印刷ビジネスに携わる人々に見る、動画事業参入の可能性

先日、『紙メディアの効果を高める Web動画企画と制作方法』と題した、一日セミナーの講師を務めました。

●時間
10:00~18:00(7時間!足腰にキタ!ノドが枯れた!)

●内容
【Web動画の概要 】
・動画の企画(商売するための動画/Web動画の特徴)
・動画企画、撮影について
 (企画の3つのM。メッセージ、メディア、メソッド)

●【ワークショップ】
・テレビショッピングメソッドを使った、動画制作ワーク
 ※グループワークで実施
・動画を活用した印刷ビジネスの付加価値を高める方法


今回のセミナーを行うにあたり、印刷業界のことを色々と勉強しましたが、この十数年、印刷業界は様々な荒波にもまれています。

顧客から紙製品だけでなく、ある時はwebサイト制作を求められ、ある時は電子カタログ、そして今は動画・・・と、顧客が喉から手が出るほど欲しているものもあれば、なんとない世の中の雰囲気で電子書籍もだARもだと、クロスメディア提案を求められてきています。

一般的な対応方法であれば、制作会社やプロダクションなどに外注するでしょう。
ただ、この方法だと利益はそんなに出せない。メインの商売が印刷であれば、これらの紙以外の商品は片手間に売る程度のものです。
或いは、ベンダーが提供する電子書籍やARの制作ソリューションを活用して、自社で作成しようともするでしょう。しかしそれも、リテラシーの高くない自社スタッフがつくったところで、お金が取れる商品に育てられる可能性は高くありません。
一つの大きな歯車で回っているところに、それとは異なる、サイズも小さな歯車を合わせて回していくのは至難です。

実際、こうしたクロスメディア事業を自社に抱え、メインの印刷ビジネスの歯車としっかり噛み合うよう、回しきっている印刷会社はどの程度あるのでしょうか。
(分社化してそっちはそっちで式はあるでしょう)

それでも、顧客が求めるならば外注・内製を問わず、対応せざるを得ない。

本セミナーでは、そうした背景を鑑み、顧客が今どのようなビジネス上の目標実現や課題解決のために動画を活用しているのかといった現況の紹介。
そして、目標や課題解決に最適な動画の企画・制作方法を、実際に動画を制作しながら解説・体験頂くプログラムになっています。

午前中は、印刷ビジネスに携わる方々及びそのクライアントが持っている「動画への固定概念(思い込み)」について解説。
映像というと、ついめちゃくちゃクオリティの高いものをつくらねばいけないと(勝手に)思い込んでいますが、ところがどっこい、そんなこたぁないということを、実際に効果の出た映像と共にその撮影手法を紹介。

午後は、実際に対象商品を決め、共通のフレームワーク(ここでは「テレビショッピングメソッド」を使用)を使用して、絵コンテを作成し、動画を撮影します。そして、制作した動画を全員で鑑賞しながら、合評を行います。

この動画制作ワークショップのポイントは、撮影対象商品が違うので当たり前ですが、全員が同じフレームワークを使いながら、それぞれに「動画化価値」を意識して作成することで、他者の動画を見ながらも、色々な商品の動画化価値を見ることができるという点です。
動画化価値は実際に撮影本数を重ねることで身につくものですが、動画撮影の機会はそう多くありません。そうした場合、できることは他社の動画を見て学ぶ(仮想体験する)ことです。このワークショップにはこうしたメリットもあります。


本セミナーはJAGATさんの有料セミナーのため詳細は控えますが、セミナーの内容の中で最も重要なポイントをご紹介します。

それは、顧客の目的や課題、その動画を掲載する媒体、筐体、その動画を視聴するユーザー(属性や文脈)に合わせて、動画の表現やクオリティは変わる、ということです。

この意味を、『情報の地と図』『動画化価値』という概念を通じて、理解・体験頂きました。

自分たちが請け負っている印刷商品であれば、その目的、手に取る・目にするユーザーに合わせて、こんな動画が適切ですと言えるようになることが重要。それを体験頂くためのプログラムにしてあります。

そして、クライアントから動画制作依頼があった際、外注・内製とは異なる「第三の道」も提示しています。

次回の開催があるかどうかはわかりませんが、上述の内容に少しでもご興味があれば、ぜひJAGATさんにお問合せ下さい。

最後に、セミナー参加者のみなさんの動画制作のプロセスと、完成した動画を拝見して感じた、印刷ビジネスに携わっておられる方の、動画に取り組むことの可能性について述べたいと思います。

この動画制作ワークショップは、これまで様々な業界、職種の方たちに提供してきました。
その中で、商品の姿かたち、特徴、ユーザーなどのことを考え、カメラに映る「絵」や「構図」をできるだけ印象的に(美しくだったり、見映えよくだったり)見せようとする意欲、工夫、こだわりは、今回のセミナー参加者の方々がピカイチでした。
こうしたものへのこだわりが、そのまま動画化価値を見つけ、それを動画で表現する素養になることは間違いありません。

視聴する端末や環境の変化は、従来では考えられないような動画のつくり方や反応を生み出しています。
逆に、従来の発想・方法では成果を出しにくくなっていることもあります。

このパラダイムの変化に、印刷ビジネスに携わっておられるみなさんが参入し、新たな「印刷×動画」の商品や概念を確立する可能性があるのではないかと思います。

講座の最後では、実際に動画を制作できるようになってから必要になってくる、それをいかにクライアントに提案・販売していくか。未知なるプロジェクトをいかに進めていくかという事について言及しました。
こちらについては印刷業に特化していないものの、より普遍的で汎用性の高いノウハウを、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』に書いております。ぜひご覧下さい。

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