アンカンファレンスの進め方及びそのポイントについて

昨日、ロフトワークで開催された『Innovation “Pattern” vol.2 ─ 創造性とオープン性を高めるこれからのチーム作り』というイベントに行ってきました。

このイベントは「創造性」と「オープン性」をヒントにチーム作りのポイントを学ぶことが大きなテーマで、田子學さんやピョートル・フェリークス・グジバチさんの講演もさることながら、プログラムの一つである「アンカンファレンス」に興味がありました。

イベント詳細はロフトワークさんから記事が出るであろうことと、ざっくり雰囲気は下記にダイジェストの動画レポートを作成したのでこちらをご覧頂くとして、ここでは「アンカンファレンス」を開催してみたい、興味があるという方向けに、進め方やポイントについてまとめておきます。

●ダイジェスト動画レポート


■アンカンファレンスとは?
カンファレンスが講演者があるテーマについて話をし、それをその他大勢が聞くというスタイル(というイメージ)なのに対し、アンカンファレンスは、参加者自身がテーマを出し合い、個々に興味のあるテーマに集まって、そのテーマについて議論し合うというものです。
このイベントでの位置づけは、オープン性を高めるチームづくりを疑似体験するという文脈で行われていました。


■イベント全体の進め方
1.開催準備
・参加者からアンカンファレンスのテーマを募集する
 (本イベントでは開催数日間前にテーマ募集が行われていましたが、イベント当日もテーマを募っていました)
・テーマを紙に書いて貼り出す
 (どのテーマをどの時間帯にスケジューリングするかは、そのイベントの内容次第)
 (本イベントでは、1セッション50分を取って3つの時間帯に区切り、1つの時間帯で最大5テーマ)


・テーマを持ち込んだ「オーナー」が、参加者を募るためのショートプレゼン(ピッチ)を行う
 (ショートピッチのコツは、「こういうことで困っている、悩んでいる」といった具体的なものを出すと、参加者がイメージを持ちやすい)
・参加者が参加したいテーマに自分の名前を書いた付箋を貼っていく

2.開催、議論
・オーナーが当該テーマについてファシリテートしながら議論を進める
 (進め方は自由。オーナーや参加メンバー次第)
・議論した内容を付箋などを使ってシートにまとめていく


3.全体共有
・各テーマグループの学び、気づきなどをオーナーが発表


■アンカンファレンスオーナーとしての進め方のポイント
今回、初めてアンカンファレンスのオーナーと参加者の両方を体験しましたが、オーナーとしての進め方のポイントや気をつけたいことを下記にまとめます。
(あくまで個人的な感想としてお読みください)

●オーナー=テーマを持ち込んだ者であっても、参加者と一緒に「わからなくなる」のが大事。
今回、オーナーとして持ち込んだテーマは、困って困って仕方がないというものではなく、ある程度「これが解ではないか」と思っているものを準備した上で臨みました。
そうすると、自分の知りたいことを参加者に言わせてしまう、予定調和的な議論に誘導してしまっている感じがして、議論を活発というか発展させることができませんでした。
「私はそれについて知っている」というのではなく、それは一旦忘れて、参加者と一緒に困る、わからなくなるのが大事ではないかと思いました。

●早いタイミングで参加者全員の問題意識やベクトルを整える。
アンカンファレンスのテーマはイベント当日に発表されます。つまり、参加者はそのテーマをその時に初めて知ることになります。
開催テーマが具体的であればあるほどこの必要はないと思いますが、抽象的な内容だと参加者自身が抱くイメージが異なるため、議論がスタートしてから何について話せば良いのか参加者を迷わせてしまいます。
とはいえ、個々に抱くイメージを完全一致させては活発な議論が起きないので、大同小異の段階に持っていければ良いのではないかと思います。

●個人事情に寄りすぎない。参加者の共通度を高める。
議論したいテーマがオーナーの個人事情(特殊事情)に寄りすぎると、特殊事情についてのQ&Aが多くなってしまいます。なので、特殊事情を体験していない他者からも意見を引き出せるよう、上述の抽象度とは違う意味で、テーマの抽象度あるいは共通度を上げる必要があります。

●その他こまかいこと
・集まってくれた参加者には、自分のテーマに興味を持ってくれた感謝、良い場にしようという気持ちを伝える。
・会場設備や人数にもよるが、議論の前に互いの声が聞こえるか確認する。
・議論の進め方は色々。人数や参加者のキャラクター等に応じて、オーナーが全体を通じてファシリテートしたり、小グループに分けたりてしOK。

私がオーナーを務めたアンカンファレンスのホワイトボード

ここに書いたことはチームづくりに限らず、オープンイノベーションを行っている、或いは行いたいと考えている企業にも通じることではないかと思います。
ベースとなるテーマは必要でありましょうが、そのテーマの具体性が高するほど、現在のビジネスの延長線上でしかないアイデアしか集まらないでしょうし、「わが社の業界はこうだから(こういう慣習があるから)」といった思い込みを捨てないと、オープンな気持ちで他社の提案やアイデアを受け入れられないと思います。

「オープンにする」という意味を、単に外部の人の意見を取り入れたりコラボレーションをしたりするという意味に止めず、自分自身をオープンにする、言い換えれば「わからなくなる」ことが肝要ではないでしょうか。

わからなくなる、という言葉がアホっぽくて嫌だ、という場合は、『蒼天航路』にあります劉備玄徳のこちらの言葉に置き換えれば良いと存じます。


『あんたがおいらの器から溢れる時は、いつでもその器を砕けばいい』という言葉に続きます。
(砕けちゃうようなオープンイノベーションなど、オープンではないのだ)

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