参加3名からスタートした講座が、宣伝会議の講座になるまで心がけた2つのコト

去年の3月から動画制作ワークショップを始めて、仕事で人にモノを教える経験などがゼロだった私が、今年の3月から宣伝会議で「web動画クリエイター養成講座」で25コマ中、動画の企画、制作など4コマを受け持つようになりました。

この講座は宣伝会議の他にも、専門学校、業界団体、自治体、メディアに声をかけて頂いて行うようになり、一般企業に対しては動画制作研修という形でも提供するようになりました。

また、最近は動画テーマ以外に、展示会、子どもと新規事業、企業の学習コンテンツの作り方など、様々な内容で提供しています。

ビジネスの世界での講座やセミナーには色々な形式があります。
有名な経営者を招いて経営哲学を聞くものや、企業が自社製品についてピーアールするためのもの。
参加者が手を動かして課題に取り組むワークショップ形式のものなど、扱うテーマ、参加者に体験してほしいこと、開催の目的によって形式と内容は全然異なります。
私の場合、それを講座と呼んでもセミナーと呼んでも、変わらず大事にしていることが二つあります。
今日はその二つのコトについてまとめてみました。

1.「概念」と「具体」、それをつなぐモノをセットにすること
2.「吟味」を参加者全員でおこなうこと


■「概念」と「具体」、それをつなぐモノをセットにすること

最も大事にしているのは、「こういう事例があります」という具体例(事例+具体)を見せることと、
「それらの事例はこういう考え方で作られている」という概念を必ずセットにすることです。

事例だけ伝えても、参加者は「それはその会社だからできるのであって、わが社では・・・」と思ったり、「事例はわかったけど、じゃあそれはどうやるの?」という感想を持ったりしてしまいます。
そこで必要になるのが概念で、

「いろいろな事例があって、条件や環境は異なっていても、共通するこのような考え方、つくり方、進め方をすれば、できる」

というものです。
事例から共通項を抜き出して純度の高い公理や方程式のようなモノにすれば、自分の会社のケースに当てはめて考えられるようになります。
(これは概念だけ伝えて、具体を伝えないことでも同じです)

この概念と具体は常に行ったり来たりさせて、参加者の理解を深めていかねばなりませんが、
そのためには具体と概念をつなぐ大事なモノが必要になってきます。
動画制作ワークショップの場合は、動画を実際に作るためのアプリ(※ここに1Rollというサービスを使用します)や、絵コンテやカット毎の秒数が書き込まれたワークシートがそれにあたります。

この概念と具体の間をつなぐモノは、具体から抽象・捨象して、概念化したものを、今度はどんなケースにも当てはまるようにしてワークシートだったりドリルのようなものの形にするわけですが、作ったら終わりではなくて、ワークショップを重ねながら常にアップデートしていくイメージです。

こうした間をつなぐモノがないと、概念と具体を行ったり来たりしづらいと思います。
考え方はわかった。でもどうやるの?
やり方はわかった。でもうちの場合は?
から、なかなか出ることができない。

これはドリルのようなものだと思いますが、「答えを出すためのドリル」として作用するのはマストで、「ドリルを作るためのドリル」としても作用するものが、最も参加者の理解を深めるものだと考えています。

ややこしくなってきたので、ドリルの話はいったんここで止めて、こうした考えでワークショップを行おうとしますと、だいたい2時間半から3時間は欲しいのですが、この時間を確保してくれることがあまりありません。
自社開催を行っていないため、招いてくれる法人の講座枠で行おうとすると、短くて60分。よくあるのは90分から120分になります。内容をうすめ、はしょって時間内に収めようとすると、参加者から「事例はわかったけど・・・」、「考え方はわかったけど…」となってしまう恐れがあるので、ここは譲れぬ部分であります。

本当は3時間で行うワークショップも、その後数回にわたって宿題を出すなどして、講座で得た概念が実践できているかを確認できると、
「この人はここがわかっていない、できていない」ということがわかるのでサポートのしようがあります。ただ、数回に渡る講座となると費用面でもスケジュール面でも実施及び参加が難しくなってくるので、これもまた悩ましいことであります。

