予定通り進まないコミュニティマーケティングの進め方 vol.2

2018年9月13日に、サブスプ勉強会第3回『コミュニティマーケティングを自社サービスに取り入れる』と題した勉強会を開催しました。


「なんでサブスプ?サブスクじゃないの?」と疑問に思われたみなさまは、大変恐れ入りますが本勉強会の企画背景記事をご覧頂き、どのような趣旨で運営しているかをご理解頂けますと幸いです。

サブスプ勉強会第1回『サブスクリプションビジネスのKPIとその作り方・使い方』




本勉強会の趣旨はご理解頂けたとして、今回のテーマを「コミュニティマーケティング」にした理由についてご説明致します。

この勉強会の一週間前のテーマは、「カスタマーサクセス」でした。私はここ数年で、離乳食と動画という二つのジャンルのサブスクリプションビジネスに関わっており、そんな仕事柄、第1回の勉強会ではゲストの林直幸さんから、サブスクリプションビジネスを行う上での3つの重要指標―「解約率」、「定期利益率」、「成長効率性指標」を解説頂きました。(これも詳しくは第1回勉強会のブログレポートをご覧下さい)

このうち、解約率と成長効率性指標を下げる上で、「カスタマーサクセス」と「コミュニティマーケティング」が大きな力になる、或いはサブスクリプションビジネスを進める上での両輪になるのではないかという考えのもと、二週続けて開催することにしたのです。

「カスタマーサクセス」テーマの勉強会の内容については、下記のブログレポート(サブスプ勉強会第2回『自社の業務に「カスタマーサクセス」を取り入れる』)をご覧頂くとして、第3回は『熱狂顧客戦略』の著者、高橋遼さんをゲストにお招きし、「コミュニティが注目される背景」と「コミュニティのつくり方と活かし方」について講演頂きました。



以下、要旨をメモ書きで恐縮ですがお伝え致します。


●コミュニティが注目される背景

  • 車のAnyca、服のMECHAKARI、家具のCLAS、音楽のSpotify、工業用重機のKOMTRAXなど、今後すべてのモノはサービス化していく
  • サービス化する時代において、モノ中心の時代に支配的だった「購入して終わりの消費者」という見方ではなく、「価値共創者」としてとらえよう。
  • かつては、マーケティングファネルの左側(「認知」、「興味」、「比較検討」、「購入」)の領域をいかに奪っていくかの戦いだった。
  • これからの時代に適応するマーケティングのヒントはマーケティングファネルの右側(「再購入」、「熱狂」、「熱狂的推奨」)にある。
  • ファンを味方につけるメリットは「魅力を伝えてくれる」、「正しい情報を伝えてくれる」、「守ってくれる」
  • 価値共創者であるファンのオン、オフラインコミュニティを起点に、友人知人への推奨や顧客参加型コンテンツの開発、マスで訴求するコアバリューの開発、真のインサイトの探索などを行っていくことが、今後のサービス化していく(Xaas型)ビジネスで重要になってくる。


