ソーシャルメディア時代のジャーナリストの稼ぎ方を探しに行ってきたけど。

2014年6月28日にこちらのイベントに参加してきました。

「激論」ソーシャルメディア時代のジャーナリストに必要なスキルとは何か
 #JCEJ ジャーナリストキャンプ2014報告会を開催します


ジャーナリストでもジャーナリスト志望でもなく、メディアを運営する立場でもない私が参加した理由は一つ。

私は新聞(特に地元のローカル新聞)が好きなのですが、地元の人口減と比例して減っていく紙面への危惧から、今後のメディア(特にローカルメディア)の新しいビジネスモデルのヒントを見つけられれば、という思いからでした。

そこで、本イベントの所感や収穫についてメモっておきたいと思います。



■日本のジャーナリストはまだ稼ぐ心配をしなくていいらしい?

今回のイベントは「ソーシャルメディア時代のジャーナリストに必要なスキルとは何か」でありましたので、そもそも上述したメディアの新しいビジネスモデルについて直接論じる場所でないのですが、「ジャーナリストに必要なスキル」で「(ジャーナリストが)これからいかに稼いでいくのか?」といった事に話は及ぶだろうと期待&予想していました。

結論から先に述べると、その予想は大きく外れました。

まず「ジャーナリストに必要なスキル」の「スキル」の内容から予想と異なりました。

私のイメージでは、ソーシャルメディア時代、インターネット隆盛時代ならではの、SNSやWebサービス(ツール)の活用方法、動画やデータを活用した新しいニュースやコンテンツの作り方伝え方といった話が出てくるかと思いましたが、イベントで話された内容は、Webメディアでクリックされやすいタイトルの付け方や釣りタイトルの注意事項といったテクニック的な話。ジャーナリストとしての心構えといったソーシャルメディア時代ならずとも通ずる話題が中心。
また冒頭述べた参加目的である「今後のメディアの新しいビジネスモデル」についてはほとんど言及されることなく、わずかに菅谷明子さんのセッション『社会を変えるメディアを創る~アメリカジャーナリズム報告』でアメリカの新興メディアの収益手段が紹介された程度。
(※ただ、ここで紹介された内容は佐藤慶一さんの『メディアの輪郭』や大治朋子さんの『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地』を購読している人なら既知の内容だったでしょう。)


総じての感想は2つ。
一つ目は、Webメディアの釣りタイトルのグレーゾーンについての話題が盛り上がっていましたが、イベントタイトルにある「激論」というほどの激しい意見交換は登壇者間でも、登壇者と聴講者の間でも行なわれず、これぞ釣りタイトルだなぁと感じた事。
イベントの最後に設けられた「ミニワークショップ」も、今日のイベントに参加して日本のジャーナリズムを良くするために自分が行なうアクションを宣言しようというもので、ワークショップという言葉を使うには大仰でした。
二つ目は、ジャーナリストがこれからどんなスキルを身につけて稼いでいく必要、方法があるかといった切迫感や、何かを取り入れていこうという貪欲さといったものを感じなかったという事です。
(まだ考えずにいい環境にあるか、今はまだその段階になくこれから取り組んでいくのかも知れません。)

そもそものイベント参加目的は果たされなかった訳ですが、その他の点で多くの学びや気づきがありましたので、以下にまとめておきます。


■国会議員の図表もデータジャーナリズムじゃない?

菅谷明子さんのセッションより:

アメリカには「調査報道記者・編集者の会」があり、以下のような活動を行なっている。
・コンピューター援用報道の全国トレーニング
・取材ノウハウの共有
・上手くいった例を集めたステップシートと共有
・年に一度の総会


セッション『読者に届く記事とタイトル』終了後の松浦茂樹さんへの質問「動画の取り組みについて」の回答より:

・動画はみんな取り組みたいと思っている。
・作り手と読み手の問題がある。
・作り手にとっては制作コストが高くまだリスキー。
・読み手はスマホの普及で環境が整ってきたが、
・ビジネスマンが短い時間でコンテンツを消化するのは動画よりもテキストだと思う。
・TVのレベルの高い映像を見てきている中で、(制作コストをかけていない動画コンテンツ等は)ユーザーの納得度は低くなってしまうのでは?


セッション『地域ニュースの作り方』での河合孝仁さんの発言より:

ローカルニュースが(都市部では)かつてCATV等でしか見られなかったのがWebを通じて見られるようになった。それによってローカルニュースの作り方が変わっていくのではないか?

この発言について登壇者の方から明確な答えはなかったように思いますが、47NEWSのようなサイトでも結局は中央系記事のPV数が圧倒的に高いことを鑑みると(※参考リンク)、都市と地方という二極の視点ではなく、「経済」という第三の視点で切り込むか、経済以外の「仕事」「ほにゃらら」といった第四の視点での取材、編集方針があって良いのではないかと思いました。


セッション『ジャーナリストが学ぶべきスキル』菅谷明子さんの発言より:

毎日ニュースを出す必要があるのか?
各社リソースを分配すれば他の取材(※注:ここの表現は私の記録が曖昧です。誤りがあれば修正致します。)ができるのではないか?

他の取材という表現が正確ではないかも知れないのですが、これは同じニュースでも違った視点、切口、表現手法がある(できる)のではないかという提言のように受け止めました。
日本でも出てきたデータジャーナリズム等が該当すると思いますが、テレビのニュース映像をそのままWebに流すのではなくWebメディアに出すことを第一義とした動画ニュースの作り方やNYTのSnow Fallのようなイマーシブコンテンツ等の新しいチャレンジを、各社或いは報道やメディアとはこれまで関係のなかった会社が行なうようになるのではないかと感じました。


セッション『ジャーナリストが学ぶべきスキル』依光隆明さんの発言より:

調査報道にはコスト(お金と時間)がかかる。
(不景気、経営不振になって)真っ先にリストラされるのが調査報道部門。
調査報道は書いても広告がつかない。

この発言に対するジャストアイデアを聴講中に思いつきました。
ある映画監督が地方ロケを行なう度に、現地で募集したエキストラを対象に映画出演をするにあたっての演技等を学ぶワークショップを行なっているのですが、秘密裏に行なわれる取材でなければ、こうしたワークショップを開催して現地の人々のメディアリテラシーを高めつつ、お金を稼ぐという方法が取れるのではないでしょうか?



以下はその他聴講しながら思いついたアイデアです。

(1)国会議員の作ったデータコンテンツでメディアを作れないか?
データジャーナリズムが注目されていますが、国会中継などで見かけるようになった議員が質問を行なう際に使うようになった図表もデータジャーナリズムの一種だと思うのです。
で、日中の国会中継など平日昼間に働いている人々は見る機会もなく、議員の情報発信をチェックしている人々もまた稀だと思うので、議員ががんばって作ったデータを集約して国民に届けるメディアがあっても良いのではないでしょうか?

(2)いいねやシェア数以外の記事の評価指標について
セッション『読者に届く記事とタイトル』でWebメディアでの記事の評価指標としてPVとその後のアクション(いいね数やシェア数)について言及されていたのですが、読者がその記事を読んで関連書籍を買ったとか、反芻して腹に収めて考察したり学びを深めたりできるようなトラッキング、拡張機能は考える価値があると思います。


・・・といった感じで、良くも悪くも得るものの多いイベントでした。
日本ジャーナリスト教育センター様、登壇者の皆様、貴重な機会を頂きありがとうざいます。

ちなみに、これからのメディアの稼ぎ方について学びたい方は、以下のイベントが良さそうです。


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