子供とスマホのつき合い方は、親のリテラシーにかかっている

電車やバスでぐずった時。爪や髪を切る時。
子供におとなしくしていて欲しい時のスマホ、ほんと頼りになりますよねー。

2歳になる娘はもっぱらYouTubeとカメラロールに入った自分の写真を見ておりますが、世の中には知育アプリだったり絵本アプリだったり、色んなアプリが出ています。

育児生活においてとても便利で頼りになるスマホですが、正直子供にどう使わせればよいのか?
この先、どう付き合っていけば良いのか?という問題というか不安がつきまといます。

そんな事を2012年頃から考えていたのですが(参考記事:『絵本アプリを娘に与えていない理由を考えてみた。』)、先週、代官山蔦屋書店で開催された、ハフィントンポスト日本版主催のイベント「子どもとスマホのつき合いかた」に行ってきたので、その内容の簡単な記録と考えたことをまとめておきたいと思います。




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*サマリー*
・パネルディスカッションのテーマと印象に残った答え。
・娘のスマホ利用の歴史
・スマホは何のために使うのか?
・問題の本質は子供よりも親にある
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■スマホ、いつから使わせていいの?

まずはイベントの登壇者(パネルディスカッションのゲスト)をご紹介しましょう。

NPO法人CANVAS 代表 石戸奈々子さん
㈱スマートエデュケーション 代表取締役 池谷大吾さん
聖愛幼稚園 園長 野口哲也さん

モデレーターはハフィントンポスト日本版編集長の松浦茂樹さん。

CANVASはプログラミング体験など子供の創造性を育むワークショップを開催している団体。
スマートエデュケーションは知育アプリの開発運営。
聖愛幼稚園では園児活動の一部にiPadを導入している幼稚園。
まさにこのテーマを語るにふさわしい方々でした。


ここでは松浦さんが用意された5つの質問に対する、登壇者のみなさんの印象的な回答をメモしておきます。
(質問の文章は慌ててメモしたもののため、不正確なものがあるかも知れません)

【質問内容】
(1)スマートデバイス、いつから使わせていいの?
(2)時間消費でいいの?あやすためのツールでいいの?
(3)学ぶためのツール?コミュニケーションのためのツール?
  親と子のコミュニケーションにおいて、スマホを通じて心がけることは?

(4)スマートデバイスから離れる事も必要?
  身体を動かすこと。自然と触れさせることについて。

(5)スマートデバイスにおける教育の未来とは?


【印象的な回答】
(1)について
発育状態にもよるので、一律の答えはないと思う。どう付き合いたいかを親が考えて決めれば良いのでは。(石戸さん)
(2)について
※同じコンテンツやアプリを使い続けている子供に対する解釈として。
繰り返し楽しむのは、その都度新しい発見があるから。(石戸さん)
但しアプリに使われるのではなく、 子供が使いこなす、表現するツールを提供していきたい。(石戸さん)
(3)について
子供にとって遊ぶことと学ぶことは同じと考えている。(石戸さん)
(4)について
 スマホは粘土、絵本、クレヨン等といった道具のONE of THEM。自分の子供に「外へ遊びに行くよ!」と誘うと、スマホを放り出してついてくる。(石戸さん)
園児にとっては遊具の内の一つなので、外遊びもよくしている。一方でiPad禁止の日を設けている。(野口さん)
(5)について
IT学習には映像や音楽で学べる「楽しさ」。学校、家庭、地域、先生、生徒がどこでも「つながる」。一人一人の「個性」に合わせられるという3つのメリットがある。


■スマホなんて物心つく前から使ってるゼッ。

次に、ディスカッションのテーマを私の娘(2歳4か月)に当てはめ、いつから、どのように使ってきたかという歴史を振り返ってみたいと思います。

私の娘はいったいいつからスマホを使っていたのでしょうか?

早速カメラロールを高速スクロール!




この写真は娘が生後8か月のものです。

「いつから使わせていいの?」どころではありません。

もう使ってるし。

では、どうやって使っているのでしょう?




かじっている・・・。



舐め回している・・・!


その翌月――。



またかじっている。。。

Xperiaを板チョコのようにかじっている。。。



時は流れて、娘が1歳2か月の時。



これがいわゆるスマホ育児。
髪を切る時に大人しくしてほしい時のための使い方です。


別の角度からも。
わが家の場合、8,9カ月児の頃は、スマホの電源を入れることもなく、私たちが積極的に使うこともありませんでしたが、1歳2か月時点で初めて意図的にスマホにコンテンツを表示して使用していたようです。

実際、子供が動いて指や肌を切らないよう、スマホの画面を集中して見てくれているのは、親としてはとても助かるのですよね。。


さらに、1歳7ヵ月の頃、デザインあ展に行った時、だるまを色んな角度からiPadで描いた展示物を、とても楽しそうな顔をして見ていました。




でもって、この頃からロッテ カフカ の『ふかふかかふかのうた』にはまり、爪や髪を切る時は必ずふかかを要求。



さらにこの頃から娘自ら、ホーム画面を呼び出し、Google検索アイコンをタップし、検索バーのマイクアイコンをタップし、
「ふかかふかかふかー」と音声検索を行うようになりました。

残念ながら声が小さかったり発音が微妙に違っていたりして、なかなか『ふかふかかふかのうた』を結果表示してもらえませんでしたが、2歳を過ぎてちょっと発音が高度な『茶碗蒸しの歌』の音声検索ができるようになりました。

ちょっとずつ精度が上がっている

また、音声検索だけでなく、カメラロール(ギャラリー)アイコンをタップして、自分の写真を眺めて楽しむといった事を行うようになりました。


このように、「いつから使わせていいの?」という疑問においては、親が子供よりも近くに置き、子供以上に振れているスマホを、これからの子供は親がちょっと目を離しただけで、何カ月児であっても手に取り、うっかりホームボタンを押したりするでしょう。

そして爆発的に成長する脳みそがスマホの使い方を覚えていき、ある日親が驚く(喜ぶ)といった事が起きていくのだと思います。

この流れは親が意図的に使わせないと決めて子供の目に触れないようにしない限り防ぎようがありません。



子供とスマホの付き合い方を考える時の問題は、親が意図的に使わせる時、「どのように使わせればいいか?」という点にあります。

次に、この問題についてディスカッションの内容を整理して考えてみたいと思います。


■なんでスマホでコミュニケーションとらなきゃいけないの?

