えています。


社会的に未知であることはもちろん、会社にとって、個人にとって未知な要素があれば、それはプロジェクトであると言えます。
プロジェクトとは即ち、未知を切り拓いていく行為・活動です。

プロジェクトを興し、進めていくためには、推論、問題解決、レジリエンス、情報編集といった方法や能力。
情報の伝達や文脈の共有といった、他者とのコミュニケーション、態度が求められます。

しかし、プロジェクトは以下の理由からそもそもうまくいかないようにできています。

  • その仕事をやったことがない。
  • 予め情報を完ぺきに収集できない。
  • 考慮すべき要素、変数が多すぎる。
  • 彼我の状況、環境は静的ではなく変化し続ける。

この問題に対し、私は姿かたちのないプロジェクトを記述し、可視化する「プ譜(プロジェクト譜)」を開発しました。プ譜を使ってプロジェクトを進めていくことは、直接・間接的に上述のプロジェクトに求められる力を養います。
※プ譜については、こちらの記事を参照下さい。


本勉強会の第二部では、ピョートルさんの講演内容を参考にして、働き方改革を自社でプロジェクト化し、進めていくための第一局面を書いて頂きました。

プ譜では、働き方改革を成功させるといった最終的な目標のことを「獲得目標」と呼び、その成功判断の基準を、「勝利条件」と呼んでいます。
ワークショップでは、様々な働き方改革の勝利条件が出ました。

  • 「残業を平均2時間減らし、勉強会などに参加できるようにする」
  • 「ルーティン業務を減らし、組織目標に直結する業務に携われるようにする」
  • 「いつでも休める体制をつくる」
  • 「パートナー(夫・妻)と有意義な時間を過ごして、豊かなライフスタイルを築く」

こうした勝利条件を果たすために、どのようなプ譜が描かれたのか。
サンプルとして下図のようなプ譜を書きましたが、こちらに関しては、後日アドタイで紹介致しますので、ご興味を持って頂けるようでしたら、ぜひご覧下さい。


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