カイジで考える「イベントリテラシー」

イベントから3週間経ち、ようやく鎮火模様の第22回東京ブロガーミートアップですが、本会に参加した感想を、「イベントが増えたのだから、当たりはずれは出て当たり前。はずれをひかない工夫はできる」という趣旨の記事にまとめてから、改めてここ数年に参加してきたイベントをリスト化して振り返ってみて、良いイベントにする条件というか、これからイベント主催者はもちろん参加者に求められるであろう「イベントリテラシー」について考えてみました。


■3年間で参加したイベントのうち、ブログに書いたものをリスト化してみた。

2012年7月から2014年9月までに参加したイベントのうち、セミナーやワークショップなどお勉強系のイベントを対象に、印象に残り、学びや気づきを得てブログに書いたものを下記にまとめました。

ブログ記事、参加イベント名、主催者、参加費用、イベントジャンル等をリスト化しています。
スプレッドシートはこちらをどうぞ




参加費は0円から16,000円までピンキリ。
全体的には0円から2,000円の価格帯が多いです。

このリストのイベントはそれぞれに収穫があって満足度が高かったのですが、どんなに満足度が高いイベントでも、たいてい共通する不満があります。

それが本稿のテーマである「イベントリテラシー」です。


■イベントリテラシーの要件とは。

ここでは、リテラシーを「最低限読み書きできる能力」という意味で使いたいと思います。
で、イベントには大きく参加者、主催者、登壇者といったプレイヤーがおり、それぞれにイベントにおける最低限の読み書き能力として、以下のようなものがあると考えます。

1.時間意識
2.仕切り、ファシリテート能力
3.自分の伝えたい内容を短い時間にまとめる能力
4.問われた事に答える事
5.騎士道的精神

お勉強系イベントには、

・参加者がひたすら受講するもの
・ゲスト(登壇者)のトークセッションを聞くもの
・参加者が主体的に活動したり他者と協働するワークショップ

など、様々な形式があるため、形式によっては上記のリテラシーのうち不要なものもありますが、以下順番にご説明します。



1.時間意識

これはイベントに関わる全ての人が備えているべきものと考えます。
皆さんが参加されてきたイベントで以下のような出来事に遭遇されたことはないでしょうか?
  • 参加者の集まりが悪いため、主催者が
    「もう少し集まってから開催しまーす!」と言って開始が遅れる。
  • ワークショップ等で同じテーブルになった人同士、「5分で自己紹介」しなければいけないのに、延々しゃべり続ける人がいる。
  • 同じく、プレゼンやライトニングトーク等で制限時間内で終わらずに話し続ける。
  • こうした事が重なった結果、当初設けられていた質疑応答時間がなくなる。

勘弁シロナガスクジラですよ。

こちとら、平日の夜にお風呂や寝かしつけを。土日の休日に二歳児の世話を奥さんにお願いしてイベントに来ていて、終われば速攻で帰宅して子供と遊んだり家事したりしないといけない訳ですわ。

時間が足りねえ。
とはいえ、時間をコントロールするというのは難しいものなので、次に主催者側と参加者側に分けて、時間をコントロールするための能力や、コンロトールできるようになる工夫について、私なりの考えを紹介したいと思います。


2.仕切り、ファシリテート能力

これはイベント主催者やトークセッション等で登場するモデレーター、司会者(主催者だったり登壇者が務めるケースが多い)に求められる力です。

これまで様々なイベントに参加してきた中で、クリエイティブエージェンシーのクリエイティブディレクターだろうが、宣伝系有名誌の編集長だろうが、ベストセラーを出した編集者だろうが、トークセッションを仕切れない人は本当に仕切れません。

司会者が登壇者の特徴や最近の動向などをチェックせず、話の内容に合わさずただ順繰りにゲストに話を振って、

「なるほど、そうですか。はい、次は●●さん」

とかベルトコンベアーみたいな司会はやめろとか、話を膨らませて登壇者のブログや書籍なんかでは書いていない内容を引き出していこうゼとか、言いたいことは山ほどありますが、最低限持ち時間を確認して、ゲストに遠慮しないで話が長くなったり、本筋と離れそうになったりしたら遠慮なくバシバシ切って下さいと。

