【ブログレポート】テレビ番組の人気コーナーのつくり方から学ぶ。一歩抜け出す動画コンテンツとは?

2018年5月29日、「テレビ番組の人気コーナーのつくり方から学ぶ。一歩抜け出す動画コンテンツとは?」勉強会を開催しました。
企業のブランディングや商品販促、採用活動における、web動画の活用に注目が集まっています。
web動画はまだまだ新しい分野ですが、何かしらの動画コンテンツがバズったり注目が集まったりすると、「右へならえ」の精神で、似たような動画コンテンツが雨後の筍のごとく現れます。
そうして制作された動画は、公開してもさして視聴されることなく、使いどころも失い、ひっそりと忘れ去られてゆきます。
製品やサービスのコモディティ化が進む中、その販促やブランディングでも似たような動画コンテンツをつくっていてはまったく意味がありません。
本勉強会では、数々のテレビ番組の人気コーナーを手掛けてきた放送作家、市川榮里さんをゲストに招き、こうした時代背景の中、いかにして自社“らしさ”を体現した動画コンテンツを企画し、自社の事業活動に活かすかについての勉強会を、対談形式で行わせて頂きました。


市川さんは、『真相報道バンキシャ!』、『天才!志村どうぶつ園』、『幸せ!ボンビーガール』、『めざましテレビ』などの番組に関わり、人気コーナーを手掛けていらっしゃいます。

勉強会では、私が用意した質問に市川さんにお答え頂きました。用意した質問は以下の5つです。


  1. Webにバズる動物動画がある中、わざわざテレビで見てもらうための工夫とは?
  2. 他局の動物番組との差別化で意識・工夫しているところは?
  3. ○○:00にテレビをつけると、あのコーナーがやっているという存在感・記憶を植え付けるには?
  4. コーナーを。番組を見終わってもらうための工夫は?
  5. ニュースコンテンツ、簡易ハウツーコンテンツの未来(末路)は?


以下、市川さんのお答えの要旨をメモで紹介します。


Q1.Webにバズる動物動画がある中、わざわざテレビで見てもらうための工夫とは?
webではよく動物の可愛く、面白いgif動画がバズっています。「かわいい動物の姿を見て過ごしたいニーズ」はそうした動画で十分満たせるように思いますが、数多ある動物web動画ではなく、わざわざテレビで見てもらう工夫について質問しました。


  • 番組が始まった当初はweb動画も今ほど存在しなかったので、動画を見せるコーナーも多かった。
  • 番組が長く愛されるように、常に内容のブラッシュアップを行なっている。
  • 番組の視聴者は旬な人気タレントよりもかわいい動物に興味があるので、タレントを起用する際にも、「動物が好きであること」を重視したキャスティングを行なっている。
  • 動物と仲良くなるスキルが高いタレントは視聴者からも好評を得ている。
  • webで人気の動物動画はただその姿をループで見せているものが多いが、テレビで扱う上では、「なぜそうした行動をするのか?」など、深掘りをしたり、その先のことを考えてみる。
  • 労を惜しまないことも番組の魅力になっている。志村どうぶつ園では「ハリコミ隊」という番組スタッフがさまざまな動物に張り込み、不思議な生態を解き明かすコーナーがある。(例:カルガモの引っ越しなど)
  • 労を惜しまないからこそカメラに収められる感動の瞬間がある。覚悟がないとなかなかできない企画。スタッフの頑張りには本当に頭がさがる。
  • 張り込む過程で近隣の人ともだんだん仲良くなり、差し入れをいただくなど予期せぬドキュメンタリー要素も含め良質のコンテンツになっている。
  • 来週も見てもらえるよう、「続きが気になる」コーナーを作る。志村どうぶつ園では、現在、「日本一客が来ない動物園」という連載コーナーがある。80代の園長と入社一年目の二十歳の新人飼育員のたった2人で運営していて、経営は大赤字。そこに動物園コンサルタントがやって来て経営の立て直しを図ろうとするのだが、次々とハプニングが起こる。連続ドラマのような感じで続きが見たくなる。


Q2.他局の動物番組との差別化で意識・工夫しているところは?
一般企業がコンテンツマーケティングなど、色々な情報発信を行っているとして、同業他社が似たような情報を発信していて差別化に悩んでいるという担当者の方も多いはず。こうした課題に対するヒントが得られるかもと思い質問しました。


  • ここ数年、志村どうぶつ園は、「社会的メッセージのある企画」にチャレンジしている。
  • ともすれば説教くさく受けとめられがちだが、殺処分ゼロを目指して頑張っている施設や保護犬の話にも重くなりすぎないような見せ方を心がけながら取り上げ、命の大切さを伝えている。
  • 番組は子どももけっこう見ているが、犬を飼いたいと思った子供がお父さんに、「ペットショップではなく、保護施設に見に行こう」と言ったというような話も身の回りで聞いた。メッセージが伝わっていると実感。
  • こうした社会性のある企画を行うようになったキッカケは、ボランティア意識やエコ意識が日本にも根付き始めていると言う「ヨミ」があったからだと思う。

   
Q3.○○:00にテレビをつけると、あのコーナーがやっているという存在感・記憶を植え付けるには?


