プロジェクトマネジメントは必要悪

様々な分野でご活躍の方々に、プロジェクトの進め方についてインタビューする自主企画の第4弾。
今回は、スケジュール調整サービス『伝助』の開発・運営者であり、インタビューサイト『ヒトゴト』を運営している清水宣晶さん。


プロジェクトマネジメントにおいては、スケジュールの調整・管理が重要な訳ですが、清水さんがどのような考えのもと、このサービスをつくったのか。また、インタビュアーとして、どのように話の内容を進めていく―つまり、ゴールは大まかにあるにせよ、予期していなかった話し手の言葉をどうつないでいっているのかなど、色々とお話を伺いたいと思っていました。


・・・がしかし。


「ぼくはプロジェクト管理が嫌いなんですよ」

と言われて、出鼻をくじかれて以降、上述の内容はぜんぜん聞けず、
どうすればプロジェクト管理をなくせるのか。
それにはどうすればいいのかといった予期せぬ話になりました。

●プロジェクト管理がなくてすむなら、なくていい

清水さんにとって、プロジェクト管理の何が嫌いなのか。

・他人に対して指示を与えること
・そもそも、他人を管理すること
・民主的に進めようとして、色んな人の意見を採り入れちゃうこと
・色んな人の意見を聞いた結果、何も決まらないこと

・・・あぁ、これは私も嫌いです。やらなくて済むならしたくない。
リマインドのためのメール、念押しのための電話、どれもやりたくない。
方向性が決まらない玉虫色の会議に、何度怒りを覚えたかわからない。
(そういえば、先日も町内会の役員・班長会が予定時間を2時間オーバーしたあげく、
対応策も決まらないので、黙って立ち上がって帰ってきてしまった)

清水さんはプロジェクトマネージャーの存在についても、
「モノゴトを調整するためだけに存在する人というのはムダではないか」と、疑問を呈します。

では、そうした嫌いなプロジェクト管理が行われないよう、清水さんは、
・調整事を少なくする
・関与者を減らす
・役割を明確化して、互いに干渉しない
といったことを心掛けているそうです。
いいなぁ、このミニマリズム。

でも、これを成し得るのは相当にレベルの高い人でないと難しいだろうなぁと思います。
極端な話し、個々のメンバーのレベルが高ければプロマネはいらないかも知れません。


プロマネがいない方がいいと思えてくる。


ここでいうレベルというのは、技術スキルが高いというようなことではなく、
要件を定義し、個々のメンバーが自分のタスクや責任範囲を理解し、
スケジュール通りに作業を進めていくことができるレベルのことです。

で、こうした姿勢というか基礎体力のようなものは、実はプロジェクトを進めていく上で必要な力でもあります。
レベルの高い人というのは、プロジェクトを進めていく力が備わっていると言っていいのかも知れないと、
清水さんとの話の中で感じました。

プロマネの素養をメンバーが持てるのが理想


ただ悲しいかな、そうした人はけして多くありません。

(私自身、胸を張って「オレはいつもやれている!」とは言えません)


そこで考えるのは、世の中には管理するのが好きな人(しないと不安な人)、
嫌いな人(管理しなくても平気、或いは管理するのが面倒な人)がいて。
管理されるのが好きな人(されないと不安な人)、嫌いな人がいるということです。


プロマネが「管理しないと不安」で、メンバーも「管理されるのが嫌い」なタイプの(A)と、
プロマネが「管理するのが面倒」で、メンバーが「管理されないと不安」なタイプ(D)は、
どちらも組み合わせとして良くありません。

機能しそうなのは、Bのプロマネが「管理しないと不安」で、メンバーも「管理されないと不安」なタイプ。
これは決められた機能のシステムを、粛々とつくっていくタイプのプロジェクトには向いているかも知れません。
(とも言い切れないが)
Cのプロマネが「管理しなくても平気」で、メンバーが「管理されるのが嫌い」なタイプは、
大人な成熟したチームのように映りますが、これは互いのレベルが高くないと成り立たない。
けれど進展性が求められるタイプのプロジェクトにおいては、最もポテンシャルを有している気もします。
もちろん、実際のプロジェクトはこの四象限できれいに分かれることはなく、
様々な性格の人が集まります。また、上述したプロジェクトを進めていくための力の多少や、
技術レベルの高低によって、プロマネのメンバーに対する接し方、
個々に求められるものは変わってきます。
そうした中、互いがどういう性格なのかを最初の時点で知っておき、
どのようなコミュニケーションを好むのかを把握しておくことは、
プロマネにとっては重要ではないかと思います。

プロジェクト管理が嫌いという清水さんの言葉は完全に想定外でしたが、
いい意味での想定外は、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』で提唱している、
プロジェクトを記録して共有する「プ譜」のコンセプトはいいと思った、と言って下さいました。


理想的には、このプ譜の記述が自動化されるといいというご意見を頂きました。

実際問題、プ譜に限らず、記録というものを好んでやりたがる人は多くありません。
また、何かの仕事と並行して行うことも難しい。
野球にスコアラーがいるように。
将棋に記録係(棋譜を書く人)がいるように。
中国の各王朝に記録官がいたように。
記録には専門のスタッフが必要なのに、その成り手も少ない。

プロジェクトの記録作業の簡易化、自動化。これが次のインタビューのテーマになりそうです。

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