いいから、切れ。


3.自分の伝えたい内容を短い時間にまとめる能力

ワークショップなど、他者に自己紹介をしないといけない時にいつも思うのですが、

「今日、ここに来た目的を自己紹介と合わせて1分でお願いしまーす☆」

と主催者が簡単に言うのですけど、これけっこう無茶ぶりだと思います。

「自分はこういう者で、こういう分野に関心があったので、こんな事を学べるかもしれないと思って参加しました。」

などと整然と時間内で言える人は稀です。

自己紹介を「で、えーと」「今日参加したのは、んーと」と言ってるうちに、主催者なり司会者が

「30秒経過ー!」

と、これまた楽しそうにプレッシャーかけてくるんですよね。


その後、
「はい、つぎー!」という掛け声や「チーン」というベルの音で消化不良のまま自己紹介タイムが終わります。

そこで、私は時間内にできるだけ自己紹介ができるよう、自己紹介の内容をモジュール化しました。

今の主な仕事内容を話す場合は30秒。
これまでの簡単な仕事の経歴をざっくりまとめたものは60秒。

という風に、話す内容と時間数を予め用意しておくことで、1分でと言われようが5分で言われようが、時間内に自己紹介や参加目的を話せるようになります。
まぁ、参加目的と自己紹介内容をうまくつなげられるかが一番難しいので、このへんは場数踏んで下さいとしか言えないです。適当ですみません。


4.問われた事に答える事

当たり前のことだと思いますが、トークセッションやワークショップの場でよく見かけるのが、質問された事に対して答えるのではなく、質問とまったく関係のない3時方向の事、ズレた事を話し始める人です。

気の利いた事言おうとしなくていいから、聞かれた事に答えようよ。

5.騎士道的精神

そもそもワークショップのように他者と意見を交わして短い時間で何かを作り上げる、まとめていくという経験をしている人はまだまだ少ないです。
先月参加したワークショップでも、終了後の参加者感想を述べる場で、初めてワークショップに参加した方が、

「見知らぬ人たちと一緒に作業をする中で、どのくらい自分の意見を述べていいかわからなかった」

と言っていたことが印象的でした。

一方、とあるグループワークではめちゃくちゃファシリテートがうまい参加者の方がいたりします。

こういうワークショップ玄人で時々いるのが、自分の進行上手さを利用してグループで発表するアイデアを自分が発表したいアイデアにしてしまう人です。

これをやってしまうと、他の参加者の消化不良感が高まってしまいます。

今後はこうしたワークショップ素人と玄人が出会う機会が増えてくるでしょうから、慣れている玄人は自らの声の大きさを頼みに突き進むのではなく、自分の意見を発したり他者の意見に耳を傾けたりすることが苦手な人々に手を差し伸べる、倫理規範、無私の勇気、優しさ、慈悲の心といった騎士道精神のようなものを発揮すべきではないでしょうか。

初心者から学び得ることも多い。

以上、ユーザ参加型のワークショップ式イベントに内容が偏ってしまいましたが、こうしたイベントリテラシーを参加者、主催者、登壇者が身につける事で、イベントの外濠的な満足度を高めることができるような気がします。
(思い通りにいかない事、ハプニングがイベントの醍醐味とかいう意見はここでは無視)

(C)『賭博黙示録カイジ』(福本伸行、講談社)



※2014年9月29日追記
このブログリンクをFacebookに投稿したところ、最近「司会芸人」としても活躍中の合同会社++のアートディレクター小倉ヒラクさんが反応してくれました。
イベントリテラシーの「2.仕切り、ファシリテート能力」について、「ファシリテーターとしてのリテラシー」を付け加えてくれたので、以下に紹介します。
「ファシリテーターとしてのリテラシー」を一つ付け加えるとすると、「答えやすい質問のフレームをたくさん持つこと」になる。
短い時間に回答をまとめるのは本当に難しい。なのだけれど、フレームがあればけっこうできる。例としては、では自己紹介を1分でお願いします。紹介するトピックスは名前と、住んでいる場所と、好きな本か漫画の台詞や場面をどうぞ!みたいな。「時間がかかる」ということを分解すると、「フレームを探す」という作業と「コンテンツを考える」という二つの作業時間の合体ということになるので、前者のほうの時間をばっさり落とす。そのことによって1を遵守することができる。
個人的には、イベントで最も大事にしなければいけないのは「時間どおりの進行」なんだよね。それが前提で、その時間のなかの質を高めていく。けっこう難しいんだよなあ。
ちなみに、ヒラクさんがファシリテーターを勤める++のワークショップに2回参加した事がありますが、テンポよく進んでぬるく時間をオーバーするという事はなかったと思うので、一度参加されてみてはいかがでしょうか。

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