なんで経験したことのない未来のイメージを持てるの?~アーネ(6才)のなんでセレクション

先日、アーネと『義母と娘のブルース』の再放送(ダイジェスト映像)を見ていた時のことです。綾瀬はるか扮する宮本亜希子がベーカリー麦田のあんぱんを口に含んだ瞬間、亜希子の脳裏に亜希子がベーカリー麦田で働き、お店に客が押し寄せ、テレビが取材にやって来るといった「未来のイメージ」が、フラッシュバックという映像手法を使って映し出されました。


フラッシュバックというのは、瞬間的にいくつもの短いショットつなげる技法で、主に過去の場面を提示することが多いのですが、この技法が使われたシーンを見たアーネは、

「(亜希子が)思い出したの!?」

と私に聞いたのです。

私とアーネはこの日初めてこのドラマを見たので、亜希子さんにこれまでどんな過去があったのかを知りません。とはいえ、亜希子さんが元キャリアウーマンであることはこれまでのダイジェストを見てわかっていて、パン屋さんで大成功したという過去はないであろうことは、大人の私にはわかるワケです。

でも、そこまでこなれていないアーネには、このシーンが「亜希子さんがかつて体験したことが思い出された」ように映りました。

このことは、私にはとても意義深く感じられました。


古代キリスト教の神学者であり哲学者であったアウグスティヌスは、このような言葉を残しています。

  • 「過ぎ去っていまはここにない過去が存在すると、どうして言えるのだろう?」
  • 「われわれが過去と呼ぶものは、かつて存在したものの記憶である」
  • 「まだ訪れていない未来が、存在するとどうして言えるんだろう?」
  • 「未来とは、あるものがこれから存在してほしいという、われわれの期待である」

かつて存在したものの記憶が過去で、これから存在してほしいという期待が未来。

この、未来に存在してほしいという期待は、「イメージ」となって私たちの脳みそに描かれます。
イメージとは、『問題解決の心理学』の著者、安西祐一郎さんの言葉を借りれば、「眼や耳のような感覚器官からの直接の情報によるのではなく、自分の経験や知識、目標や願望によって心の中につくりだされるもの」です。

この自分の経験や知識が記憶になると解釈しますが、問題解決においては、この記憶が材料となり、目標の達成に向けてより意図的に働く思考と出会い、問題を解決するイメージが描かれます。
(※ちなみに、拙著で提唱している「プ譜」はプロジェクトの進むイメージを可視化したものと考えています)

以上のことをふまえ、私はアーネの質問に、「これは、思い出したんじゃなくて、これから、こうなるかも知れない。こうなったらええなぁっていう気持ちとか想いなんやで」と答えました。

アーネがこれから成長するにつれ、色々な未来への期待を抱くようになると思います。
その時、アーネはかつての体験の記憶や、類似する情報・事例を元にして、こう進めていこうというイメージを描く力が必要になってくると思います。
その時に必要なのは、既知の事実(公理)に、推論規則をあてはめてゆくことや、はじめの公理が少しでも変われば、推論のやり直しをいとわないことであったり、えいや!と歩みを進める勇気であったりします。(その他、その挑戦をして失敗しても帰ってこられる場所を私たち夫婦がつくっておくこととか)

そういう意味で、子どもが持つprimitiveな類推の力や連想の力、プロジェクトを進めていく力を、折に触れて引き出し、養っていきたいと考える次第であります。

アーネはいつも私に大事なことを気づかせてくれます。

以上、親バカが最前線からお伝えしました。

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