小一娘を動画ワークショップの助手にするプロジェクト in 奈良

2018年8月23日から24日にかけ、奈良大和高原で動画制作ワークショップを行ってきました。
前回の記事でこの時の様子を紹介しましたので、ご興味があれば下記をご覧下さい。
『地方からの情報発信が画一化してしまう理由と、そこから脱却し見られる動画にしていく方法』

このワークショップを企画し、招聘して下さったのはNPO法人日本無形文化継承機構(ジッカ)事務局長の前嶋文典さんです。
前嶋さんはこの地で「福住sジョブズ・スクール」という活動を行っておられます。
福住sジョブズ・スクールは、里山にある自然・文化など、子どもたちの好奇心をかき立てる学習素材を使った土曜スクールで、子どもたちが自ら体験して、地域の魅力を発見し、その情報を発信するなど、子どもたちがワクワクする学習環境を、地元小学校と地域が協働してつくっています。

なるだけお金はかけず、テマヒマかけるのが私の子育ての心情の一つでありますが、アーネ(小1、6才)やジージョ(2才)には、過程や小学校という小さくて狭い社会以外の社会があることを体験してほしい。私たち両親や小学校の先生以外に、色々な仕事をしている大人がいることを知ってほしいと考えています。特に、前嶋さんのような子どもに関わる仕事をしている方にはぜひ会わせたいと思い、今回の動画制作ワークショップを機に一つのプロジェクトを計画しました。

それは、アーネを動画制作ワークショップの助手に養成して、奈良につれて行くというものです。

動画制作ワークショップで使用する動画制作ソフトは、折に触れてそれを使わせていたので、その場で私がサポートすれば一人でも撮影することができるレベルにありました。このレベルから、他者に教えられるようにするのはさほど難しいことではないと踏んだのです。そこでワークショップの約1ヶ月前に、前嶋さんに助手としてアーネを連れてくことを打診したところ快諾頂けたため、そこからアーネを助手として育成するプロジェクトがスタートしました。

アーネに奈良行きの話をした時、アーネは「行く行く!よっしゃラッキィー!!」と喜び勇んでいましたが、二つ懸念事項がありました。

一つは、多くの子どもがそうだと思いますが、初対面の大人とふつうに話をする=コミュニケーションを取れるかということ。
もう一つは、ピアノや英語などの習い事の練習・宿題が嫌いなアーネが、動画の撮り方を他者に教えるための練習をするかということです。

この奈良行きの話は、アーネが自ら心底望んだものではなく、私から与えられたものです。
「さぁ、練習するぞ!」と私が言って、「えぇ~・・・」なんていう反応が返ってくることは十分に予想されました。「さぁ、練習するぞ!」と言ったら、「おう!」となってほしい。そうならない限り、進んで練習するとは思えなかったのです。

そこで試してみたのが、アーネと一緒にこのプロジェクトのプ譜をつくってみることでした。

プ譜(プロジェクト譜)とは、プロジェクトの目標(ゴール)、勝利条件、中間目的、施策、廟算8要素(所与のリソース)に書きだし、プロジェクトが進むプロセスを将棋の棋譜のように記述するものです。プ譜についての詳しい説明は、こちらの記事(『プロジェクトはそもそも計画通りにいかないようにできている!?』宣伝会議アドタイ)をご覧頂くか、拙著に詳しく記載しておりますので、よろしければお手に取ってご覧下さい。



このプ譜は、高校生の職場体験プロジェクトを進めていくために書いたことがありましたが(参考『大人と子どもで、「わかっていない人」になっていないか?』)、今回はそれを小学一年生とやってみようというわけです。

本当に下手くそな字で、慙愧に堪えませんが、恥を忍んでその時に書いたプ譜を掲示します。



この時のプロジェクトの目標は、「アーネが奈良に行って、動画の撮り方を教える」です。
次にここが最も大事なのですが、「どういう状態になっていたらこのプロジェクトは成功と言えるのか?」という「勝利条件」を、アーネ自身が考えつかねばなりません。

私はアーネに「アーネは奈良に行って、大学のお姉さんやお兄さんに動画を教えるけど、どうなったら成功した!と感じることができると思う?」と問いかけます。この時、アーネは少し考えたあと、「教えたお姉さんたちが、“ありがとう”って言ってくれる」と答えました。

