育児は二人の異なる学派が一冊の辞書を編纂する作業



人の親となって3年がたちますが、育児生活において何事かに遭遇すると、意識的にも無意識的にも、辞書を引くようにして幼少期の体験、記憶がよみがえることがよくあります。

あの時、お母さんはこう言っていたなぁ、とか。お父さんはこういう事をしていたなぁ、とか。

意識的というのは、自身の確固たる価値観、血肉になっているもの。無意識的にというのは、それまではずっと忘れていたのに、その環境に遭遇した瞬間、電撃的に思い出されるもの、とこの場では定義しましょう。

親と自分とでは20~30年の時代の違いがある上、価値観や方針が固定化され、それが絶対だと思い込むことは弊害でありますが、こうした典拠がある事の良さというのは、それが育児生活におけるよりどころになるという事ではないでしょうか。

そういう意味で、夫婦に子供ができるという事は、異なる生き方をしてきたパートナーと、互いが持ってきた辞書を元に、一冊の新しい辞書を共同で編纂する作業と言えるのではないかと思います。



両親が公務員で毎晩17:30に帰宅する家庭で育ってきた夫と、父親が毎晩遅く帰ってくる家庭で育ってきた妻とでは、「夕食」に対する考え方が違うでしょう。
両親が共働きの家庭で育ってきた夫と、母親が専業主婦の家庭で育ってきた妻とでは、「家事分担」という行為一つとっても考え方が違うでしょう。
こうした違いは、価値観レベルのものもあれば、洗濯物の干し方などの日常生活レベルのものまで大小実に様々です。

このお互いの辞書の内容が似かよっている場合は、大きな衝突もなく育児生活を送れることと思いますが、両者で大きく異なっていて、その編纂=すり合わせ作業を行っていないと、衝突が起こってしまう事があります。


この編纂作業を楽しめると育児生活もずいぶん楽しめると思いますので、これから子供が生まれ家庭を成していくご夫婦には、ぜひこうした心持で日々を過ごして頂ければと思う次第です。

また、自身のよりどころとなる典拠が豊富な方は、その幼少期において親御さんから豊かで慈愛に満ちた関わりを受けていらっしゃったのだと思います。


ちなみに、この事をもう少しかわいた感じでいうと、「夫婦でわが家のマニュアルを作っていく」と言えるのでしょうね。

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