まず、こちらの図をご覧ください。


この図は、今回のディスカッションのテーマを元に、「スマホを使うカテゴリー(※使用目的、行為)」と「スマホを使うメリット」に分類したものです。

ディスカッションのテーマには、「時間消費」「あやす」「コミュニケーション」「教育」といった言葉が並んでいますが、これがスマホと子供のつきあい方を考えることを複雑にしているように感じました。

まず、親の立場からすると、子供がグズった時、また家事をする時に1人でいてもらう時の処方箋として、スマホは非常に助かるものです。おおいに利用してよいと思います。

また、学習教育面でも石戸さんがおっしゃる通り、様々なメリットがある事から上手に活用したいものです。

「子守」や「あやす」カテゴリーにおいて、メリットの本質は、子供が1人で遊べる(親がいらない)という点にあります。
スマホが子供一人を引き受けてくれる。言い方を変えると、没入させてしまう力をスマホは持っています。
(大人が没入しまくっているのだから、いわんや子供をや、という。)


問題を複雑にしているのは、「コミュニケーション」という言葉です。

子供とコミュニケーションをとるという目的、行為において、絵本や積み木、お絵かきセット、その他玩具とはいえないようなモノ、歌をうたう、手遊びをするといった無形なものといったコミュニケーションツールと比べ、スマホには明らかなメリットがありません。

小さな画面で絵本コンテンツを読んだり、音楽を聞いたり、パズルをしたりするよりは、本物を読み、聞き、触るほうが良いはずです。

親が一緒にいる(子供と向き合える余裕がある)のであれば、一緒でなければできない事をした方が、豊かな親子体験につながるのではないでしょうか。


また、コミュニケーションをとるという目的、行為は「子守」「あやす」「学習、教育」等のカテゴリーと同列ではありません。
「子守」「あやす」「学習、教育」等の各シーンにコミュニケーションが存在しています。

そのコミュニケーションにおいて、特に親が子供に向き合えない(相手できない)時に、スマホはただ一機で子供とコミュニケーションが取れる(それをコミュニケーションというかはともかく)頼りになるツールと考えた方が、子供とスマートフォンの付き合い方を考える点では重要な気がします。

むしろ、「コミュニケーションを取る」という事を一つの目的として切り出し、スマホは一緒に使いましょうという業界メッセージは、スマホやアプリをもっと使って欲しいための方便の様に聞こえてしまいます。


余談ですが、イベントの最後に会場からこんな質問がありました。

「子どもにどんなアプリを与えれば良いですか?」

この質問が、「子守」「あやし」「学習、教育」のどのシーンを思ってなされたのかわかりませんが、用途を考えず、アプリを使う事が第一義になっていたとしたら、とても残念なことの様に思いました。

余談ついでにこの質問に対する野口さん(聖愛幼稚園長)の回答をご紹介しましょう。
わが家は(特定の知育アプリではなく)ギャラリーに入っている「へん顔写真集」を見て楽しんでいる。アプリだから楽しいという訳ではないと思う。


■結局は親がどうスマホと付き合うか?

以上のことを踏まえ、最後に私なりに「子どもとスマホのつきあい方」を考えた時、この問題の本質は「親とスマホのつきあい方」にあると思いました。

親がスマホの強力な威力に甘え、

「一緒にいて余裕もあるけど、SNSチェックしたいしスマホ見せとこ。」

を繰り返しては、ダメなのだと思います。

子供がスマホ中毒になるのではなく、親がスマホ中毒になる。

本来、育児でも家事でも教育でも、アウトソーシングにはお金がかかります。
そのため、できるだけ自分で何とかしようと考え、工夫する。

その考え、工夫、お金がスマホにはほとんどかかりません。
お金がかからなくて効果もあるなんて、夢の様ではありませんか。


育児をしていく中で、育児中の家事や移動を行う中で、一つの手段としてスマホをどのように使うか。育児における何事をスマホにアウトソーシングするのか?

そういった目的を整理し、自分の家庭のルール、考えを持ち、それに則って親が判断し、リテラシーを身につけていく事が、子供とスマホのつき合い方を考えるより先に必要なのではないでしょうか。



※以上の考えは、私の娘が今2歳であることも大きく影響しています。
これが6歳であればまた違った考えを持つかも知れません。
その点ご考慮頂きご意見など頂ければ嬉しいです。


※最後に、このテーマにおける参考記事リンクをいくつかご紹介しておきます。

『「スマホで知育」のベターな距離感を考える~スマートデバイスを使いこなす子どもたち』

『知育アプリ500万ダウンロード超の舞台裏を「スマートエデュケーション」に聞く「スマホで子守、本当にダメ?」』

『【スマホ子守】に関する実態調査――子供にスマホやタブレットを使わせてる?』

『乳幼児の適切なスマートデバイス利用に関する「5つのポイント」』

『アプリで子育て? パパ・ママに人気のスマホアプリの現在と今後』

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