●コミュニティのつくり方と活かし方

  • ブランドコミュニティが失敗に終わる5つの理由
  1. 会員の購入金額を熱量の高さと混同しない。買ってくれる人と好きな人(熱狂顧客)はイコールではない。
  2. ユーザーはひとつのブランドのために多くの時間を割かない。それを前提でコミュニティを設計したり、コンテンツを作成したりしてはいけない。
  3. コミュニティの熱量は自動的に一次関数で高まらない。コミュニティのコンテンツに触れれば自動的に参加者の熱量が高まるというのは幻想。
  4. コミュニティ会員の売上向上を目的としてはいけない。「コミュニティで売る」という手段に終始してしまうと、コミュニティである必然性がなくなる上にブランド価値が伝わらない。
  5. コミュニティの成果をコミュニティ内に求めない。
  • コミュニティは目的ではなく、特定のゴールを達成するための手段。
  • コミュニティを通じて「ユーザーとともに実現したいこと」と、「ブランドのビジネスゴール」を分けて考えることが不可欠。
  • ブランドコミュニティの最も重要なポイントはユーザーのコミュニティに参画する動機づくり。
  • すなわち、「熱量をどう捉えるか」。
  • 顧客の階層と感情には5つの段階がある。ピラミッドでいえば底辺が「トライアル顧客」で、そこから上へ順に「日和見顧客」→「継続顧客」→「ロイヤル顧客」→「熱狂顧客/熱狂的推奨者」が頂点に位置する。
  • 一番注意してケアしなければならないのはピラミッドの真ん中の「継続顧客」。感情を伴わず、ただそこに店舗があったから、などの理由の、ながら的、習慣的になんとなくそこで買ってくれている顧客。非常に移り気。このゾーンの顧客を、いかに赤のゾーンに引き上げるか?
  • 「本当に大切な顧客」とは、ブランドに熱狂してくれている顧客。購入量だけでも、推奨意向度だけではない。
  • 自分にしか与えられない体験を与えられた時、人の熱量は大きく高まる。
  • どんなふうに熱狂してくれているのか。ブランドがその人にとってどんな存在なのかのヒントはSNSにある。
  • 従来のリサーチと熱狂者インタビューのちがいは、「聞く」のではなく、「発見」すること。
  • これこそがマーケターの仕事ではないか。
  • 「なぜ熱狂したのか」というHOWではなく、「どうやって熱狂した」のかというWHYを聞く。
  • ファンの「行動」をヒントに、ファンが抱えている「欲求」を明らかにする
  • コミュニティでファンの”熱量”をつくる
  • 報酬には、Hunt(物理的。オトク情報や暇つぶし)、Tribe(社会的。他者とのつながり、承認)、Self(本質的。達成感、習得、自己実現)の3つがあるが、本質的な報酬がなければファンにはならない。
  • ファンにとっての本質的な報酬とは、ミッションやビジョンへの共感を通した自己実現である。
  • コミュニティというと、会員を囲い込むというイメージを持ってしまうが、熱狂的なファンとその他のファンを分けると良い。
  • 一部の熱狂的なファンコミュニティという意味では、山下達郎のラジオ『サンデーソングブック』がよい事例。
  • ラジオのリクエストはほとんどメールで行われるが、同番組では葉書しか受け付けない。
  • 葉書を書くという行為はとてもハードルが高い。でも、それ故に熱量が高い。DJも目を通せる範囲のリクエストを見ることができる。

今回は「コミュニティ」をテーマにしつつも、そのコミュニティを形成するための「熱狂的な顧客」をどう見つけ、育てていくかというところに主眼を置いてお話を頂きました。

ところで、私には一つだけ、自分が熱狂顧客であると自負しているブランドがあります(これ日本語合ってます?)。

それは、こちらのブログ(『4歳娘のなんで?に対する最高のカスタマーエクスペリエンス』)に詳しいので、ぜひお読み頂きたいのですが、このブランドがいかにして私を熱狂顧客たらしめたかを、このブランドの熱狂顧客戦略担当者の気持ちになって書いてみたのが、下記のプ譜です。

(拡大してご覧下さい)

プ譜とは、プロジェクトの進め方や構造を可視化するためのフレームワークです。構成要素として、「プロジェクトの獲得目標(ゴール)」と「廟算八要素(人材や予算、スケジュールなどの所与の条件」に基づき、「勝利条件(プロジェクトがどうなっていたら成功と言えるのかという判断基準)」、「中間目的」、「施策」のツジツマが合うよう、ツリー木の要領で線をつないでいくものです。



上述のエピソードと高橋さんの講演を元に、こうした熱狂的なファンやコミュニティを育てたり、運営していくためのプ譜を、参加者のみなさんにに記述頂くワークを行いました。

高橋さんの『熱狂顧客戦略』をお読みになった方であれば、コミュニティマーケティングをプロジェクト化するためのポイントとして、自社(のサービスやブランド)と顧客がエンゲージメントを結んでいる状態や、顧客とどういう関係性を結べていたら良いかといったことを思いつくかも知れません。
また、勝利条件を果たすための中間目的の設定方法として、「共感・承認・発見・堪能」といった顧客の琴線に触れるスイッチを軸に施策を考えつくことができると思います。

ただ、そこまで読み込んでいない方や、これからもっと勉強したいという方に向けて、急きょ高橋さんに無茶ぶりして、プレゼント企画をご用意しました。

拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』と、『熱狂顧客戦略』をセットでご購入頂いた方に、熱狂顧客を探し、育て、コミュニティ化していくためのプ譜をつくったり、質問に答えることを高橋さんと私とで行います。
やってみたいという方がおられましたら、その旨私のFacebookにメッセージ下さい!


     


なお、次回のサブスプ勉強会は、11月8日(木)開催。テーマはサブスクリプションビジネスにおける「3つのC」の最後となる、「コンテンツ」です。どうぞ楽しみにお待ち下さい。

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