素敵な日常を表現するための「カスタムアルバム」というアイデア

もう一昨年のことになりますが、家族3人で井之頭公園に行ったことがありました。
初めて白鳥ボートに乗り、ペパカフェ・フォレストでランチを食べ、娘が私にアイスコーヒーのガラスコップを手に持ち飲ませてくれようとした際に、

「すべって危ないから大丈夫だよ」と言うと、

「●●●(娘の名前)じゃダメ?」と聞かれて萌死するなど、たいへん印象に残る一日を過ごしました。

そうした出来事を私はマイブックで日記にし、妻はInstagramで写真加工してアップしています。


で、いつも困るのは、そうしたお出かけをした夜、娘が寝て自分の時間ができてから今日の出来事を日記にしたためようとした時に、脳内にある多少美化された印象的な情景や心情を的確に文章で表現できないことです。

自然主義文学よろしく、ただ事実を描くためにあらゆる美化を否定すれば良いのですが、この「多少美化したい」という煩悩をなかなか振り払うのは難しい。

というのも、世の中には

「私たちの製品を使うと、あなたの日常がほら、こんなに素敵になりますよ」

という紙やWebのコンテンツをよく目にするようになってきたからだと思います。

代表的なところでは、無印良品の「いろは便り」や、北欧雑貨なんかがそうですね。

紙モノも色々ありますが、個人的に好きだったのがサントリーとサーモスが共同開発した「drop」というボトル製品についてきたコンセプトブックが印象的でした。
(※ちなみに、既に販売終了している)

雑誌だと「KINFOLK」なんかもそうですが、ああいう普段の暮らしを素敵に見せるということが、なんとなく今人々の気持ちを捉えているような気がします。


話を戻すと、こうした素敵な日常を表現するのは文章よりは写真の方が得意。
Instagramのような写真加工ツールのおかげで、そのハードルも下がっている。
でも、加工レベルには雲泥の差があって、イケてる写真を素人が撮るのは難しい。
でもでも、そうした表現を(そういう志向のある)人は欲する。

前述のdropでは、「100人いれば100のドロップ」という、ユーザーの“楽しいdropライフを切り取った、写真&コメント”をInstagramへ投稿してもらうというキャンペーンを行っていたのですが、これを見て思ったのは、ユーザー一人一人の写真が一つどころに集まっても、ユーザーは別に喜ばないだろうから、dropのある素敵な日常を記録できるカスタムアルバムを作ってあげればいいのに、ということでした。

カスタムアルバムというのは勝手に名付けていて、そんな製品はたぶん世の中にないと思うのですが、予めユーザーが撮ったものではない写真が入っているアルバムのことです。

カスタムアルバムの用途をdropを例にとって説明しましょう。


・私はdropのユーザーです。
・私は日常を素敵に表現・記録したい志向を持つユーザーです。
・でも、私は写真撮影スキルが低いです。
・でもでも、私は日常を素敵に表現・記録したいです。

そんなユーザー向けに、dropのコンセプトブックに使われるような素敵な写真を予めカスタムアルバムの中に入れておきます。
写真の他には、dropのポーションで作ることのできるレシピ情報カードを入れておいてもいいでしょう。

ユーザーはそうしたハーフメイド状態にあるアルバムを手にした後、自分で撮影→プリントした写真をそのアルバムに追加することで、dropを使った素敵な日常アルバムが完成する―。

そんなアルバムがあったら、ユーザーはその製品により愛着を示すのではないだろうかと思ったり思わなかったりらじばんだり。。。

ヨーロッパでは「ファウンドフォト」といって、他者の撮影した写真を借用して作品をつくるというスタイルも登場しているそうです。

また、2015年6月のWired.jpの記事に、“小売業界は、従来のカタログから、ライフスタイルにより焦点を合わせた体験を顧客に提供できる「ルックブック」(ひとりのモデルや特定のブランド、特定のテーマを軸に、ファッション写真をコレクションしたもの)へと徐々に移行しつつある”というものがありましたが、カスタムアルバムのアイデアはこの傾向を更に一歩進め、更にユーザーに近づいていくものです。


カスタムアルバムは、観光地のポストカードを売るよりも売れるんじゃないかとか色んな事を考える訳ですが、世の中そんなプリントするよりInstagramにアップする方が簡単だし、いいねも付いて嬉しいし、それより何よりコストがかかるので、やれないと思いますが。

・・・・フォトブックなら、コストを抑えてやれそうですが。



余談だが、いろは便りは最初1枚のWebページだったのが、2016年に見た時はすべてPinterestに移行している。
Webの情報と広げるための手段と文脈というものを考えさせられる。

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