『完璧なリーダーはもういらない』の著者、長尾彰さんにお会いしてきました。
先日、『完璧なリーダーはもういらない』の著者、長尾彰さんにお会いしてきました。
40年近く生き、全国あちこちお邪魔してお友達になっていると、細い細い糸がつながって、出会いは突然やってくるものです。
このゴールデンウイークに、和歌山県の展示会出展セミナーで講演した際に友達になったチキンナカタの中田直希さんが、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』と『完璧なリーダーはもういらない』を読むぞと、Facebookに投稿してくださっていました。その投稿にコメントしたら、長尾さんもコメントされて初邂逅。
もともと私は、「プロジェクトとリーダーシップ」というテーマには高い関心がありました。
というのも、プロジェクト工学勉強会第一回で、共著者の後藤洋平さんが取り上げたテーマにリーダーシップがあったからです。
この時は、『キングダム』に登場する武将を「知略型」と「本能型」リーダーや、PM理論の四タイプに分けて考察しました。
このような背景があったことから、「リーダーシップとプロジェクト」をテーマに、プロジェクト工学勉強会などで講演頂けないかと思い、ナガオ考務店にお邪魔した次第でした。
みなさまへのアナウンスとしては、7月に勉強会を開催する予定は決まりました。
『宇宙兄弟』を題材に、作中に出てくる様々なプロジェクトをプ譜で可視化し、自分のプロジェクトに役立つ教訓を引き出すという内容を考えていますので、ぜひご期待ください。(変更になったらごめんなさい)
報告事項は以上ですが、それだけで終わったんじゃあ、もったいない。
長尾さんとの勉強会についての打合せは、2時間近い時間のうち、ものの十数分で終わり、その他に聞いたお話がとても面白く、プロジェクトにとってタメになることがとても多く、また子育てについても勉強になったので、許可を頂いてブログに残しておきたいと思います。
印象的だった話は3つあります。
一つは、長尾さんが支援し続けている、日本レースラフティング協会の世界一獲得プロジェクト。
もう一つが、ファシリテーターとしての長尾さんのキャリアを決定づけた原体験のエピソード。
そして、その原体験と、長尾さんの専門分野である野外教育とPBL(Project-Based Learning)との関係性について、です。
これ、書き始めるとうまくまとめられそうにないので、要点を箇条書きにしてミニマムにまとめたいお思います。
●プロジェクト的視点から学ぶ、レースラフティング世界一プロジェクト
- 当時、競技用のレースラフティングに取り組んでいた阿部雅代さん。
- やるからには世界一になりたいと、世界大会に出場。
- そこでは入賞できず、当時の優勝国オランダ代表選手に優勝の要因を聞くと、「チームビルディング」と答えられる。
- チームビルディングを検索し、長尾さんの勉強会がヒット。
- 世界一になりたいという相談を受け、長尾さんが支援することに。
- 世界一になるにあたり、過去の戦績から「ホスト(大会開催国)の優勝率が高いことに着目。
- 理由は、普段慣れ親しんでいる川で競技できるから。
- 世界大会(IRFラフティング世界選手権という)を誘致するプロジェクトが始動。
- 2017年の世界選手権(吉野川大会)を、徳島県三好市で開催。見事、優勝する。
ここから得られるプロジェクトの教訓:
- キャプテンが、優勝した理由を素直に聞いたこと。
- →データ収集と分析も大事だが、未知のプロジェクトにおいて情報が充足することはない。収集や分析に時間をかけてアーダコーダやるより、優勝した人に直接聞くのが一番早い。(そして、それを検索して、勉強会に足を運び、講師の長尾さんに直談判した阿部さんが素晴らしい)
- 大会招致という中間目的の設定。
ふつうに考えると、大会で優勝するために、海「外遠征の数を増やそう。そのためにはスポンサーが必要だ。」となる。しかし、スポンサー獲得に疲弊し、肝心の練習に時間を割けないとリスクもある。そうしたコストの高い戦略ではなく、優勝国は自国開催が多いという事実に着目し、大会招致という一見遠回りに見えて実はショートカットになった中間目的を設定。この打ち手が実に素晴らしい。中間目的とは、拙著で提唱しているプロジェクトの目標達成のために細分化した目的のことで、主要成功要因(CSF)といってもいい。
この中間目的や施策を選択する際の基準に、プロジェクトとしての進展性やコストの安さがあるが、大会招致という中間目的はまさにこの基準に適っている。
●PBLとファシリテーターの原体験
ここは、先に挙げた2つの印象的だったことを一つにまとめます。
- 長尾さん、小学校3年生の時に、担任と合わず登校拒否。
- 長尾さんのお兄さんの担任の紹介で、地元のフリースクール(当時そんな言葉もなかったので、「塾」と言っていた)に通うことに。
- 塾には中学生から小学3年生までの子どもが通っており、キャンプや登山の仕方などを体験させていた。
- 琵琶湖まで歩いていくという活動では、そもそもどんな手段で、どんな経路行くか、琵琶湖までの歩く距離などを調べなければならない。
- そのプロセスで、地図の見方、縮尺、距離、時間といった概念=学校の各教科の内容を文字通り体験しながら学んだ。
- 歩く途中、上級生に持たされる荷物の重さに辟易し、「もう歩かない!」と座り込む。
- 塾の代表で、引率者だったマキノさんが、長尾さんの隣に座り、他のみんなは先に行かせ、自分は長尾さんの隣に座り込む。
- 時間がいくら経ってもマキノさんは一言も発さず、隣で座り込む。
- 「これは無理だ」と悟った長尾さん、諦めてふただび歩き出す。
- こうしたマキノさんの塾で体験したことが、ファシリテーターとしての長尾さんの原体験となった。
- また、マキノさんの塾で行われていたことは、PBLそのものだった。
- マキノさんの塾で、豊かで濃密な体験をした長尾さんは、マキノさんのような教師になりたいと思い、大学では野外教育を専攻。
- 卒業後、非常勤の体育教師になるが、学校の体育教員には、理想としていた仕事ができないことに気づいた。
- 当時、アメリカから入ってきた「プロジェクト・アドベンチャー」の研修プログラム(4泊5日)に参加。
- 「プロジェクト・アドベンチャー」とは、PBLを行う前の段階に実施するもので、メンバー間の関係性づくりを行うもの。遊びの要素を含みながら、関係性をつくったり、リーダーシップを開発していく。
- そこでの体験が、小学生時代のマキノさんの原体験とかぶった。
- 「プロジェクト・アドベンチャー」のインストラクターに、こうした仕事をする職業を何というか聞いたところ、「ファシリテーター」と答えられた。
驚くのは、長尾さんは今日本の教育界で注目されているPBLに幼少期から触れていらっしゃったということです。
そして、大学、社会人を経る過程で、「プロジェクト・アドベンチャー」など、その道の知識や体験を強化(というか豊かに)し、様々な企業・団体の組織開発、チームビルディングを支援しておられます。
そこには、やって来る偶然と迎えにいく偶然が折り重なっていますが、根っこにあるのは長尾さんが著書で紹介している「want思考」があったのだと思います。
want思考とは何かを知りたい方は、ぜひ『完璧なリーダーはもういらない』を。
そのwant思考を活かして、どうプロジェクトを進めていけば良いかを知りたい方は、ぜひ『予定通り進まないプロジェクトの進め方』を、合わせてご覧ください。
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