アーネの読み間違い・聞き間違いとスキーマ

アーネ(5才)が絵本を「読み聞かせ」から、自分一人で読めるようになり、全体の量が多く、一つのセンテンスが長い文章のお話も読むようになってから、気づいたことがあります。それは「読み間違い」が出てきたということです。どんな読み間違いかというと、

「ひ を      つけると へやがあかるくなるよ」を、
「ひとを やっつけると へやがあかるくなるよ」と、

読み間違えるような、見ている字や聞いている音が似ていて、本人がそれに似た字・音の言葉に読み違え・聞き間違えてしまうというものです。

「そのたのゴミ」は「そなたのゴミ」
リズムのいい絵本は暗唱がしやすいようで、アーネは『半日村』という絵本の1ページ目を暗唱するようになりました。暗唱していると、その読みは非常になめらかです。
でもすべての文章を覚えている訳ではないので、そのページ以降は字を見ながら読みあげていくのですが、3才の頃は一字一句、

「お じ い さ ん は や ま へ し ば か り に 」

と、一昔前の電子読みあげ機よりもたどたどしく読んでいたものが、だんだんと早く、なめらかに読めるようになってきました。

読み間違いが起きるのは、この「なめらかに読もうとする時」です。

なめらかに読もうとすると、いま自分が視線を落としている単語とその周辺の単語を読みながら、同時に次に来るであろう単語群を予測する必要があります。
この予測をするには語彙が沢山必要になってくるのだと思いますが。アーネの語彙はまだそれほど多くありません。
なめらかに読もうとするばかりに、「とんびにあぶらあげをさらわれる」という文を目にして、「とんぼにあぶらあげをさらわれる」と読み間違えてしまいます。

全体の分量が少なく、短いセンテンスの文章の絵本では(たぶん)起こっていなかった読み間違いです。
ただこれは、絵本に書かれている一字一句を読んで、「あ」を「か」に読み間違えるといった、「読み方を間違えている」のではなく、「“とん”と来たら、次は“ぼ”でしょ」といった、言語的なスキーマによるものではないでしょうか。
(「ひをつけると」を、「ひとをやっつけると」は、これとはまた違うと思いますが・・・)

スキーマ(schema)とは、人間の脳に蓄えれた知識や経験を構造化してまとめたもののこと。
人間はスキーマによって状況を判断し、次にすべきことを予測し、本来なら記録できない量の情報を圧縮して記憶できるようになります。スキーマがあることで、いちいち作業の手順などを確認することなく、片付けるべき用事、行うべき仕事をすませることができます。

言語的スキーマ(※IT用語でいうところのスキーマ言語ではないです)という表現は正しい使い方ではないと思いますが、アーネが「“とん”と来たら、次は“ぼ”でしょ」と意識下(意識していない=スキーマがある)でもっているスキーマがあることによって、読み間違いが起きるのだとしたら、親はそれを文字(この場合ひらがな)を正しく読めないとはとらえず、間違いをいちいち指摘するようなことはしないでいいと思うのです。
成長の過程で必ず起こる事象、という程度にとらえておけば、愛と慈しみの気持ちで子どもの読書を見つめることができるように思いますが、どうなんでしょうか。

以上、親バカが最前線からお伝えしました。

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