ホラクラシー型組織とプロジェクトについて

2018年5月28日、ダイヤモンドメディア株式会社の武井浩三さんにお会いしてきました。武井さんにはまったく面識がなかったのですが、先日ベンチマークイーメールさんで開催したセミナーにダイヤモンドメディアの方が参加しておられ、武井さんが拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』を社員のみなさんに勧めて下さっていたことを知り、御礼半分、なぜ拙著を勧めて下さったのか聞きたさ半分で、おじゃました次第です。
そこで武井さんの著書『会社からルールをなくして社長も投票で決める会社をやってみた』を頂戴し、「ホラクラシー」という組織構造を知りました。


「ホラクラシー」とは、従来の階層型(ヒエラルキー)構造の対義語(造語)として、組織を上下関係で管理するのではなく、透明性を重視し、メンバー個々人に意思決定が委ねられ、フラットに自律的に動く組織構造だそうです。(ザッポスが導入したことで注目を浴びています)

ちなみに、最近売れている書籍『ティール組織』とホラクラシーは密接な関係になっていて、ティール組織という考え方の一形態として、ホラクラシー組織があります。
私はまだ『ティール組織』を精読しておらず、ホラクラシーについての理解も不十分ですが、「プロジェクト」に携わる者として、注目したい特徴に以下のようなものがあります。


  • ティール組織とは、「マイクロマネジメントをしなくても、独自の工夫を通じて目的に向かって組織。
  • ティール組織では組織自体を、1つの存在、生命体と捉え、組織の目的を、「エボリューショナリーパーパス(進化する目的、存在する目的)」としている。
  • 組織が生きていく中で、目的も進化・変化していくため、予め「3年後こうなる!」という計画は立てない。今の状況の中で、最適と思われる方向に進めていく。
  • ホラクラシー組織では、コントロールに対する執着を手放していくことが不可欠。
  • 同様に、権限もヒエラルキー型と異なり集中ではなく分散させていく。


私はこれまで色々なプロジェクトに関わってきましたが、「新規事業が始まるまでにいくつもの承認プロセスと時間を要したプロジェクト」には、「現場での判断を上層部に委ねる=意思決定や判断に時間がかかる」という傾向が強くあります。

未知の要素の多いプロジェクトでは、(あらかじめ個別的な)知識を与えられていない出来事が頻繁に起こります。こうした出来事に対応しようとする時、人間は大きく「機械的な知」と「生物的な知」の二つで対応しようとします。

機械的な知とは、マニュアル知と言ってよく、複雑な事象を既知の型にはめて単純化しようとするものです。一方の生物的な知は、生物が予測の難しい環境で生きていくための、その場その場で創出していく知恵のようなものです。
機械的な知は、その判断を仰ぐ基準が自分の外側(マニュアル)にあり、生物的な知は、自分の内側に基準があります。

こうした特徴をホラクラシーに当てはめて考えると、プロジェクトを進めていくにあたって、何ごとかを判断しなければならない場合、ヒエラルキー型では上司や上層部に一々判断を仰ぐ(仰がなければならない、仰ぎたくなる)のに対し、ホラクラシー型では現場がその場で判断するのだろうと思います。そのためには思い切った権限の付与と、現場の人間のリーダーシップ(※従来のマッチョ型ではない)や責任感(※責任を問うという意味ではない)が求められます。

プロジェクトでは「試行錯誤(トライ&エラー)が必要ですが、それを何度も、時間をかけて、行う余裕は実際にはありません。どんな新しい事態に遭遇しても、リアルタイムに適切な判断なり、行動なりをしていくためには、あらかじめマニュアルを用意しておくという方法だけでは足りません。
そこで必要になってくるのが、現場での「リアルタイムの創出知」ですが、これはヒエラルキー型の組織では難しいのかも知れません。

組織の在り方のメタファーとして、よく大脳の新皮質と辺縁系の関係が取り上げられますが、なんとなくそれに近いものを感じます。新皮質は、理性、客観的はものの見方、言語などを司り、複雑な処理を担当しています。辺縁系は、新皮質の内部の古い脳で、単純な処理を担当し、リズムを用いて情報を処理し、かつその処理速度が速いという特徴があります。この辺縁系で処理していけるそう、構造をきちんと設計しておくのがホラクラシー型組織のように感じます。

ホラクラシー型組織の話を武井さんから聞きながら、話が微生物、動的平衡、レッジョエミリアの幼児教育まで、あちこち広がっていったので、詳しく理解できていないのですが、武井さんの著書とティール組織をセットで読み込んで考えてみたいと思います。


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