子どものピアノ練習が楽しくなる「パピプペポ作戦」

2018年6月5日に、「2021年大学入試改革で変わる、伸ばしたい子どもの力とは?」と題した勉強会を、ドコモ・イノベーションビレッジで開催しました。
この勉強会のテーマが「フロー」だったのですが、ピアノの練習を嫌がるアーネ(6歳)に私が行っていることが、ゲストの学びの道研究所代表の池田哲哉さん(幼児教育におけるフロー研究の第一人者)に「それ、フローに入らせてますよ」と言って頂いたので、ご紹介致します。

名づけて、「パピプペポ作戦」です。

  • パ パは外国人先生役
  • ピ アノばあさん
  • プ リンセスピアノ選手権ごっこ
  • ペ ネロペコンサートごっこ
  • ポ ピュラー音楽まぜる作戦
●パパは外国人先生役
これは、私がルー大柴のような外国人になりきって、ルー語を織り交ぜながら練習をさせるというものです。
真面目に正しく教える妻とは違うキャラクターで臨まれるのが、アーネには楽しいみたいで、「Oh!アーネ!プリティガール!今日の曲はファーストタイムやけど、やってみるぅ?」などと聞くと、「やってみる!」とノッてきます。
ミソはまったく別人格になりきることです。恥じらいは毛ほども要りません。


●ピアノばあさん
アーネが使っているピアノは、妻が子どもの頃使っていたものです。これを一つの物語とし、ピアノばあさんというキャラクターをつくりました。
キャラクターといってもゆるキャラをつくった訳ではなく、長年使われていなかったという設定にして、ピアノばあさんからアーネに手紙を届けました。
「アーネちゃんや。わしはずいぶん長くひいてもらえなかったんで、曲を忘れてしまったんじゃ。だからアーネちゃんに少しずつひいてもらって、曲を思い出したいんじゃ」
わざわざポストに手紙を書いてポストに入れましたが、これは全く効果がありませんでした。

ここにピアノばあさんの顔をマステでつくっても良かったかも知れない。


●プリンセスピアノ選手権ごっこ
アーネには5歳の時にディズニーランドのビビデバビデブティックで買った、『美女と野獣』のベルのドレスがあります。買ったその日は、ドレスを着て電車に乗って帰り、その後も休日はこれを着て過ごすという気に入りようでしたが、プリンセスが嗜むものといったらピアノです。
ここでも設定をつくります。
アーネはまだプリンセスではなく、町の少女です。ピアノで何百点を取ると、プリンセスになってドレスが着られるということにして、のど自慢のようなピアノ選手権が開かれるということにします。


そこで私が司会役になり、「さぁ!今日の挑戦者は埼玉県〇〇市からお越しのアーネちゃん6歳です。アーネちゃん、今日はどんな曲を弾いてくれるんですか?」と聞くと、今練習している曲を答えて弾き始めます。
つっかえつっかえ弾いてデキが良くなかったものについては低めの点数にし、残念がるアーネに、「この選手権はぜんぶで3回チャレンジできるんですが、もう一回弾きますか?」と聞くと、ほぼ100%「弾きます!」と答えます。
このピアノ選手権ごっこを池田さんに話したところ、「さらにストーリーをつくるといい」とアドバイスを頂きました。
選手権で何点とったら、今度は「お城に行けるようになる」といった感じです。これは物語としてノートに記録させていくのも良さそうです。


●ペネロペコンサートごっこ
アーネの好きなキャラクターの一つにペネロペがあります。ペネロペには「ペネロペといっしょ はじめてのクラシックコンサート」というイベントがあり、私はこの楽団の指揮者という設定です。


しかし、コンサート当日になってピアノ奏者が熱でコンサートに来られなくなってしまいます。困った私が「あ~、誰かピアノが弾ける人がいないかなぁ!」と声を大にして叫びますと、アーネが「ムフフ」という顔で近寄って来て、自分の顔を指さします。
「ひょっ、ひょっとしてあなた、ピアノが弾けるんですか?」と尋ねると、ほぼ100%「はい!弾けます!」と答えます。そこで、「ちょっと難しい曲なんですけど、大丈夫でしょうか・・・?」とアーネがいま練習中の楽譜を渡すと、「大丈夫です!」と答えるので、「コンサートが始まるまでまだ時間があって、5回くらい練習ができます」とやれば、「あと何回練習できる?」と非常にポジティブに練習します。
ちなみに、この「ピアノが弾ける人が急に来られなくなった」という設定は、保育園ごっこや病院ごっこをしていでも、園内或いは院内コンサートを行うという設定にすれば、いくらでも横展開できます。


●ポピュラー音楽を混ぜる作戦
私はピアノを10年間習っておりましたが、バイエル一冊終えるのが精いっぱいというデキの悪さでした。ただ弁解の余地があるとするなら、ピアノの練習曲というのが本当につまらなく、まったく弾いていて楽しくなるようなメロディではなかったのも大きいと思います。(違うか)
アーネは歌うことと踊ることも好きですが、当時はまっていたミュージカル「アニー」の「Tomorrow」の楽譜を買い、練習曲を3回やったら、こっちを弾いていいということにしました。
私からすると「Tomorrow」の方が指の運びが難しいように思うのですが、アーネはこちらの慣れ親しんだ、好きな曲の方が嬉々として弾きます。
・・・と書きながら今思いついたんですが、絵本など物語が好きな子どもなら、練習曲の音から物語(アニメでも絵本でも映画でも)を子どもと一緒に空想してつくって、今やっている練習曲のテーマソングをつくって弾く、といった設定にするのもいいかも知れません。


とまぁ、こんな感じのことを色々と織り交ぜながら練習させてきましたが、共通するのは「ごっこ遊び」を採り入れるということです。
ただごっこ遊びをするとの異なる点は、最初に「挑発」や「困難・ミッション」を与えて、それに持続的に取り組みたくなるような「盛り上げ」(アゲ↑)をし、時にうまく弾けていないところは「点数が低い」といったものに仮託して指摘し(サゲ↓)、再チャレンジを促すという方法が本当にうまくハマります。アゲ→サゲ→アゲ→サゲ、又は緊張→弛緩のくり返しがミソです。
これは池田さんも使っている「アゲサゲ作戦」というものだそうです。

この池田さんが実践しておられる子どもをフローに入れる方法や、フローってそもそも何?ということについては下記のブログレポートをご覧下さいませ。

・「フロー」についての勉強会を開催しました。~2021年大学入試改革、働き方改革の切り札になるかも?

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