  • バンキシャの裏番組にはサザエさんという国民的人気番組がある。
  • 番組を印象付けるため、当時の総合演出が黄色をメインカラーにしたスタジオ、編集にし、ビジュアルインパクトを狙った。当時この手法は業界内でもインパクトをもって受け止められた。
  • 現在は、『news every.』がピンク、『NEWS ZERO』が黄緑など、同局の他の番組でも使われている。
  • たずさわっていためざましテレビのワンコーナーである『ココ調』は、「ここまで調べました」をコンセプトに約10年間、平日毎日7:20からオンエアしていた。
  • ココ調はみんなが気になっていること、話題のニュースについてアンケートをしたり、徹底的に検証を行う。アンケートは最低でも100人がマスト。スタッフがコーナーのロゴ入りジャンパーを着て一日中、渋谷などの街に出てアンケートやインタビューをしている。(これはけっこう大変)
  • この積み重ねで、毎朝7:20頃に8チャンネルをつければココ調がやっているという存在感につながっていた。同じ時間に毎日放送するというのは大事なこと。
  • 逆に、いつ放送されるかわからないものは見てもらえない。
  • アーティストやアイドル、タレント等が、ライブ動画を無料で配信し、視聴もできる『SHOWROOM(ショールーム)』で、『朝5時半の女』で一躍有名になったAKBチーム8の大西桃香さんは、毎朝5:30に配信してきた。 
  • 時々、寝坊して泣きながら配信するなど、色々なハプニングもありながら続けてきたことが、人気を集めた理由ではないか。


Q4.コーナーを。番組を見終わってもらうための工夫は?
web動画のKPIの一つとして「視聴完了率」があります。動画を最後まで見せるヒントが得られるのではないかと思い、質問しました。


  • テレビは放映時間が30分~60分と長いため、基本的には「引っぱる」ことになる。
  • ボンビーガールでは、一つのVTRが壮大なクイズのような構成になっている。
  • 主役になる女性が家にいないうちに、タレントが家探しをして、なぜ貧乏をしているのか、仕事は何をしているのかといった疑問を、気になるキャッチにして視聴者の興味をあおっていく。
  • その答えは、女性が帰宅してこないとわからないような構成になっていて気になって最後まで見てしまう。
  • CMが入っても続きが見てもらえるように工夫して引っ張るのはどの番組でも当たり前だが、一昔前のテレビ番組はCMまたぎの煽りが大げさで興ざめする視聴者も多かった。引っぱったものの、視聴者からすれば「え?そんなこと?」と引っぱった時間と期待に乖離があった。
  • 最近は、引っぱるけど期待を裏切らないようにしている。
  • 変身企画などの場合は、変身後の気になる姿を全部隠して引っ張るのではなく、CMに入る際、あえてほんの数秒だけ見せてしまうみたいな手もある。


Q5.ニュースコンテンツ、簡易ハウツーコンテンツの未来(末路)は?
昨今のテレビ視聴率競争から各局で番組の改編、すなわち人材の配置転換や予算の集中と選択が起きています。その内実は、webの世界でキュレーションプラットフォームが流行し、大量のコンテンツを安価に制作しようとした結果、その手法が問題となった出来事とかぶって見えます。webの世界で誰でも制作・配信(或は買える)ニュースコンテンツや簡単なハウツー動画が溢れている状況に重ねて質問してみました。


  • 企画コーナーを減らしてしまうと、育ちつつあったディレクターの挑戦や成長の場がなくなってしまう。
  • それでは番組制作のスキルが上がらず、何年経っても経験が積めないため、他番組や他業種への人材流出・・・といった悪循環になってしまうのではないか。
  • 企画コーナーはどうしたって時間も予算もそれなりにかかる。しかし、webとの差別化のところでも述べたが、労を惜しまない、汗をかくといったことが良い企画につながる。



この他、いくつか派生した質問にもお答え頂きましたが、最後に今後のテレビ番組及びweb動画で、視聴者が好む・受け入れられるコンテンツについて意見を伺いました。


  • 今言われている若者のテレビ離れは、「どうせ演出でしょ?」と思われている所が大きい
  • その反動でわりと「リアル」なものが求められている。
  • リアルで、余計なものがない、一点突破の番組が人気がある。(テレビ東京の番組が良い例)
  • このリアルブームがもう少し続くのではないかと思う。
  • 「見たことがないものを見たい」というニーズと、それに応える対象がまだまだあると思う。
  • 『月曜から夜ふかし』は、「まださわっていない人種」≒「見たことがないもの」を見せている番組で、素人のいじり方も絶妙。
  • その後に、また「演出」されたものが戻ってくるのかわからないが、「視聴者参加型」の番組もくるかもしれない。
  • プロの仕事を素人の視聴者が体験してみるというような。


なお、勉強会は市川さんのお話以外に動画企画のミニワークも用意していたのですが、市川さんのお話と参加者のみなさんからの質疑応答に時間を割いたため、行うことができませんでした。
ワークを期待して頂いていた方には、別途ワークシートをお送りし、シートの使い方を別途ご案内致しますので、連絡をお待ち下さいませ。

市川さんのお話から、web動画だけでなく、魅力あるコンテンツをいかにつくっていくかというヒントが多く詰まっていました。市川さんは企業のVPや、自治体のPR動画なども手掛けておられますので、市川さんにお仕事を依頼したいという方は、ぜひコンタクトしてみて下さい。


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