哲学対話って企業にどんなメリットがありますか?

先だって『哲学対話から学ぶ、問いをデザインする技法』という講座に参加しました。

本講座に参加した動機は本ブログのこちらの記事『“問いストーリー” ~なぜなぜ期の子供との付き合い方について』をご覧頂くとして、ここでは講座中に質問のあった「哲学対話は企業にどんなメリットがあるか?」という点について整理しておきたいと思います。



哲学対話とは、ざっくりいうと、「興味のあるテーマについて、参加者がお互いの問いと意見を通じて考えを深めていく話し合いの場」のことで、以下のような特徴があります。

・参加者が一つの「問い」をめぐって考え、感じたことを述べあい、聞きあうことで考えを深める
・主催者、講師の意見を拝聴するのではない、参加者自身が問い、考える
・問いから結論を導くのではなく、問いが問いを生んでいく
・思考を促進するというよりも、思考を妨げる枠、前提などを取り除く

講座ではこの哲学対話を学校教育の現場で実践されていらっしゃる土屋陽介先生と神戸和佳子先生が講師を務めておられました。


で、この講座が進む中で、もっとも参加者に引っかかっていた、腑に落ちていなかったのが、哲学対話は「結論を導くのではなく、問いを深めていく」という点だったと思います。

「“終わりなき問い”というのは企業活動の中では言ってられないよな」

みたいな。

それは講座終盤での質問タイムにも現れていて、

「哲学対話は企業に役に立つんでしょうか?」

という疑問が投げかけられていました。


その時の先生の答えを私はうっかり聞き逃してしまったのですが(ここが重要なのにスマン)、色々な新規事業に関わらせてきてもらった身からすると、

「役立つよ」

と迷いなく言えます。


というのは、哲学対話の特性上、こうした効果が期待できると思います。


・自社製品のターゲットの見直しができる
当初の計画どおりに売れてない、といった場合に、ユーザーの生活習慣や価値観を深掘りすること、ターゲットの見直しができそうです。
これは単に製品の特長やベネフィットから次善のターゲットに鞍替えするというような行為ではなく、ユーザーが本当に求めている、解決したがっていることは何かということを、哲学対話を通じて深掘りすることができるように思うのです。
これはもちろん、製品提供以前にもできることですが、スタート時こそしっかり時間をとっているので、うまくいっていない時にこそ有効だと思います。

・プロジェクトメンバーのコミュニケーションを深める
私は小さい規模だったり限られたリソースのプロジェクトのプロマネを行ってきましたが、規模は小さくともプロジェクトには様々なキャラクターや来歴のメンバーが集まってきています。
そうした人々を一つの目標に向かってまとめあげていくのは、そのプロジェクトの会社での位置づけや各人のモチベーションなどと相まって非常に難しいものです。
そうした時、哲学対話は「自分がなぜこのプロジェクトに参加しているのか?」「このプロジェクトの意義は何か?」といった問いを共有し、深めていくことが、有効な手段になる気がします。


ただ、特にプロジェクトの進行中に各人がそれぞれに「もやもやとした問い」を抱えたままではスピーディーな進行は望めないため、こうした事を日常業務の中で行っていくのではなく、実施するタイミングを選ぶものになるでしょう。


また、限られた時間や制約のもと成果を追わねばならない人々にとって、「哲学」というワードがもつそこはかとない有閑的なイメージが、「なにをゆうちょうなことを」と思わせてしまう一面があるように思いますが、上記に述べた企業における哲学対話の利用方法は、「哲学対話」という言葉ではありませんが、似て異なることを行っているので、十分に内容を説明すれば取り入れたい人々は少なくないのではないでしょうか。

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