明日、ワークショップを企画できますか? ~ワークショップデザイン入門講座レポート

先月、東京藝術学舎の『企業や地域を揺さぶり、場作りの技法を学ぶ ワークショップデザイン入門講座』に参加してきたので、その感想や学びをまとめます。
「ワークショップって何するの?」とか「ワークショップってどう企画するの?」という疑問をお持ちの方のご参考になれば幸いです。


この講座に参加した目的は、ワークショップではありませんが、新しいトークイベントを計画(※参考『アラサ―子育て夫婦が欲しい情報とは? ~市井の知恵を掘り起こす仕組について』)している事と、この一年色々なワークショップに参加する中、イケてるワークショップとイケてないワークショップの差を感じていたので、その違いを知るためです。

講師は東京大学大学院 情報学環 特任助教でワークショップデザイン研究が専門の安斎勇樹先生。和泉裕之さんらがTAを務められました。


■講座全体の流れ

二日間にわたって行われた講座内容をできるだけ簡潔にお伝えし、自分自身の学びや考えをまとめるため、実験的に以下のように講座の内容をまとめてみました。
(画像を拡大表示して頂くか、リンク先のPDFをご覧ください)

1日目
・ワークショップとは?
・参加者自己紹介
・ワークショップを体験する
・ワークショップデザイン論
・ワークショップを企画する

1日目は安齋先生のワークショップに関する定義やワークショップ企画のための手法を聴講し、実際に受講者がミニワークショップを体験しました。
(下図参照。又は右記リンクをご覧ください:http://www.slideshare.net/TakahoMaeda/ws-day1




2日目
・ワークショップを企画する
・グループ毎に企画案の発表
・リフレクション&ディスカッション

2日目は前日の受講内容を元に、

『参加者の「日常の見え方」が揺さぶられるような、ワークショップのコンセプトを企画する』

という課題を与えられ、グループでワークショップ企画を考案しました。
(下図参照。又は右記リンクをご覧ください:http://www.slideshare.net/TakahoMaeda/ws-day2




■明日、ワークショップを企画できるか?

本講座に参加してみて、企画の基本部分は理解することができました。
多分、以下のポイントを押さえておけばある程度企画する事ができると思います。

  1. 企画の切口は「見立て」「連想」「真似(mimic)」「矛盾(対抗)」「置き換え」等の“型”が存在する。
  2. “型”のヒントは世の中にあふれている。漫画、テレビ番組、お菓子、ゲーム等色々。
  3. その“型”と学習目標標を行ったり来たりしながら考えると作りやすい。
  4. 企画には制約、ルールを設けておく。
この他、ワークショップの記録や評価など、ワークショップの実施について考えるべき事は他にもたくさんあるのですが、あくまで「企画」することが目標なので、これでは全然わからないという場合は、安齋先生が共同執筆された『ワークショップデザイン論』を読むべし!読むべし!



この他、本当に多くの雑感があるので、以下にまとめますよ。


■日本人はまだまだワークショップリテラシーが低い

今回の講座で大きく戸惑い、面喰ったことが3点あります。

・ワークショップリテラシーについて
・ワークショップの目的について
・企画脳とワークショップ脳の違いについて

以下、順を追ってご説明します。


・ワークショップリテラシーについて
ワークショップリテラシーという言葉はグループワーク、共同と言い換えて良いと思いますが、
最後のリフレクションの場で多くの人から聞いた感想が、
「こうした場で自分の意見をどこまで言って(主張して)いいかわからなかった」
という類のもの。
これは初めてワークショップ(他者とコラボレーション、共同で作業するワークショップの事。一人で何かをつくるワークショップ等。)に参加する人のものですが、確かにこれまで参加してきたワークショップでも全然しゃべらない人がいたり、反対に制限時間を無視して話し続ける人がいたりしました。これは複数人で(定められた条件下、)物事を進めていく経験に乏しい人に共通する課題のようです。
せっかく時間やお金を使って参加している以上、相応の成果を得るべしと考えている人にとっては意外な事だと思いますが、日本人の気質というか学校教育、家庭教育の成果というものについて考えざるを得ない気がします。
これからの世の中では、他者との共働によって何を生み出していく力やスキルが求められていくであろう事を思うと、こうした他者とのワークショップ体験は幼い頃から積んでおいた方が良いのではないでしょうか。


・ワークショップの目的について
私が参加した「企業、商品開発グループ」では、自社内でワークショップを企画したり参加したりする方がいらっしゃいましたが、そこでまずクリアしなければいけないハードルが、「いかに自社社員に積極的に参加してもらえるようにするか?」でした。
私はこれまで社内ワークショップと言うものに参加した事がなく、全て外部開催のワークショップに参加してきたたため、参加したくない(参加意欲の低い)ワークショップに参加した事がありません。
(これを「この指とまれ式のワークショップ」と言うのだそうです)
ですが、規模の大きな企業等だとこうしたハードルから乗り越えなければいけないそうなので、なんだか大変だなぁと思いました。


・企画脳とワークショップ脳の違いについて
私はプランナー、プロデューサーとして色々な企画を行っているからか、ワークショップ案を考える際、事あるごとに「こうすればいいじゃないか」という解決案が頭に浮かんでしまいました。
しかし、今回の講座ではワークショップ参加者にこうした企画を考えられるようにする事、普段とは異なる視点から企画してもらえるような考え方を提供する事を目的とせねばならず、使う脳ミソの部分がぜんぜん違うと感じました。
あまりのできの悪さに、グループワーク中何度もメンバーの皆さんに謝ったほどです。



■ワークショップアーカイブ作ろうゼ。

最後に、ワークショップを企画したいと思う全てのみなさんへの御提案があります。
文中にワークショップを企画する時のポイントをまとめましたが、実際に行われたワークショップのアーカイブを作ってみてはいかがでしょうか?

リアルなイベントとして各所各地のワークショップを体験できるNPO法人CANVASの「ワークショップコレクション」がありますが、これに範を取ったアーカイブサービスです。



サービス内容、機能案:
・ワークショップの様子を動画で保存、閲覧
 (YouTubeチャンネルを活用)
・スプレッドシート等でワークショップの進行プログラムの共有
・キーワードや目的別の検索機能

YouTubeのAPIやAppscript等を活用する事で、誰もがアクセスしやすく管理しやすい仕組みを作ることができると思います。



■余談だが。

今回の講座の冒頭で安齋先生のワークショップの定義があった。
普段とは異なるものの見方から発想するコラボレーションによる学びと創造の方法
これを聞いて、ワークショップ企画はこの「異なるもの」に何を持ってくるかがポイントだなと感じたのだけど、すぐに娘の顔が浮かんだ。
子供(特に乳幼児)はまさに我々とは「異なるもの」で、これまでブログでも紹介してきた見立て力やクリエイチビティにはワークショップ企画の切り口が沢山眠っているように思う。
子供と一緒の過ごすということは、言ってみれば一人ワークショップを常に体験できるという贅沢な環境にあるという事だ。←親バカ。

関連記事:
『イノベーティブな子供の見立て力』
『子どもに完成品を与えることの良しあし』
『子供は何歳からダジャレ言えるの?』

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