この勝利条件は悪くないと思いました。そして次に、「じゃあ、お姉さんがアーネに“ありがとう”って言えるようになるには、アーネがどんなことをしたり、どんなふうになったりすればいいと思う?」と、その「中間目的」を尋ねました。

最初に出た中間目的は、「アーネが(動画制作ソフトの使い方を)いっぱいおぼえる」でした。それに対して私はまた問いかけます。

わたし「いっぱいおぼえるっていうのはどういうこと?」
アーネ「これを押したら、次はこれを押しますとか、間違ったらこうしますとかいうこと」
わたし「そやな。そういうのを「使い方」って言うんや」
と、こんな感じで問答しながら、中間目的に連なる「施策」を私が記述していきました。

途中からはアーネが自分でペンを取りました。大学のお姉さんたちが「ありがとう」と言うのはどんな時だろう?と問いかけると、「わからなかったり困っていたりすることが、わかるとき!」と答えたアーネは、「わからない人におしえてあげる」とプ譜に書き込みます。

わたし「わからない人っていうのは、どうやったらわかる?」
アーネ「下を向いていたらわからないかな?」
わたし「そしたら、アーネが学校の授業で、わからないことがあった時、先生に“わかりません!”ってすぐに手を挙げられる?」
アーネ「じゃあアーネが見にいってあげる!」
と、「じぶんからできて(い)るかみにいく」と書き込みました。

ここから派生して、「じぶんからできてるかみにいく」時、どう声をかけるか考えていて、「げんきにあいさつをする」という中間目的も生まれました。ちょうど二週間ほど前に、私の仕事についてきて、打合せ相手の人に恥ずかしがって挨拶ができなかったことがあったことが、影響したのかもしれません。

この他、「今日はおねがいします!と言う」という中間目的の他、「パパに怒られないようにする」が出た時は、そんなに私は娘に怒っているだろうかとガッカリしましたが、気を取り直してこう聞きます。

わたし「パパに怒られないようにすると、お姉さんたちが“ありがとう”と言ってくれる?」
アーネ「う~ん、関係ないと思う」

このようにしてプ譜をつくった後、「じゃあ、いつから動画の練習する?」と聞いてみると、「今からやる!」と私のiPhoneを持って外に出ていきました。これには驚きました。同時に、こうやってピアノの練習や英語の宿題や算数のドリルをやらないものかと強く強く思いました・・・。

その後、何度か動画制作の練習を経て、ワークショップ当日、埼玉県から新幹線を乗り継ぎ、JR奈良線で京都駅から奈良駅へ。


 途中、奈良公園で鹿を遠巻きに眺めながら、会場の大和高原に到着しました。


ワークショップでは、インターンの大学生のお姉さんにも仲良くしていただき、


参加した食用ほおずき(道安ほおずき)の撮影チームに参加し、


参加した小学3年生の男の子に操作方法を教え、


自分でもレポート動画を作成しました。



私の講義中、動画制作のためのグループ分けをするにあたり、私が「何人か、3~4人か一組にしてグループをつくろうと思うんですが・・・」と言うと、「何人かグループにするんなら、全部で何人かわからないと、わけられないよ!」などと口を挟むなど、こまかなおじゃま虫を挟んできましたが、トラブルなく動画制作を終えることができました。

今回の申し出を快諾頂いた前嶋さんはもちろん、受け入れて下さったインターンのみなさん、参加頂いたみなさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

そして、アーネの勝利条件は参加した大学のお姉さんたちに「ありがとう」と言ってもらえるだけでなく、おみやげのお菓子まで頂いていました。



今回の体験がアーネにとってどのような意味を持つのか。これはまた別の機会にアーネと振り返りをしてみたいと思いますが、アーネがどのような動画をつくったのか、一緒に撮影をしていた他の小学生の男の子が映り込んでいるため、興味のある方がいらっしゃれば、直接お会いした際にお見せ致します。


追伸:
前嶋さん、中島さん、ヨシユキくん。ぜひ子ども自ら企画・制作した大和高原ニュースやレポートなど、色々な動画をつくってみて下さい。子どもには大人からは想像もつかないユニークで、インサイトをついた動画を企画・制作できる可能性があります。
そのサポートを私は惜しみませんので、ぜひご検討ください!

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