保育園マップから「CIVIC TECH」や「Code for 〇〇」のお金のことを考えてみる

2013年に、杉並区に「保育施設検索マップ」を企画提案し、納品しました。

その後、「オープンデータを使って、自治体でほにゃららしたいんだ」とか、「コードフォー〇〇を立ち上げたいんだが、このマップはどうやって作ったの?」とかいった、情報収集レベルからご相談レベルまで、いくつかコンタクトを頂いたことがありました。

『保育ホッとナビ』
http://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/navi/kensakumap/1004711.html

※企画開発した背景のブログはこちら↓
『杉並区保育園検索マップを企画、公開しました。』

杉並区保育園検索マップ

最初は、このマップがなぜ「オープンデータ」や「コードフォー〇〇」をやりたい人から連絡があるのかわからなかったのですが、このブログで、
「既存のテキストでしか存在しなかった保育園情報を、スプレッドシートに入れてGoogleマップで一括マッピングできるようにした」
という一文を見て、ピンと来たということでした。

オープンデータ系の方もコードフォー〇〇系の方も。最近ではCIVIC TECH(シビックテック)系の方も、志しておられることは大体同じで、「市民がITテクノロジーを活かし、市民の手で自分が済む地域、コミュニティの課題を解決していきたい」要約していいと思います。
(※当該団体の方、微妙なニュアンスの違いはあろうかと思いますが、ごめんなさい。当事者外から見ると、だいたい同じに見えます)

こうした方々からの質問で最も多かったのは、技術系の話よりも(ほぼエンジニアの方々なので技術的な話は聞かずとも良い)、なぜこのマップを行政に導入してもらえたのか?それは無償・有償で行ったのか?有償だとしたらいくらなのか?といったことでした。

私は長く杉並区に暮らし、杉並区の仕事もすこし行った経験がありましたが、本マップの企画を持ち込んだ保育課の方とは面識がなく、初対面でありました。

ただ、当時は杉並区に保育園が足りないという問題がテレビなどで大きく話題になっていたことが大きく影響していたかも知れません。

有償か無償かについては、このマップは当時私が所属していた会社で開発したもので、開発はもちろん、外部サーバーを使用していたものですから、無償ではありませんでした。

シビックテック、コードフォー〇〇、オープンデータいずれも、「どこ(誰)に話しを持ち込むか」、「コスト(開発・運用費)負担はどうするか?」が最も大きな課題でありましょうが、お金があるなら、どこに持ち込むかは考えず、勝手に作ってしまい、(お金があるなら)しっかり広告すればよいと思います。
お金がないなら出所を当たるしかなく、公共の、市民のタメになるものなら行政に持ち込みたくなる訳ですが、いくら市民のタメだ、コストはそんなにかからない、という理由であっても、予算の都合や担当者のリテラシー、熱意といった運(?)などによって、持ち込んだ企画がすんなり通ることはまだまだ少ないのではないでしょうか。

そうした時、「行政の人間はわかってない」とか、取り組みがスタートしたとして、諸所の理由からプロジェクトが遅々として進まないゆえに、「行政はだからダメなんだ」といったdisりは禁物です。
採用されないのにも、プロジェクトが進まないのにも、彼我の理由があるわけで、「公共のためにやっているのに」なんて義憤のようなものは犬も食いません。

最近ではFAAVOのような地域特化型クラウドファンディングもあるので、こうしたプラットフォームを活用する手段もありましょうし、使用するITツールのベンダー企業にスポンサードしてもらうといった手段もあるでしょう。
他にも、地元の名士やライオンズクラブのような団体に寄付を依頼したり、そのITツールで解決しようとしている課題に関連する企業にスポンサードしてもらうという手段もあります。

保育園検索マップをつくる時、病院情報も保育園を決める時の大きな要素になるが、保育課では病院情報を持っていなかったため、どう集めるかという問題がありました。
私は杉並区医師会にコンタクトを取り、最新の情報がないかを質問してみましたが、事務局スタッフの方からは「最新情報というものはない」、「情報は更新していない」といった理由で断られてしまいました。
また、このマップを区内在住の友人知人ママに見せると、小児科だけでなく、公園や駐車場・駐輪場があるかといった事も合わせて知りたいということを言われました。しかし、自治体の保育課は公園情報などは持っておらず、都市整備部とか公園課といった他の部署が情報を持っています。
こうした状況を考えますと、駐車場情報を持っているであろう、又は自社の駐車場を使ってほしいパーク24のような企業に、企画を持ち込んでスポンサードしてもらえる可能性もあるのだと思うのです。

ITツールの多くは開発だけでなく、保守・運用コストがあるため、お金なしにはやっていけません。
技術力があるから作ろうと思えばモックアップだろうがβ版だろうがつくれてしまうのがエンジニアの素晴らしいところですが、こうしたお金回りのことがあまり得意ではないところが多いなぁという印象を受けます。
(まぁ、作ってしまってから、大企業がベンチャー企業を買収するのに範を取って、行政に買ってもらうという手もありますな。)

そうそう、行政にお金を出してもらおうとする際の忠告がありました。
持ち込んだ提案者が非営利団体であろうが何だろうが、その提案者でなければできない事案でない限り、行政は「入札」か「プロポーザル」といった、価格または提案の質的内容を問う方法を採ります。で、入札だろうがプロポだろうが、情報が公示され、その事案に土地勘があったり、山っ気(というのが正しいかわかりませんが)があったりする企業だと、とんでもなく安い価格で応札してきます。そうなると、バカまじめな金額を出している所は敵いません。

議員とつながって手を回してもらうという寝技もありますが、「アレオレなんとか」で、さも自分が企画したかのように喧伝する方もいて、そうしたスタイルが気に入らなければこの方法もお勧めできません。

技術的に他社でもできることであれば、さらーっと真似されてしまいますから、こう考えると、シビックテックでもコードフォー〇〇でも、ゴールは必ずしもツールの開発、提供ではなく、ITツールを使えばこんなことができるという提案・提言を常にし続けることや、入札情報の要件定義を手伝う存在になるとか(この業務で少しはお金が取れる)いったことでも、構わないんじゃないかと思えてきます。
あとは町内会の運営に行政からいくばくかのお金が入るよう、新しい町内会の形といった体(てい)で提案するという手もあるかも知れません。

いずれにせよ、活動の中の人やそれに関わる人々がどのような運営を望むかで手段は変わるにせよ、お金を取る手段は多様にあるので、一つでも多くの有意義な活動が、日の目を見て、便利なツールが市民の手に渡り、暮らしが豊かになることを祈る次第であります。

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