ちょっと寄り道をしますと、「格言」というのは最もコンパクトな概念で、耳にすれば「あぁ、そうだなぁ」、「全くその通りだ、フムフム」と思わせる力があります。
そしてこの格言はたいていその言葉を口にした人の実績・経験から出ている訳ですから、ウソではなくて現実に起こった・できたことです。ただその実績が凄すぎて、凡人にはなかなかできない―というより、その方法がわからない。
だから、その間をわかりやすくしたり、ショートカットできるような、つなぐモノ、手順があると良いのだと思います。


■「吟味」を参加者全員でおこなうこと


二つ目の大事にしていることは、参加者全員で「吟味」すること、です。
これは短い時間で参加者一人一人の学びを深めるために取り入れている方法で、グループによるワークショップの演習と発表終了後、他グループの発表内容に対し、最も質問をしたいものや、「こうすればもっと良くなるのでは?」といった提言したいものを自分の属するグループ内で話し合ってもらいます。そこで選ばれた質問と提言を各グループに対して行い、受けたグループ(又は個人)が回答することで、ナレッジの交換や自分だけでは得られない気づきを得るためののものです。

この方法のポイントとメリットを動画制作講座を例にとってご紹介します。
一度、とある予約サイトの利用促進を目的に、東京を対象とした動画制作を行うというお題を出しました。3~4人のグループに分けて課外ワークを行い、撮影した動画を発表・鑑賞した後に、「吟味」の時間を取りました。

この講座では動画を制作できる人、全くできない人、レベルはまちまち、職業も様々な人が随時約40名参加しています。
こうした状況での質問したい内容は様々で、その質問が「私も聞きたかった」というものだったり、「それは質問しなくても知っているよ」というものだったりします。

特に後者の場合、自分は知りたいのに
「もし、他の人にそんな質問をしないでよ、と思われたら…」
と臆してしまって質問できないことがあります。

そうしたことを避けるために、まずグループ内で必ず一人一人が質問と提言したい内容について発言することがポイントです。

そこで同じグループのメンバーが答えられる内容であれば、その質問はそこで解決をし、グループで発表する質問は、グループ内メンバーでは解決しなかった質問になります。

こうして質問が磨かれていく、という効果を期待して行っていますが、質問には、質問される方も意識していなかったような視点や気づきを与えてくれる力があるので、なるだけ多くの良い質問が出るよう、短い講座時間でも、許されるかぎり吟味の時間は取るようにしています。
(※ちなみに提言も同じプロセスを辿り、同じような効果が得られます。)

これは、ワークショップやセミナー終了後に、「なにか質問があったら手を挙げて下さい」と言って、誰も手を挙げない問題の解決手段の一つになるのではないでしょうか。

そうして、最終的に出た質問をまとめて講座資料と共にQ&A集もつくることができるとベストなのですが、残念ながら、まだそこまでいけない講座の方が多いです。
また、上に挙げた2つのことが、常にできるという訳ではないので、ここは条件に合わせて細かくチューニングしています。

※ちなみに、ワークショップでの質問についてのブログはこちらもご覧下さい。
MVPのすすめ ~参加者満足度を上げる質問タイムの新システム


さてさて、こうしたことを考えるに至ったのは、私自身が色んなワークショップやセミナーに参加した経験もさることながら、特に質問の力や意義に気づかされ、この時間をしっかり確保しようと考えるに至ったのは、4歳になる娘の「なんで?」に答え、つまづき、調べるという一連の問答からです。

「問い」は「行動」を起こすためのエンジン

答えではなく考えを示して、「問いを立てる力」をはぐくむ

幼児の「問い」は親との問答の中で立つ


こう考えますと、

・・・いやぁ、

子育てっとほんっと、素晴らしいもんですね~。

このブログの人気の投稿

オラリティとリテラシー。~子どもが世界を知る二つの経路

著者が解説『プ譜』とは何か?概要とテンプレートを紹介します(動画あり)

高崎線の四人ボックス席で帰るプロジェクト 後編