地方で事業を始めたい人が、活用するといいい地元資産

地元である三重県紀北町の地域活性と離乳食作りの課題を解決するための事業「mogcook」を運営している関係で、いわゆる地域系の情報をキャッチしている中、こんなイベントを見つけました。

「THE FANCLUB:新たな地域活性・まちへのとりくみに出会う」


イベントページに、

「最先端の地域活性・まち系アクションのプレイヤーが渋谷 co-baに集結!!!」

と書いてあり、登壇者が9名もいらっしゃれば、mogcookの活動にもヒントを得られるかもと思い、渋谷のco-ba libraryに行って参りました。

どんな方が、どんなプレゼンをしたかは下記のレポートに詳しいので、本稿では地域をテーマ/フィールドにした事業の始め方、回し方について感じた所を書いておきたいと思います。

地域のプレイヤーたちが集まったプレゼンイベント「THE FANCLUB:新たな地域活性・まちへのとりくみに出会う」レポート



■「飛行場」という地元資産の有効活用

登壇者のみなさん9名のうち、シェアオフィス、シェアアトリエ、コミュニティハウスといった「シェア系の場」を運営中或いは始めようとしている方が4名いらして、co-ba主催という事もありましょうが、コワーキングスペース、流行ってんのかなぁ?という印象。

その中でもお金が回っていて、これから地域系の事業を始めようとしている人が参考にすると良いと思い、且つまたシンパシーを感じたのが「調布アイランド」でした。


調布アイランドは、
大島・利島・新島・式根島・神津島から新鮮な魚介類や島野菜、島焼酎などの加工品を「飛行機」で運び、調布市内の加盟飲食店を中心に流通させて、調布と島々をともに活性化させようというプロジェクトです。
で、注目なのが「飛行機」です。


ん?飛行機?

調布にあんの?

と思ったら、あるんですね。調布飛行場

竣工は1941年。

セスナなんかが飛ぶための滑走路がある程度なのかなぁと思ったら、
どっこい今もしっかり運行していて、大島、新島、神津島にそれぞれ3~4便飛んでいるんだそうだ。
(ちなみに飛行時間は調布から大島まで25分。 新島まで40分。 神津島まで45分)

Wikipediaより転載


調布アイランドではこの土地伝来の資産を活かし、新島の定置網の朝7時前後に収穫した鮮魚を新島発9時35分、調布飛行場着10時15分(通常ダイヤ)で受取り、11時時前後には、市内の加盟飲食店に届けているのだそうです。
(最短で、定置網の引き上げから4時間で新島の鮮魚が届く!)


ここで参考にしたいのが以下の2点です。

  • 地元資産の有効活用(調布飛行場)
  • プレイヤー(漁師、生産者グループ等)が存在していた事

調布アイランド自体が飛行場をつくったわけでも、島で魚をとっているわけでもなく、今ある資産、今ある人々を有効活用し、調布の生活者、飲食店業者といった関わる全ての人が喜ぶという仕組=ビジネスモデルを作り上げている点で、大人な(という言い方は些か変ですが)コミュニティビジネスを展開されているなぁと感じたのです。


■活用できる資産の対象を広げよう。

一方、調布アイランドにシンパシーを感じたのも、この資産の有効活用にあります。

mogcookの事業がスタートしたのが2013年の6月。それも求人から開始したため、実際に離乳食材の調達先を探し始めたのは秋頃でしたが、2014年1月には第1回の食材配送を行う事ができました。

なぜこれだけの短期間で事業を立ち上げられたかと言うと、紀北町(厳密にいうと合併前の紀伊長島町)は元来水産業が盛んな地域で、
水揚げのための漁港があり、揚がった魚をさばいて干物等に加工する「いさば屋」があり、それを都市部に運ぶ運送業者があるという、魚を中心としたエコシステムが古くから確立されており、人口減などで衰退しつつあるとはいえ、今なおその資産が町に残っていたためです。

このため、子供の月齢に合わせて複数種類の、旬の魚を調達し、食べやすい分量に捌き、加圧加工するという、まこと手間のかかる仕事を引き受けてくれる「いさばや」さんのパートナーを、早い段階で得る事ができました。


で、ちょうどこの頃、知人の小倉ヒラクさんのブログで、「その土地に、「産業のDNA」はあるか。」と題し、事業承継がうまくいっている所はその産業の歴史的ルーツがあるという事を述べておられるのを拝見し、
その翌月にユニクロがバングラディシュに出店を決めた理由は、バングラデシュに縫製工場があったから=縫製業が盛んだったことも一因だったというNHKの番組を見たものですから、
事業の立ち上げにおいてこうした歴史的な資産、元からあるエコシステム(はては商習慣のようなものまで含め)が、たいへん重要なのではないかと考えたのです。


よく、地域活性というと「まず地域の資源を見直すこと」から始めている所が多いと思いますが、見直している時に目についているモノは、食べ物や自然、芸能等の目に見えるもの、食べられるものといった自分の身体の及ぶ範囲で実感できるものが中心ではないでしょうか?


ですが、調布アイランドや(僭越ながら)mogcookのように、目に見えているんだけど、特徴と気づきにくいエコシステムや商習慣にも、活用できる資産があるのだと思います。

こうしたルーツのある事による納得感や安心感の他、初期投資を抑えたり立ち上げまでの時間を短くするというメリットがありますし、これから地域で事業を興したいと考えている方には、こうしたものへ目を向けられることをお勧めしたいと思います。

(それが有効であることを示すためにも、mogcookも頑張らねば!)




■余談だが。

冒頭、地域活動、地域で起業する手段としてコワーキングスペースが多いなぁという感想を書きましたが、これはコワーキングスペースを立ち上げるためのナレッジが、フランチャイズでコンビニやラーメン屋を始めるように、ある程度確立されてきたから、という事もありましょう。

ナレッジというかビジネスモデル、仕組があると楽です。導入しやすい。

でも、それがわが地域に適しているかはわかりません。

そのビジネスモデルが、地域性を打ち破るというか覆い尽くすほどの普遍性があるとは限りません。

当然、こうした仕組みを提供している(展開したいと思っている)企業は、当然ながら普遍性を強化するか、ローカライズのナレッジを蓄積し、サポートしようとしてくれるでしょう。
(逆にそれを持っていないビジネスモデル、仕組は導入しない方がいい)

そういう点で、今回のイベントに登壇していた、地元産品が選べるカタログギフトを展開する「地元カンパニー」、地域特化型クラウドファンディングサービスを運営する「FAAVO」はそうした仕組みを持ち、且つ両社とも各地域のパートナーを募集しているという点で、注目に値するプレイヤーではないかと思います。



■もひとつ、余談だが。

「いさばや」って紀伊長島(現紀北町)で暮らしていると普通の単語なんですけど、全国的にはマイノリティ単語のようです。

ググってもあまり出てこなくて、宮城県では「行商の魚屋」の方言として使われているそうですが、紀北町では加工場をもった魚屋さん(生活者への直販はあまり行わない)のことを言います。

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/dialect/248/m0u/



※紀北町の関連記事はこちらもどうぞ。
『三重県紀北町の「たいさば」は元祖トリックオアトリートや!』

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