ママゴトの 「・・・ってことね」 とは、 算数で活きてくる。


アーネ(5才)はうんざりするぐらいママゴトが好きです。
遊ぶ時はいつも、「ねぇ、きょうは“なにごっこ”する?」と聞き、間髪入れずに「ほいくえんごっこしようよ」と言います。

「きょうは、おむかえがおそいってことね」
「パパがひよこぐみのこどもってことね」
「メ―ちゃんがおねつで、ゾウさんはへいねつってことね」

アーネの設定に従って、おむかえが遅いパパ役をやったり、おねつになったメーちゃんを預かる延長先生役になったり。キャッチボールはいつまでもやれる自信がありますが、◯◯ごっこはマンネリを感じると、なかなか相手をするのがしんどくなります。

と、ここまではママゴトの話。

この記事は幼児の算数の話が主題です。

アーネは何がキッカケだったか定かではありませんが、幼児向けのドリルをするのが好きです。
最近、異常にキラキラした小1レベルの足し算と引き算のドリルを買ってきました。

このドリルを通じて、アーネははじめて足し算と引き算の式に出会いました。

「1+2=3ってどういうこと?」

初めて式に出会ったアーネが発したこの疑問に答える最もわかりやすい手段は、タイルなど具体的な物(教具)を使って説明することでしょう。ドリルでも数字だけで「1+2=3」と書くのではなく、飴や果物のイラストを使って式を説明しています。

こうした説明の仕方とアーネの反応を見ていると、算数というものがいかに幼児にとって高度な抽象概念の操作であるということや、数字というものが一種の「お約束」のようなものであることを実感します。

子どもからすると、みかんが1個と言われても、皮をむいたら10房あるかも知れないし。
スイカを2個とオレンジを3個買って、全部で5個と言われても、目の前にあるイラストのスイカは2個のまま。オレンジも3個のまま。
いくら式で書かれていても、「2+3=5」と納得できない子どもがいてもおかしくありません。
「お約束」と書いたのは、「皮をむいたら10房あるかも知れない。スイカとチョコは足してもスイカオレンジという果物にはならないけど、果物というカテゴリーでは足すと5個になるんだ」という、乱暴に言えば、「納得できないかも知れないけど、そういうもんだ」と子どに覚えさせるような感じがするからです。

こうしたお約束を、「そうか、そういうものなんだ」と、(素直に、又はとりあえず)聞ける子どもは得な性格で、そうした約束がどうにも腹落ちできない子どもが算数が苦手、ということではないのだと思います。

そこで、使える一手が、冒頭のママゴト・ごっこ遊びで子どもが使う「・・・ってことね」という設定です。
「きょうは、おむかえがおそいってことね」
「パパがひよこぐみのこどもってことね」
「メ―ちゃんがおねつで、ゾウさんはへいねつってことね」

こうした設定も、一種の「お約束」でありましょう。
どう見ても、38歳のオッサンが1歳児クラスのひよこ組の子どものワケがありません。
そんなワケないんだけども、そういうこととする。これを体験しておくことが、幼児に足し算や引き算を教える上では有効な一手段になるのではないかと考える次第であります。

実際、アーネに1+2の式を教える際、アーネが好きなチョコとアイスを例に出して、

「(近所の)ローソンに、おやつを買いにいくのに、チョコレート1個とアイスを2個買いにいくってことね。そうしたら、おやつは全部で何個になる?」

という文章題にしてみると、答えが出てくるのはもちろん、アーネ自身がこうしたシチュエーションを設定して作問するようになりました。

足し算の場合、「全部でいくつ」、「合わせていくつ」という言い方をすると、子どもの理解が進むように思いますが、これもやっていれば慣れるようで、ある晩、家に帰ると、

「パパ。アーネはごはんをたべているときにかぼちゃを2こたべて、ごちそうさましてからまた3こたべて、あわせて5こたべた」

と教えてくれました。
こういう体験をしてみると、算数は算数という教科が独立して存在するのではなく、国語というか言葉を話し、よく聞くといった力や、自分の身に置き換えて考える力というものも大事だということに気づかされます。
物語化・自分事化するのが有効であるということは、子どもに限らず大人でも同じですが、それをもう少し噛みくだくと、上述したような力が根っこのところで求められるのではないでしょうか。

そんな訳で、子どものママゴトには意味があると思って対応されることを激しくお勧めします。

以上、親バカが最前線からお伝えしました。

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